「荒野の七人」がブルマーケットへ牽引

先週、S&P500は0.39%上昇、大型テクノロジー銘柄で構成されているナスダック100は0.13%下落して終わりました。

最近、米国株式市場では、年初から相場を牽引してきた7銘柄が「マグニフィセント・セブン」と呼ばれています。マグニフィセントとは壮大、見事、非常に印象的で立派であるという意味で、「マグニフィセント・セブン」とは、1960年に公開された米国の西部劇映画のタイトルです。邦題は「荒野の七人」となっており、ご存じの方も多いのではないかと思います。現在の株式市場における「荒野の七人」とは、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドットコム(AMZN)、エヌビディア(NVDA)、テスラ(TSLA)、メタ(META)のことです。

2023年の米国株の上げに否定的な意見を持つ市場参加者は、株価指数の上げが「荒野の七人」銘柄のような数少ない一部のナスダック銘柄に牽引されていることを問題視しています。しかし、先週のマーケットでは、そんなトレンドに変化が見られました。

株価上昇は小型株にも広がっている

先週、S&P500は0.39%の上昇ですが、同じS&P500でもイコールウエイト(均等加重平均)指数の方は0.93%上げています。均等加重平均指数は、時価総額が小さな銘柄であってもアップルのような時価総額の大きな銘柄と同じように株価指数に影響を与えるように作られている指数です。これは先週のマーケットでは、大型銘柄以外の銘柄が上昇したことを意味しています。

同じように、大型100銘柄で構成されているナスダック100は先週0.13%下落したものの、3,000銘柄超の銘柄で構成されているナスダック総合は0.14%上昇しています。これも大型銘柄以外の銘柄群が上昇していることを示しています。

特に、小型株指数のラッセル2000は1.9%上昇しており、株価の上昇が小型株の世界でも起きています。このように先週のマーケットでは、特定の限られた銘柄の上昇ではなく、マーケットの裾野が広がっていることが窺え、市場がより健全な状況に向かっていると言えるでしょう。

今週の注目はCPIとFOMC

6月13日(火)に発表される予定の米消費者物価指数(CPI)については、コアCPIが先月比で0.4%未満であるかが焦点となり、0.3%以下の数字となるとポジティブサプライズになるでしょう。

また、13-14日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では、マーケット参加者の多くが、利上げの一時停止を予想しています。現時点でマーケット参加者の29%のみが利上げを予想、71%は現状維持となっており、今回は利上げの可能性は低いと見ています。ただ、その後7月のFOMCでは69.4%の確率で利上げがあると見られています。もしも、前日のCPIのコアが0.4%以下となると7月の利上げの確率も下がると考えられます。

S&P500はベアマーケットから脱出

先週のS&P500の引け値は4,298.86ポイントです。2022年10月12日の安値である3,577ポイントから20.2%上昇して終わりました。これは2022年8月16日来の高いレベルとなっています。

前回のコラムで触れたように、先週ベアマーケットの底から20%以上回復したことにより、定義上S&P500はベアマーケットから脱出したことになります。もちろんベアマーケットを終えたことは、必ずしも米国株の上げを保証するものではありません。ただ、これは非常にポジティブなステップだと思います。

私が半年前の2022年12月12日付のコラムで紹介した2023年末のS&P500の目標値は4,300ポイントでした。記事の中で、企業の業績は「2023年前半に底をつけ、後半に回復」し、「2023年はグロース株の回復にも期待」と述べていました。この見方は、2022年末時点において市場で悲観的な予想が多い中、楽観的な予想でした。しかし実際に、2023年はグロース株がマーケットをけん引し、先週S&P500は一時的に4,300ポイントを超えました。

2023年に入って急展開しているAIの進化が企業の業績に与える影響はマーケットにとっての追い風となっています。そのことを鑑みると、現在のマーケットのレベルはあくまでも通過点であり、これからも上昇は続くと考えられます。したがって、2023年の年末目標を4,300ポイントから4,500ポイントへ引き上げたいと思います。

2023年から2024年にかけては11%の業績の伸びが予想されており、S&P500の4,500ポイントは、現時点の2024年予想EPS242.4ドルの約19倍であり、適正なレベルであろうと考えています。

2023年のこれまでの上げ、今後の上昇について、懐疑的な見方をしている市場参加者は少なくありません。一方、マーケットが安値から20%以上超えて上昇すると、米国株は上昇が継続する傾向にあります。加えて、過去のデータを見ると6月、7月は米国株が強い傾向ですので、サマーラリーが期待されており、この段階でマーケットに弱気になるのは得策とは思えません。とは言え、マーケットが、今週のCPIとFOMCを無事に通過するかを確認する必要があります。

6月16日(金)は大きなオプション満期日であり、トリプルウィッチングとなりますので、この日の株価の動きは乱高下しそうです。また、6月19日(月)はジューンティーンス(アフリカ系アメリカ人の奴隷解放を祝う日)の祝日のため市場は休場、3連休の週末となります。