モトリーフール米国本社、2023年5月7日 投稿記事より

主なポイント

・資本市場の規模が拡大し、高度化したことで、ミスプライスされた資産を見つけるのは難しくなっている
・優位性があるにも関わらず、ウォール街は短期的なパフォーマンスに固執し、それが明らかに最大の弱点となっている
・今日の市場には、個人のバリュー投資家にとって多くの機会がある

バークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、バフェット氏もマンガー氏も警戒と楽観を喚起

ウォーレン・バフェット氏の投資家としてのキャリアは、無名の小企業に、企業価値を下回る額で投資したことから始まりました。それから数十年の間に多くのことが変化し、バフェット氏は、はるかに高度化し、情報化が進んだ市場によって、そのような簡単な機会の多くはとっくに失われてしまったと繰り返し述べています。

2023年5月6日に開かれたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、バフェット氏の右腕であるチャーリー・マンガー氏は投資家に対し、「非常に多くの投資家が、残された数少ない機会を奪い合うことになり、バリュー投資家にとって困難な時期が予想されます。私からのアドバイスは、儲けが少ないことに慣れなさいということです」と警告しました。

一方で、明るいニュースもあります。バフェット氏は、短期的な思考や愚かなアイデアが、かつてないほど蔓延していると指摘しています。こうした衝動に忍耐強く抵抗できる投資家であれば、市場を上回るパフォーマンスを得ることができるはずです。

以下では、マンガー氏とバフェット氏が年次株主総会でバリュー投資について語ったことと、彼らの教訓を生かして賢明な投資判断を行う方法について紹介します。

人々が愚策に陥るときに好機は訪れる

バークシャー・ハサウェイは今や巨大企業であるため、バフェット氏とマンガー氏が従来のような隠れた原石に投資をしてもそれほど大きな利益を得ることはできません。その代わり、質の高い企業を見つけ、時間をかけてリターンを積み重ねていく必要があります。それでも、世界中のバリュー投資家は、バフェット氏が言うところの「適正な価格にある素晴らしい事業」を見出す能力において、今でも彼らを尊敬しています。

昨今のメディアを見ると、手っ取り早く金を稼ぐ方法をアピールする情報にあふれています。危険でありながら、幸運という砂上の楼閣によって築かれた、うらやましいサクセスストーリーはいくらでもあります。バフェット氏は、人々がアイデアを売り込んだり、悪いビジネスプランを追求したりするのに必要な資金を簡単に得られるようになっていることに問題の一端があると考えています。こうしたビジネスが上場すれば、財務状況や黒字化への道のりは、どんなに良くても不透明なものになります。このことは、ノイズを除去し、期待と現実のギャップを埋めることのできる、有望なグロース株を見極めなければならない投資家にとって課題となっています。株主総会でバフェット氏は次のように述べました。

「新しいことが現れても、機会がついてくるとは限りません。機会が訪れるのは、他の人が愚策に陥った時です。バークシャー・ハサウェイの経営に携わってきた58年の間に、愚策に陥る人の数は明らかに増え、それも大きな愚策を犯すようになりました。彼らが愚策に陥る理由は、多かれ少なかれ、われわれが事業を始めたころよりも、人々が他人から簡単にお金を得られるようになったことにあると思われます」。

バフェット氏は、現在の市場で投資を始めたとしても、ウォール街の短期的な視点にとらわれず、長期的なファンダメンタルズに基づいて機会を特定するだけで、十分に成功できると考えています。

「世の中は圧倒的に近視眼的です。企業の投資家向け説明会に参加してみると、経営陣は、ぎりぎり達成しそうなガイダンスを打ち出すことばかり考えています。5年後、10年後、20年後に結果を出すために何をすべきかを考えている人にとって、これはおあつらえの世界です。できることなら、今から投資を始め、わずかな金を大金に変えることができたら、どれほど面白いでしょう」。

バフェット氏が駆け出しの頃、バリュー投資家にとって必要な最大の武器は、情報へのアクセスでした。若き日のバフェット氏が夢見た以上の情報が、大した努力もせずに入手できるようになった今、最大の武器は、雑念を無視する能力と、長期的視点を維持し続ける自制心でしょう。

最も重要なことに集中する

バフェット氏は、投機的な賭けや、大企業が中小企業を利用することを嫌っており、数年前からそれを言葉にしています。その一方で、個人投資家のように資金の少ない投資家にとって心強いコメントも発しています。

「誰でも参加できるようになったこの巨大な資本主義市場において、投資というものはほぼ姿を消してしまいました。今では、大して優れてもいないアイデアを他者に売り込むことで大金が動きます。もし、われわれのように多額の資金を運用せず、少額の資金を運用するのであれば、チャンスは大きくなるはずです。チャーリーと私でいつも意見が異なることがあるのですが、チャーリーはかなり悲観的に世の中を見ていますが、私はいつも『何か見つかるはずだ』と考えています。今のところ、どちらの考えもある意味で正しいようです」。

個人投資家であることの最大の利点の1つは、自分の成果が他の投資家と比較されないことです。何よりも重要なのは、自分の経済的目標を達成することです。経済的目標を定め、自身のリスク許容度に沿った投資配分を行うことは、1年や2年といった視点で市場に勝つことよりもはるかに重要です。

ウォール街の短期的な視点を利用する

個人のバリュー投資家に対するバフェット氏の揺るぎない楽観論にも関わらず、バフェット氏もマンガー氏も、自分たちが始めた頃よりも現在の投資が格段に難しくなっているという点では同意見です。マンガー氏は株主総会で次のように述べています。

「多くの賢い人の手中には多くの金があり、みんながお互いを出し抜き、他の人たちからお金を巻き上げて誰よりも大きくなろうとしています。これは、われわれが始めた時とは根本的に異なる世界であり、チャンスもあれば、同時に不愉快に感じることもあるでしょう」。

お互いを出し抜こうとするあまり、ウォール街では時に、ある銘柄が短期的に大幅に過大評価されたり、過小評価されたりすることがあります。これは長期投資家にとって、世代を超えた富をもたらす可能性があります。バークシャー・ハサウェイには、経営難に陥った金融機関への機敏な投資や、最近の成功例ではアップルへの投資など、ミスプライスされた資産を利用してきた歴史があります。

バフェット氏と同氏のチームがアップル株を買い始めた時、株価収益率(PER)は12倍前後でした。当時のウォール街は、サービス収入を拡大しようとするアップルの能力に懐疑的でした。最新の2023年1-3月期決算で、同社はサービス収入だけで209億ドルという驚異的な数字を記録し、同セグメントの過去最高を更新しました。

個人投資家にとっての安心材料

ウォール街の影響力やますます高度化する公開市場を考えて、弱気になるのも無理もありません。しかし、ここ数年で得た教訓があるとしたら、市場は短期的なパフォーマンスに対してかつてないほど敏感になっているということでしょう。2020年の乱高下、2021年のハイテクブーム、2022年の急落、そして2023年の緩やかな回復など、近年の市場は扱いが難しいように感じるかもしれません。しかし、詳しく見てみると、優良企業にとって、株価変動は単なるノイズにすぎません。

つまり、ウォール街の競争はこれまで以上に熾烈になっていますが、個人のバリュー投資家は、信念と忍耐を貫く限り、株式市場で良い成果を上げることができると考える十分な理由があるということです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Daniel Foelberは、記載されているどの銘柄のポジションも保有していません。モトリーフール米国本社はアップル、バークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。