新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型確定拠出年金など、資産形成を行う制度が充実してきました。そのため、長期にわたって主に投資信託を活用して、積立投資を行う人も増えています。今回はこれから積立投資を始める人にも、すでに始めている人にも役立つ「126ルール」についてご紹介します。

一括貯蓄・投資では「72の法則」を活用

長期投資のメリットは時間を味方につけることで、複利効果を享受できることです。その効果を理解するために有効なツールとして知られているのが「72の法則」です。

これは貯蓄・投資した時に何年でお金が2倍になるかを一括で簡易に知る方法です。計算式は「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となります。

この法則を活用すると、預ける・投資するお金を2倍に増やすには、どのくらいの利回りで何年投資する必要があるかが簡易にわかります。例えば、3%で運用すると約24年、5%で運用すると約14.4年で預けた(投資した)お金が2倍になるというわけです。

ただし、現状では比較的金利が高いネット銀行の定期預金にお金を預けても金利は0.2%程度です。「72の法則」に当てはめると、「72÷ 0.2=360」となり、預けたお金が約2倍になるには360年かかってしまいます。そのため、資産形成で長期的にお金を育てるには、貯蓄だけでなく、投資を組みわせる必要があるのではないでしょうか。

 

【72の法則:一括でお金を預けた場合、何年で元本が2倍になるか】
・1%で運用した場合:72÷1=72  約72年
・2%で運用した場合:72÷2=36  約36年
・3%で運用した場合:72÷3=24  約24年
・4%で運用した場合:72÷4=18  約18年
・5%で運用した場合:72÷5=14.4 約14.4年
・6%で運用した場合:72÷6=12  約12年

 

また、この計算式を変形すると「〇年でお金を2倍にするのに必要な金利」もわかります。例えば、一括で預けた(投資した)お金を20年で2倍にするには、72÷20年=3.6%で運用すればいいというわけです。

ただし、「72の法則」はまとまったお金を銀行預金に預ける、あるいは一括で投資した時にお金が2倍になる期間がわかる簡易な計算方法です。積立貯蓄や積立投資で資産形成を行う時にはこの法則は使えません。そこで活用したいのが、次にご紹介する「126ルール」です。

積立投資額が2倍になる期間がわかる「126ルール」

「126ルール」とは、慶應義塾大学理工学部の枇々木規雄教授が「72の法則」に対応する積立投資のルールとして提案したものです(※1)。積立投資を行うという前提のもと、積立元本が2倍になるには「年数×利率≒126」(利率は%)という計算式が成り立つそうです。

つまり、「126÷金利≒お金が2倍になる期間」という計算式を使うことで、積立を行うと何年で元本が2倍になるかがわかります。例えば、3%で運用できた場合、126÷3=42となり、42年積立をすると積立元本のおおよそ2倍になることがわかります(※2)。また、中長期的に約4%で運用できた場合であれば、126÷4=31.5となり、31.5年で積立元本の2倍になります。

 

【126ルール:積立をした場合、何年で元本が2倍になるか】
・1%で運用した場合:126÷1=126  約126年
・2%で運用した場合:126÷2=63    約63年
・3%で運用した場合:126÷3=42    約42年
・4%で運用した場合:126÷4=31.5 約31.5年
・5%で運用した場合:126÷5=25.2 約25.2年
・6%で運用した場合:126÷6=21    約21年

 

また、この計算式を変形すると「〇年でお金を2倍にするのに必要な利回り」もわかります。積立をしていき、42年で元本を2倍にするには126÷42=3%程度の運用が必要というわけです。

仮に、大学を卒業して23歳から65歳まで42年働くとします。「働き始めてすぐに積立投資を始め、平均的に利率3%で投資できれば、おおよそではあるが、積立額は半分で済むと考えるとわかりやすいだろう」と枇々木教授は解説しています。

このケースでは、42年後に2000万円を準備したいのなら、平均的に3%で運用できればという前提で考えると、積立元本は2000万円の半分の1000万円ですむ、ということになります。つまり23歳から2万円弱(1000万円÷42年÷12ヶ月)を毎月積立していけば、65歳になった時には2000万円を準備できるイメージです。

無理せず積立投資額の1.5倍を狙うなら「76ルール」も

積立投資を行うという前提のもと、積立元本が2倍になる「126ルール」について解説しましたが、枇々木教授は他のルールも紹介しています。例えば、積立元本が3倍となる「190ルール」や、積立元本が1.5倍となる「76ルール」などです。

前述の42年積立をしたケースで積立元本が2倍になる「126ルール」では126÷42=3%程度の運用が必要でしたが、積立元本が3倍になる「190ルール」では平均的に4.5%程度の運用が必要です。一方、積立元本が1.5倍となる「76ルール」であれば、76÷42=1.81%程度の運用で目標を達成できます。

 

【76ルール:積立をした場合、何年で元本が1.5倍になるか】
・1%で運用した場合:76÷1=76   約76年
・2%で運用した場合:76÷2=38   約38年
・3%で運用した場合:76÷3≒25.3   約25.3年
・4%で運用した場合:76÷4=19   約19年
・5%で運用した場合:76÷5=15.2  約15.2年

ここまで積立投資に役立つルールをみてきました。もちろん、リスクはコントロールできますが、リターンはコントロールできません。この計算の通りになるわけではありませんが、積立をする金額や期間、運用利率がどの程度であれば、将来のお金を準備できるのか、ざっくりイメージできるのではないでしょうか。

新NISAやiDeCo、企業型確定拠出年金といった制度を利用して、投資信託の積立をされている方は活用してみてはいかがでしょうか。

※1:参考文献『126 ルール: 積立投資の複利効果を概算する簡単な計算ルール』(枇々木規雄・2021)。
※2:72ルールと同様、投資をする場合のリスクは考慮していない

(2022年9月29日に公開した記事を2024年1月27日に内容を一部更新しました。)