モバイル決済利用者の8割が「現金もキャッシュカードも携帯しない」

北京の街中では、銀行の店舗にはもちろん、オフィスビルや商業施設など、多くの場所にATMが設置されています。私は、中国銀行(Bank of China)の口座を持っているのですが、事務所に隣接するホテルのロビーや自宅マンションにもATMが設置されていますので、大変便利です。

オフィスビルや商業施設のものは利用可能な時間が限定されていますが、多くはメンテナンス等を除き365日24時間稼働しています。入出金の手数料も無料ですので、利便性は非常に高いと言えます。

ところが、近年キャッシュレス決済が急速に普及したことから、現金を使用する人が急減し、金融機関にとってはATMの維持管理のコストが負担となっているほか、機器のメーカーなどは需要の急減に頭を抱える事態となっています。

中国では、二次元バーコードを用いたスマホ決済が広く用いられており、昨年金融機関が取り扱った決済の件数は605.3億件、金額は277.4兆元(約4,600兆円)に達しました。
前年2017年から、件数は61%、金額は37%それぞれ急増しています。

調査会社のデータによると、モバイル決済の利用者の80%が、毎日利用しているとしており、また96%が利便性の高さを評価しています。

さらに、利用者の80%が「現金もキャッシュカードも携帯しない」としているほか、半数が「モバイル決済が現金を駆逐する」と見る一方、残りの半数は「今後も現金との共存が続く」と見ています。

対照的に、昨年末の時点で中国全土に設置されたATMは111万台で、3ヶ月前の9月末から17,800台、1.6%減少しました。

金融機関はATMコスト負担、関連企業の生き残り戦略に注目

当然とは言え、機器のメーカーや関連設備、運用等を担う企業には逆風となっています。
北京と広州のメーカーが相次ぎ発表した決算は、いずれも昨年の営業収益が前年比3割以上の減収となり、最終損益が赤字転落となりました。両社ともに、事業内容の見直しを進めるとしていますが、見通しは明るくないようです。

中国では日系企業もATMの製造と関連サービスを展開していますが、そちらの動向もちょっと心配になるところです。

日本では、今年のゴールデンウィークが10連休となるため、ATMの現金が底をつくのではないかなどと心配されていますが、中国ではATMの利用者が本当に少なく、連休の前などでも、ほぼ待つことなく利用できます。

大変便利でありがたいのですが、金融機関にとってはコスト負担が重荷となっているであろうことが容易に想像できます。

もっとも、この点では日本の金融機関の方が厳しいものと思われ、実際、東京でも、時々ですが以前利用していたATMが撤去されているのを目にします。

私は未だに現金を愛用していますので、ATMがなくならないよう、また台数減で利便性が低下することが無いよう、願うのみです。

中国でのキャッシュレス決済の普及には、偽札の問題など、利便性だけではない様々な事情があるのですが、変化の速さには本当に驚かされます。

ビジネスの環境としては、大変厳しくもあり、またチャンスも大きいと言えるでしょうか。ATM関連企業の生き残り戦略に注目するとともに、新たなサービスの台頭にも期待したいと思います。