円売りポジション手仕舞いがもたらす円高

2年連続で米ドル安・円高になった11月、12月

米ドル/円は、過去2年連続で11月、12月と2ヶ月連続の陰線(米ドル安・円高)となった(図表1参照)。2023年は、11月の151円から12月には140円に、そして2022年は10月末の151円から12月末には130円までの米ドル/円急落となった。

では2024年の11月、12月はどうか。年末にかけて円高になりやすい傾向は、今回も続くことになるのか?

【図表1】米ドル/円の月足チャート(2021年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

それにしてもなぜ、過去2年連続で11、12月と米ドル安・円高が続いたのか。図表2は、米ドル/円のチャートに、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを重ねたもので、これを見ると、年末にかけて米ドル安・円高が広がる中で、投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)が縮小に向かっていたことが分かるだろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル安・円高が広がる中で、投機筋が損失回避の意味で米ドル買い・円売りポジションを縮小させるのは分かりやすいが、両者の間には、逆の因果関係もあり得る。つまり投機筋が米ドル買い・円売りポジションを縮小する(米ドル売り・円買い)ことが原因で、結果として米ドル安・円高になるということだ。では過去2年の年末にかけての米ドル安・円高は、どちらの因果関係がより強く影響したのだろうか。

損益確定の動きが強まる年末

年末にかけては、1年間のトレード収益を明確にするべく、損益確定の動きが強まりやすい。過去2年は10~11月にかけて150円を超えるまで米ドル高・円安が展開し、その中でCFTC統計の投機筋の円売り越しは10万枚以上の大幅に拡大していた。円売りポジションの利益確定の動きが円高をもたらし、その円高がさらに円売りポジションの手仕舞いにつながる、そうした循環が11、12月と2ヶ月連続の米ドル安・円高をもたらした大きな要因だったのではないか。

2024年は7~9月に161円から139円まで最大20円以上の強烈な米ドル安・円高が起こった。CFTC統計の投機筋の円ポジションも、大幅な売り越しから一時は大幅な買い越しに転換した。

しかし、10月以降米ドル高・円安が再燃した中で、投機筋のポジションも、規模的には過去2年ほどではないものの、再び米ドル買い・円売りに転換したようだ。このポジションは、年内の米ドル高・円安見通しが続く中ではさらに拡大する可能性があるだろう。ただ、米ドル高・円安見通しが一段落すると、利益確定、損失回避の米ドル買い・円売りポジション手仕舞いの動きは過敏になる可能性があるかもしれない。2024年の場合、夏の米ドル/円急落を受けた米ドル買い・円売りポジションの損失により、過去2年ほど米ドル買い・円売りポジションの含み益があるとは考えにくいためだ。

米ドル買い・円売りポジション自体、過去2年ほど大きくはないようなので、その手仕舞いに伴う米ドル売り・円買いの影響も少ないだろう。それでも年末にかけて相応の米ドル安・円高をもたらす可能性はあるのではないか。