モトリーフール米国本社、2024年11月10日 投稿記事より
AIの追い風を受けている両銘柄のうち、どちらが投資先として優れているのか?
パランティア・テクノロジーズ[PLTR]とマイクロソフト[MSFT]はどちらも、人工知能(AI)市場の急速な拡大から恩恵を受けています。
パランティア・テクノロジーズは、さまざまな異なったソースから膨大なデータを集め、顧客企業が迅速に意思決定を下すのをサポートしていますが、最近では生成AIツールを使ってそのプロセスを効率化しています。
マイクロソフトは、世界で最も使われているPCオペレーティング・システム(Windows)、世界有数の生産性ソフトウェアシリーズ(Office)、世界第2位のクラウドインフラ・プラットフォーム(Azure)を有しています。また、同社はChatGPTを生み出したスタートアップ企業のOpenAIへ莫大な投資をしており、OpenAIの生成AIツールの自社サービスへの統合を進めています。
過去12ヶ月間にパランティア・テクノロジーズの株価が170%超上昇した一方で、マイクロソフトの株価上昇率は20%未満となっています。パランティア・テクノロジーズがマイクロソフトをこれほど大幅にアウトパフォームしているのはなぜか、そしてパランティア・テクノロジーズは依然として、グロース志向の投資家にとって有望なAI銘柄なのかを探ってみましょう。
パランティア・テクノロジーズの未来は明るいが、バリュエーションは過熱気味
パランティア・テクノロジーズは、2つの主要プラットフォームを運営しています。政府向けの「Gotham」と民間企業向けの「Foundry」です。米国のほとんどの政府機関はGothamを使ってデータを管理しており、パランティア・テクノロジーズは「米国政府全体のデータ管理におけるデフォルトのオペレーティング・システム」になることを最終目標としています。一方でFoundryも拡大しており、大手の企業顧客を取り込んでいます。
2020年に上場して以降、会社側は売上高が2025年にかけて年率30%超で成長するとの見方を示していました。実際の売上高は、2020年は前年比47%増、2021年は同41%増を実現しましたが、2022年は同24%増、2023年は同17%増にとどまっています。
会社側は減速の理由として、企業のソフトウェア支出に対するマクロ経済的逆風と、政府との契約のタイミングが一定でないことを挙げています。しかし、売上高の伸びが減速する中、同社はコスト削減や株式報酬に関する費用削減を積極的に行っています。その結果2023年には、一般会計基準(GAAP)ベースで黒字に転換しました。
パランティア・テクノロジーズは2024年について、売上高は26%増加し、GAAPベースで黒字を維持すると見込んでいます。この成長の原動力となったのは、政府との新たな契約(ウクライナと中東で紛争が続いていることも一因)、米国の民間向け事業の成長加速、生成AIサービスへの需要拡大です。安定的に利益を生み出していることもあり、2024年9月にはS&P500種指数の構成銘柄に採用されました。
アナリストは2024年通年の売上高が26%増、1株当たり利益(EPS)が148%増と予想しています。また、2023年から2026年にかけて年平均成長率は、売上高が年率23%、EPSは年率59%と予想されています。
目覚ましい成長率ですが、足元の株価は、2025年予想株価収益率(PER)186倍という驚愕のバリュエーションで取引されています。このバリュエーションは、同社が今もAIブームによって支えられていることを示唆しています。
マイクロソフトは引き続き健全なペースで成長、バリュエーションは妥当な水準か
過去10年間、サティア・ナデラCEOはマイクロソフトで「mobile first, cloud first(モバイルファースト、クラウドファースト)」という変革を容赦なく推し進め、最終的に成長を回復することに成功しました。ナデラCEOの下、Officeをデスクトップ向けソフトウェアからクラウドベースのサービスやモバイルアプリに変え、Azureをアマゾン・ドットコム[AMZN]のAmazon Web Serviceに負けないように拡張し、Windowsをクラウド、モバイル、AIサービスの中心的ハブへと転換させました。同社はさらに、新しいハードウェア・デバイスを次々と発売し、Xboxゲーム部門を大胆な買収によって拡大してきました。
2020年度(6月期)から2024年度にかけて、マイクロソフトの年平均成長率は、売上高で年率14%、EPSは年率20%を記録しました。この成長の大半はAzureによるもので、Azureは、多くの企業がモバイル、クラウド、AIサービスの利用急増に対応するために自社のクラウドインフラをアップグレードするのに伴って、急拡大しています。
OpenAIへの大規模投資も、同社の生成AIツールをWindows PCやモバイル機器で使われるCopilotプラットフォームに組み込んだことで、実を結んでいます。これらのサービスのおかげで、検索市場においてはアルファベット[GOOGL]のGoogleに対するマイクロソフトのBingのポジションが向上し、生産性サービスにAIアルゴリズムが統合され、より多くの一般ユーザーがマイクロソフトを通じて生成AIツールに接続できるようになりました。
アナリストは2024年度から2027年度にかけてマイクロソフトの売上高とEPSが、どちらも年率15%で成長すると予想しています。2025年予想PERは27倍と、バリュエーションは妥当な水準にあり、クラウド、AI、ゲーム市場の長期的成長から利益を得る最も安全な投資先の1つと言えるかもしれません。米国の独占禁止規制当局がグーグルにAndroid部門やChrome部門の分社化を迫れば、マイクロソフトにとっては思わぬ追い風で株価が上昇する可能性もあります。
軍配はマイクロソフトか
パランティア・テクノロジーズには明るい未来がありますが、期待の高さはすでに高騰しているバリュエーションに織り込まれています。マイクロソフトの方が、AI市場の長期的成長から利益を得る方法として、バランスが取れています。そのため、現時点では、AIブームによるパランティア・テクノロジーズの熱狂的上昇を追うよりも、マイクロソフトに投資したがほうがよいかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Leo Sunは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アルファベット、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト、パランティア・テクノロジーズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。