北京市内の公園で犬の散歩が禁止に

経済が成長し、所得が増え生活に余裕ができれば、ペットへの関心が高まるのは世界共通です。
中国でも、犬や猫に加え、伝統的に愛玩されている小鳥や、最近では富裕層に人気の錦鯉など、ペットの市場が成長しています。

北京市内には各地にペット用品の店や動物病院などが見られます。ショッピングモールのペット店では犬や猫が売られており、休日には子どもを連れた多くの家族で賑わっています。
 
一方、こちらも世界共通と言えそうですが、中国でも犬の散歩を巡り、手綱(リード)を使わず通行人に恐怖や危険をもたらす、あるいはふんの始末をせず靴を汚す等の問題が後を絶たず、飼い主と一般市民の対立を招く事態も生じています。
 
北京市政府はこのほど、市内の公園で犬を散歩させることを禁止する措置を取りました。以前より、公園での禁止行為として、騒音、植物の採取、釣り等が挙げられていたのですが、それらに「犬の散歩」が追加されました。

規制の実効性を担保するため、公園内の各所に目立つ掲示を行い、また1,000名のボランティアを動員して監視を行うとしています。ボランティアチームのリーダーは、「公園内の環境を維持するため、まずは犬を公園内に入れないよう飼い主への説得に努める」と話しています。

市の決定に賛否両論も飼い主のマナーはまだまだ

市の決定は、新たな議論を巻き起こしています。

ある30歳の男性飼い主は、犬を飼い始めてから、規制がどんどん厳しくなる一方と嘆いています。公園だけでなく、男性が住む集合住宅の公共エリアでも、犬の散歩が禁止されているそうで、「以前は公園で犬と一緒に走ることが楽しみだったが、今は自宅以外に犬と一緒にいられるところがない」とこぼしています。

また、とある22歳の男性も「大型犬であれば理解できるが、小型犬を含め、一律に禁止するのはいかがなものか?」と述べ、今回の規制に疑問を示しています。

一方で、規制強化を支持する声も聞かれます。

ある63歳の女性は、仕事を退職し2歳になる孫の世話を日課にしていますが、孫を連れて公園を訪れる際には、犬に近づかないよう注意していたとし、全面禁止までは不要と考えるものの、他人への危害を防ぐため、飼い主への規制は強化されるべきとの意見です。

両者の考えはなかなか折り合えないところでしょうが、まずは飼い主側が適切な措置を講じることで、一般市民の理解を得るように努めることが必要と思われます。

私の自宅近辺でも、朝方などは犬を散歩させている人を目にします。リードを使っている人はまず皆無ですし、ふんの始末をする人もおよそ目にしたことはありません。ほとんどは小型犬ですので、恐怖を感じることはないのですが、日本の水準と比べると、飼い主のマナーはまだまだと言わざるを得ません。

狂犬病感染の危険も深刻

また、より深刻な問題として、狂犬病感染の危険があります。以前、こちらの日本人医師に聞いた話では、在留邦人の中にも年間数件程度、犬に咬まれて狂犬病ワクチンの接種を受ける人がいるそうです。

また、中国でも地方部には野良犬が多くいる地域もあり、商社や資源関係企業の駐在員など地方に足を運ぶ機会の多い人にとっては、赴任前にワクチンの接種が必須と聞きました。

私も、医療機関に相談したのですが、「北京であれば咬まれてもすぐにワクチンの接種ができるので大丈夫」と言われ、接種はしていません。それにしても怖い話ではあります。
 
ペットを巡るマナーの問題そのものは中国に限らないものですが、経済発展が象徴的に現れた事例のひとつと言えそうな話題でした。