北京は大都市ながら「夜が早い」

北京は観光地でないこともあり、大都市としては「夜が早い」という特徴があります。一部に24時間営業の火鍋店や飲茶の食堂などがありますが、中華料理店の多くは21時から22時に閉店となり、深夜営業の店はお酒がメインのバーや日本料理店、特に居酒屋が中心になります。

地下鉄の終電も23時頃と早く、終電後の足は深夜バスかタクシーになります。もっとも、最近は中国版Uberの配車アプリ「滴滴出行(ディディチューシン)」が普及し、車の確保が比較的容易になりましたので、料金が安いことと合わせ、帰宅の足の問題はかなり軽減されました。

世界各国の大使館に近く、東京の六本木に例えられる「三里屯」というエリアは、中国人に加え、欧米人の若者で連日賑わっているのですが、北京ではこのような深夜まで人通りの多い地域は少なく、都心部、郊外ともに夜間は暗く静かなエリアが多くなっています。

2021年末までに「夜の首都」確立を狙う

経済の活性化をもくろむ北京市政府は、このほど夜間の消費を喚起するための様々な施策を発表しました。

再来年2021年の末までに、夜間の経済活動を指す「ナイトタイムエコノミー」振興のために市内の各地に深夜まで賑わうエリアを作り、「夜の首都」としてのブランドを確立するとしています。

施策の第一弾として、7月19日(金)より市中心部の一部の地下鉄路線を対象に、金曜日と土曜日に終電時刻の繰り下げを行っています。終電時刻を1時間半程度繰り下げ、0時半頃まで利用できるようになっています。

地下鉄の終電時刻の繰り下げは今後も拡大する方針で、加えて深夜営業のコンビニや書店、映画館などを増やす計画です。さらに、世界遺産の「頤和園(いわえん)」など主要な観光スポットについても、開園時間を延長し、観光客の利便性と回遊性を向上させる計画としています。

北京は、東京など日本の大都市と比べると、一部の中心地域を除きオフィス街、繁華街と住宅地の住み分けが曖昧です。また近年は、従来オフィス街であったエリアに商業施設などの進出が盛んになっています。このあたりは、東京の丸の内や日本橋、さらに日比谷などの開発状況に似たものがあります。

数十年前の東京と同様、北京も夜型都市に移行するか

中国の特徴として、中央政府が各地方政府を競わせ、より高い経済成長を実現した省や市を優遇することがあります。そのため、一部の地方政府は不動産開発に走り、売れ残ったマンションと多額の負債に苦しむなど、副作用も生じているのですが、各地方政府が地域の実態に合った施策を考案し、成果を挙げている例もいろいろあるそうです。

北京市政府は「夜の消費」に目を付けたわけですが、上海市や天津市も同様の施策を実行中とのことで、将来の消費増と経済活性化につながるか、注目されるところです。

上述の通り、北京の日本料理店、特に居酒屋は深夜1時くらいまで営業するところが多く、ラストオーダーまで幅広い料理を提供してくれます。日本人の夜更し好きが反映されているようにも思いますが、最近はそのような店にも中国人、特に若年層の客が多く見られます。

日本の1980年代から1990年代も、終電の繰り下げや深夜バスの増発など、夜型の生活への対応が進みましたが、現在の中国でも同様の状況と見受けられます。経済発展と都市化の進行を受け、中国の都市住民の生活も夜型に移行することになるのでしょうか?

今回もまた、現在の北京が数十年前の東京に重なって見えることとなりました。