先週(11月11日週)の振り返り=金曜日に米ドル/円が急反落
行き過ぎた米ドル高・円安の修正
先週の米ドル/円はこの間の高値を更新し、157円近くまで一段高となりました。ただ11月15日(金)は一転して、最大で3円近くもの大幅な反落となりました(図表1参照)。この日は、注目された米10月小売売上高などもむしろ予想より強い結果となるなど米金利上昇、米ドル買いに反応しそうな材料があった一方で、特段の米ドル売り材料はありませんでした。このような状況で、なぜ米ドルの大幅反落となったのでしょうか。
米ドル/円と日米金利差の関係を細かく見ると、155円を大きく米ドル/円が上回った動きは「行き過ぎ」だった可能性があります(図表2参照)。その意味では、行き過ぎた米ドル高・円安の修正が金曜日に広がったことで、米ドル/円が大きく反落したのでしょう。
年末にかけての米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いか
2022年と2023年は、年末にかけて比較的大きな米ドル安・円高となった
そしてもう1つ注目されるのはポジション調整の影響です。過去2年連続で、11、12月は2ヶ月連続で米ドル陰線(米ドル安)となりました(図表3参照)。これをもたらした主因は、年末にかけての米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いだったと私は考えています。
過去2年とも、10月末から11月にかけて大幅な米ドル高・円安となりました。このため為替市場では米ドル買い・円売りポジションが大きく積み上がったと考えられました。そのポジションの利益を確定する動きが年末にかけて広がり、それが2022年の場合は約20円、そして2023年も約10円の比較的大きな米ドル安・円高をもたらした可能性があったわけです(図表4参照)。
2024年の年内、利益確定のタイミングは?
この場合、重要になるのは、年内の米ドル高・円安の見極めです。米ドル買い・円売りポジションの立場からすると、少しでも米ドル/円が高いところで利益確定したいと考えるでしょう。逆に年内の米ドル高・円安が一段落した可能性がありそうなら、大きく米ドル/円が下がる前に利益確定を急ぐことになります。
2024年の場合、夏場に米ドル/円が急落したことから、過去2年ほど米ドル買い・円売り戦略は大きな利益をもたらさなかった可能性があります。それでも、米大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けた米ドル高・円安は、年内の最後の勝負所と位置付け、過去2年ほどではないにしても米ドル買い・円売りポジションが拡大していたのではないでしょうか。
この米ドル買い・円売りポジションは、年内米ドル高・円安が160円まで進むならさらに拡大するでしょうが、そこまでに達することなく米ドル高・円安が終わりそうとなったら、利益確定を急ぐことになるかもしれません。
先週11月15日(金)、特段の米ドル売り材料があったわけでもなく、予想より強かった米小売売上高などの材料を無視するように米ドル売り・円買いが広がったのは、少しでも米ドル/円が高いうちに米ドル買い・円売りポジションの利益確定を目指す動きが強まった影響が大きかったのではないでしょうか。
今週(11月18日週)の注目点=円売りポジション手仕舞いが鍵
米金利上昇・米ドル高がまだ続いているのか
米ドル買い・円売りポジションの損益確定の動きを考える上で注目されるのは、トランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高がまだ続いているのかの見極めです。米ドル高がまだ続いているなら、米ドル買い・円売りポジションは維持されるでしょうが、終わった可能性があると見たら、少しでも米ドル/円が高いうちに利益確定を狙う動きが米ドル/円の上値を抑えることになるでしょう。
8年前の2016年、大統領選挙でのトランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高の「トランプ・ラリー」は12月上旬にかけて約1ヶ月続きました(図表5参照)。この時は開票が進む中で、トランプ氏が勝利しそうとなってから初めて金利上昇・米ドル高などを見込んだ「トランプ・トレード」が本格化したので、それが約1ヶ月も続いたのではないでしょうか。
2024年内の米ドル高・円安はほぼ終わりか
今回は、選挙中から「トランプ・トレード」は大きな話題となっていました。その意味ではすでに「トランプ・トレード」はかなり消化されており、正式な勝利確定後に拡大する余地は限られる可能性もあるでしょう。そうした見立て通りなら、「トランプ・トレード」の影響を受けた年内の米ドル高・円安はほぼ終わりの可能性があり、米ドル買い・円売りポジションはさらに拡大するより、その手仕舞による米ドル安・円高への影響が注目されることになるのではないでしょうか。
代表的な投機筋であるヘッジファンドは、120日MA(移動平均線)が売買転換点の目安になっていると見られています。足下のそれは151.2円なので、米ドル/円が151.2円を割れそうになると、米ドル買い・円売りポジションの損益確定売りは加速する可能性も出てくるでしょう(図表6参照)。
今週の予想レンジを151.5~156.5円で想定する理由
以上を踏まえて、今週の米ドル/円の予想レンジを考えてみます。私はすでに年内の米ドル高・円安は終わった可能性もあると考えており、一方で152円を割れると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞が加速する可能性がありそうなので、今週の予想レンジは151.5~156.5円で想定したいと思います。