今回は、NISA(少額投資非課税制度)についての、よくある誤解をみていきたいと思います。セミナーなどでよく質問される、代表的な2つを取り上げます。
誤解1:「つみたて投資枠」で債券ファンドが買えるようになる・なった?
つみたて投資枠では「債券のみ」のファンドは買えない
「つみたて投資枠」の商品の拡充で債券ファンドを購入できるようになる(なった)と誤解している人がいますが、「つみたて投資枠」で債券ファンドは購入できません。そもそも、「つみたて投資枠」の対象は、株式に投資をする投信か、株式を含むバランス型で、債券だけに投資する投信は対象外です。
つみたて投資枠の対象商品(※)は以下の3つに分類されます。
(2)指定インデックスファンド以外の投信
(3)ETF(上場投資信託)
債券の割合が50%を超えるバランス型の投信は「つみたて投資枠」で購入できる
このうちの(2)指定インデックスファンド以外の投信については、「主たる投資の対象を株式とする(ポートフォリオに占める株式の割合が50%超である)」ことが必要でしたが、この要件が見直され、「主たる投資の対象を株式または公社債とする」となりました。
そのため、債券の割合が50%を超える、比較的値動きの安定したバランス型の投信も対象になった、ということです。債券だけに投資するファンドが対象になったわけではありません。(1)指定インデックスファンドについては従来から債券の割合が高いバランス型投信も対象です。
債券ファンドは、「成長投資枠」で投資可能
また、つみたて投資枠では債券ファンドは買えませんが、「成長投資枠」では購入できます。例えば、日本債券や先進国債券、新興国債券に投資するインデックスファンドや、物価連動国債に投資する投信、債券型のアクティブ投信などです。金融機関によって取り扱いは異なりますが、債券ETF(国内・海外)も対象です。もし債券に投資する投資信託を買いたい場合には、「成長投資枠」での購入を検討しましょう。
なお、個人向け国債や外国債券などは、成長投資枠でも購入することができませんので、特定口座や課税口座で投資することになります。
「つみたて投資枠」の対象拡大:新たに日本株指数に連動を目指す投資信託の追加
また、「つみたて投資枠」の対象拡大という点では、(1)指定インデックスファンドと(3)ETFで利用できる指数として、「読売株価指数(読売333)」と「JPXプライム150指数」が追加されました。
読売333については、すでに「SBI読売333インデックス・ファンド」(SBIアセットマネジメント)、「たわらノーロード 読売333」(アセットマネジメントOne)、「eMAXIS Slim 国内株式(読売333)」(三菱UFJアセットマネジメント)の3本がつみたて投資枠の対象ファンドに登録されています(2026年5月25日時点*)。
読売333は、国内株式市場の上場企業から直近60日平均日次売買代金の上位500社を抽出し、その中の直近20営業日平均浮動株調整時価総額の上位333社で構成されています。各社の割合を等ウェートにしているのが特徴です。
そのほか、複数の指数に連動する商品を組成する場合に限り利用が認められてきた「MSCI Europe Index」「MSCI AC Asia Pacific Index」などの株価指数についても、単独で使えるようになるため、今後は欧州やアジア・パシフィックなどの地域を対象としたインデックスファンドも対象に加わるかもしれません。
誤解2:投資信託や上場株式を売却すると非課税投資枠が年内に復活する
売却しても年内には復活しない
この誤解は、金融庁が2025年に出した「令和8年度税制改正要望」で、「投資商品の入れ替えをするための、非課税保有限度額の当年中の復活」を挙げていたからだと思われます。しかし、「非課税保有限度額の当年中の復活」は見送りとなりました。
そのため、現状ではNISA口座で投資信託や上場株式を売っても、売った分(簿価)の非課税枠がすぐに復活し、その年に(その非課税枠を使って)投資できるわけではありません。
2つの「非課税投資枠」を区別する
ここで整理しておきたいのは、NISA制度では「非課税投資枠」が2つ存在することです。
このうち「年間非課税投資枠」については、投資信託や上場株式などを売却しても、復活しません。投信などを売ろうが売るまいが、その年も翌年も、投資できるのは年間360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)まで、です。
では、NISA口座内で、投資信託や上場株式を売った場合、何が復活するのかといえば、「非課税保有限度額(総枠)」です。つまり、総枠である1800万円の枠を埋めたとしても、投資信託や上場株式などを売った場合、その分の枠(簿価)が空いて、再び空いた分の非課税枠を利用できますよ、ということです。
復活する非課税投資枠は「投資した時」の金額
空いた枠はすぐに使えるわけではなく、利用できるのは翌年以降になります。また復活する非課税投資枠は、売った金額(時価)ではなく、買ったときの金額(簿価)です。そのため、総枠(1800万円)を埋めるまでは、非課税枠の復活・再利用ということを意識する必要はありません。枠を埋めるまでは、淡々と投資を続けていけばよいでしょう。もちろん、その前に資金が必要になったときには一部を解約して使うこともできます。
非課税保有限度額(総枠)は利用者ごとに、国税庁で一括管理されています。「この人は総枠のうち、ここまで利用しているな」ということを把握しているわけです。複数金融機関に商品を保有する利用者については、その非課税保有限度額はすべて合算して管理されます(*1)。
これまで金融機関を変更した場合などは、非課税保有限度額の把握にそれなりの時間がかかりました。ただ、2026年1月からは金融機関がもつNISA簿価残高情報を、国税庁が認定したクラウドサービスを利用して提出することが義務化されています。今後、こうしたサービスなどの整備が進めば、将来的には非課税保有限度額(総枠)の復活が「翌年」以降という点は改善される可能性もあります。
*1:NISA口座はその年に稼働している=買付できる口座は1社のみ。ただし金融機関を変更した場合には、前の金融機関のNISA口座で運用を継続することは可能
