将来に備えてお金を貯めることは大事なことです。ただ、一方で闇雲に貯めて今の生活を犠牲にしても人生はつまらないものになります。少額投資非課税制度の「NISA」を最大限に活かそうと、無理な積立投資をしてしまい、日々の生活費や趣味の娯楽費を削って家計が苦しくなる状態「NISA貧乏」という言葉も生まれています。
今回は、自分にとって毎月いくら投資金額を積み立てるのが適切なのか、考え方を整理します。
お金を貯めること自体を目的にしない
そもそも、なぜお金を貯める必要があるのでしょうか。
それは、お金を貯めておくと将来時点で困らない生活が手に入るからです。たとえば、スマホや冷蔵庫といった生活必需品が急に壊れてしまうかもしれません。ケガや病気、リストラにみまわれることもあるかもしれません。
お金があればすぐにこれらの問題に対処できるので、困りごとを減らせます。必要なライフイベントにも使えます。以下は、主なライフイベントとかかるお金をまとめたものです。
また、お金は人生の選択肢を増やすためにも貯めておく必要があります。お金があれば当面の生活には困りませんし、働き方や今後の人生をじっくり考えることもできます。
でも、お金は使わないと意味がありません。お金は使うことで叶えたい夢を達成し、豊かな経験をすることもできます。新たなスキルを習得する、海外旅行で自分の視野を広げる、といったこともお金があり、使うからこそできる選択です。
「お金を貯めること自体を目的にしない」、胸に刻んでおきましょう。
積立投資の金額はどう決める?基本的な考え方
「お金はいくらあれば安心ですか?」とよく聞かれます。感じ方は人それぞれなので正解はありません。残念なことに、そもそもお金はいくらあっても不安は尽きないものなのです。これは筆者が多くのマネー相談を受けているからこそ、わかった現実です。
読者のみなさんは目標とする金額を貯められたら、それで満足するタイプでしょうか。それとも「さらに貯めよう」と考えるタイプでしょうか。一見、後者のほうが向上心は高くて努力家のようにみえますが、もしかしたら幸福度が上がりにくいかもしれません。
お金が1000万円貯まったら次の目標は2000万円、2000万円貯まったら次は…と、ゴールを動かすことを続けると、いくらお金が貯められても幸福度は増さないでしょう。それどころか、お金を貯めること自体が目的となり、肝心の夢や目標の達成にお金を使えなくなります。
また、他人の積立投資の金額(以下、積立額)や資産額を気にしても意味はありません。人それぞれ状況もお金に対する価値観も違うからです。他人のことは気にせず、自分の将来に備えるために、無理のない範囲で積み立てをしていけば良いのです。時間を味方につければまとまった資産が築け、それが将来のあなたに役に立つことでしょう。
以下、基本的な考え方をまとめました。
生活防衛資金を確保したうえで積立額を考える
インフレに対抗し、時間を味方につけた資産形成がいくら大切だとしても、投資を始める前に、生活防衛資金として最低でも「生活費6ヶ月分」は現預金で必ず確保しましょう。長い人生の間には、病気やケガで働けなくなったり、リストラにあったりすることがないとは言えません。傷病手当金や失業給付の受給中は、所得税の支払いはありませんが、住民税(前年度の所得に基づいて翌年度に支払うルールのため)と社会保険料の支払いは続きます。
家族構成や子どもの年齢によって適切な積立額は変わる
独身か、DINKSか、子育て世帯なのかで支出構造が大きく異なります。たとえ同じ年収であっても、積立額は時期により変わってきます。
貯めどき1:就職~結婚
就職してから結婚するまでの独身の時期は、収入もまだ多くないかもしれませんが、支出も少ないため、積立額を多くできるでしょう。特に、実家暮らしであれば家賃や食費なども少なくて済むため、お金を貯めたり増やしたりしておきたいところです。
貯めどき2:結婚~子どもの小学校卒業
結婚してからは支出が多少増えますが、夫婦共働きであれば収入も多くなります。子どもが生まれても、小学生の時期までであれば教育費の不安も比較的少ないでしょう。お金を貯めたり増やしたりしておきたい時期です。
かかりどき1:子どもが中学生~大学生
子どもが中学生・高校生となると教育費の負担は一気に大きくなり、大学入学でピークを迎えます。この時期はお金を貯めたり増やしたりしにくい時期でしょう。
貯めどき3:子どもの独立~定年退職
子どもが巣立ったあとから定年までは「最後の貯めどき」といわれる時期で、再びお金を貯めたり増やしたりしやすくなります。
投資初心者であれば月1万円、あるいは月数千円程度からでも問題ありません。投資でお金が増える感覚を身につけ、毎月投資するという習慣をつくりましょう。
投資に回すお金を増やすには支出削減が必須
投資に回すお金を増やすには、支出の見直しが必要になってきます。とはいえ、無理な節約をして、今の生活を犠牲にしても意味はありません。また人により支出傾向も異なります。
よって、まずは自身の支出傾向を把握しましょう。領収書・レシートだけでなく、カード明細やキャッシュレス決済の購入履歴をもとにチェックし、家計簿ノートや家計簿アプリにまとめていくのがベターです。
支出を減らす際に参考にしたいのが、費目ごとの目安です。図表4は、筆者がこれまで受けてきた相談事例などを元にしています。各費目の割合の目安と、手取り収入が30万円・35万円・40万円の場合の支出金額の目安を記載しています。
必ずこの通りに支出を抑えるということを推奨しているのではなく、上記と比べて明らかに自身の割合・金額が大きい費目は削減できるチャンスがあるということです。
お金の使いすぎを避けるには、費目ごとに予算を立てることが有効です。予算内であれば全部使っていいルールとすれば、後ろめたさを感じず、気持ちよくお金を使えます。
毎月の貯蓄の目標ラインは、手取り収入の2割。具体的な金額は人によって異なりますが、手取りの2割貯蓄は次に解説する「固定費の削減」を実践することで無理なく目指せる可能性が高いでしょう。
「固定費の削減」は無理なくでき、1度見直すと効果が持続する
支出削減は毎月決まって一定額発生する「固定費」から行うのがベターです。
固定費には、住居費、通信費、水道・光熱費、保険料、自動車費、サブスク代、その他年会費・月会費などがあります。固定費は金額が大きなものが多く、1度見直すと効果が長続きします。
特にスマホ代は節約の王道です。大手キャリアのサービスを利用していると、毎月1万円近くの費用がかかることもあります。大手キャリアの格安プランや格安スマホを利用すれば、月2,000円程度で済みます。
ほかにも、電気とガスを同じ会社から購入する「電気・ガスセット割」を活用すると年数千円の費用削減ができる場合や、シャワーを節水シャワーにしたり、節水コマを取り付けたりすると年数千円から1万円程度の削減ができる場合があります。
固定費が削減できたら、生活の満足度が下がらない程度に無駄遣いや変動費も見直していきましょう。
富の最大化ではなく、幸福の最大化を目指す
今の時代は、お金をかけずとも不自由なく快適に暮らしやすくなっています。今の生活の満足度と照らし合わせ、お金をかける必要のない支出は徹底的に見直して、支出のメリハリをつけていきましょう。
よい人生というのは「いかにお金があるか」で測るものはなく、「いかに幸せであるか」で測るものだと思います。富の最大化ではなく、幸福の最大化を目指すには、今も未来もどちらも犠牲にすることなく行動していくことが大事。無理のない範囲で資産形成するに尽きるかと思います。
