先週(2月9日週)はセクター間のローテーションとボラティリティ上昇が進んだ週に

先週(2月9日週)の米国株式市場は、指数水準だけを見ると大きな崩れはありませんでしたが、内部ではセクター間のローテーションとボラティリティ上昇が進んだ1週間でした。

S&P500は週初に7,000ポイントに接近する場面がありましたが、節目突破には至らず、その後は反落となりました。週間ではS&P500が-1.4%、ナスダック100が-1.37%となりました。恐怖指数とも言われるボラティリティ指数(VIX)は週を通じて19%超上昇し、20.6ドルで終了しました。2025年11月以来の高水準であり、投資家心理の不安定化を示しています

AIが広範な産業構造を変化させる懸念から市場全体に売り圧力が波及

市場の焦点は引き続きAI関連です。足元ではソフトウェア株を中心に利益確定売りが広がりました。背景には、AIがソフトウェアの価格体系や収益モデルそのものを圧迫するのではないかという懸念があります。

これまで市場ではテクノロジー、とりわけAIがソフトウェアや他のテック分野に破壊的な影響を及ぼす可能性が議論されてきました。しかし、現在ではその懸念はさらに広がり、AIがより広範な産業構造そのものを変えてしまうのではないかという認識へと変化しています。その結果、売り圧力は特定のセクターにとどまらず、市場全体に波及し、主要指数はいずれも下落しました。週を通じた値動きを振り返ると、市場心理の急速な変化が鮮明に表れています。

AIは保険、資産運用、不動産など幅広い産業に影響を及ぼす構造的テーマに

週初の2月9日(月)には、保険ブローカー株が売られました。AIが将来的に保険仲介業務を代替する可能性が意識されたためです。具体的には、アーサー・ジェイ・ギャラガー[AJG]やマーシュ・アンド・マクレナン[MRSH]などが下落しました。

2月10日(火)には、資産運用関連銘柄に売りが広がりました。チャールズ・シュワブ[SCHW]、エルピーエル・フィナンシャル・ホールディングス[LPLA]、レイモンド・ジェームズ・フィナンシャル[RJF]などが下落しました。AIによるポートフォリオ管理やアドバイスの自動化が、従来のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性が意識されています。

その後は不動産関連銘柄、とりわけ不動産管理会社やREITが売られました。ボストン・プロパティーズ、CBREグループ[CBRE]、ジョーンズ・ラング・ラサール[JLL]などが下落しました。AIによるオフィス需要の構造的変化やホワイトカラー雇用への影響が懸念されています。

そして2月12日(木)には、物流関連銘柄が大きく売られました。シー・エイチ・ロビンソン・ワールドワイド[CHRW]、エックスピーオー・ロジスティックス[XPO]、ジェイビー・ハント・トランスポート・サービシズ[JBHT]などが下落しました。AIによる物流の自動化や効率化が、従来の物流企業の収益機会を圧迫する可能性が意識されています。

このように、AIはもはや単なるテクノロジーセクターのテーマではなく、保険、資産運用、不動産、物流といった幅広い産業に影響を及ぼす構造的テーマとして、市場全体の評価軸を変えつつあります。そのような中、セクター別ではエネルギーや公益株が上昇する日が目立ちました。

重要指標が相次ぎ発表、消費の持続性への懸念やインフレ鈍化などが示される

マクロ面では重要指標の発表が相次ぎました。先週2月11日(水)に発表された1月の非農業部門雇用者数は13万人増と市場予想を上回り、労働市場の底堅さを示しました。これにより、FRB(米連邦準備制度理事会)が直ちに利下げに動く必要性は低いとの見方が強まりました。

2月10日(火)発表の12月小売売上高は前月比横ばいと予想を下回りました。2月12日(木)に発表された1月の既存住宅販売はに前月比-8.4%と大きく減少し、住宅市場の軟化も確認されました。家計債務の延滞率上昇も報告されており、消費の持続性には注意が必要です。また、2月13日(金)に発表された1月CPIは前年比+2.4%と市場予想を下回りました。インフレは徐々に鈍化しています。これを受けて2年債・10年債利回りは低下し、年内の追加利下げ期待が高まりました。市場では、年末のFF金利が現在の3.5~3.75%から2.75~3.0%へ低下する可能性が意識されています。

ただし、FRBは依然として労働市場を重視しており、インフレが目標の2%を明確に下回らない限り、急速な政策転換は見込みにくい状況です。

S&P500は短期的には値動きの荒さが継続するか

テクニカルで見ると、S&P500は再び50日移動平均線を下回り、100日線を試す展開となりました。直近2ヶ月半は6800~7000のレンジ内での推移が続いています。VIXが上昇トレンドにあることから、短期的には値動きの荒さが継続する可能性があります。

VIXがさらに上昇し、S&P500が100日線を明確に割り込む場合には、調整が深まるリスクもあります。一方で、恐怖指数の急騰は逆張り的な押し目形成につながる局面でもあります。

今週(2月16日週)はウォルマート[WMT]の決算に注目

今週2月16日(月)はプレジデンツデーであり、米国の歴代大統領、特に初代大統領ジョージ・ワシントンを称える祝日です。この日、米国株式市場は休場となります。

休み明けには、重要な経済指標であるPCEデフレーターや耐久財受注、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公表される予定です。今後のインフレ動向やFRBの金融政策の方向性を見極めるうえで重要な材料となるでしょう。

また、決算発表も約50社が予定されており、パロ・アルト・ネットワークス[PANW]、アナログ・デバイシズ[ADI]、ブッキング・ホールディングス[BKNG]、ディア[DE]、ウォルマート[WMT]などの決算が注目されています。

特にウォルマートの決算は、米国の個人消費の実態を測るうえで極めて重要です。同社は幅広い所得層の消費動向を反映する企業であるため、小売の現場で何が起きているのか、それが企業業績や今後の見通しにどのように表れているのかが大きな焦点となります。