足下でユーロ/ドルは、前回(10月7日)更新分で注目した8月24日高値と9月18日高値を結ぶレジスタンスラインを明確に上抜け、昨日(13日)は再び1.1400台を回復する場面も見られました。強い抵抗になり得ると見られていた一目均衡表の週足「雲」下限も上抜け、目先的には強い基調で推移しています。
一方のドル/円は、なおも8月下旬から続くもみ合いレンジ内での推移を続けるなか、日足「雲」に上値を押さえられる格好で重苦しい展開を続けています。8月12日高値と9月25日高値を結ぶレジスタンスラインを上抜ける格好にはなっているものの、ここ数日は上値を切り下げる展開となっており、とても「上方視界がスッキリと晴れてきた」という印象ではありません。
要するに、目下は全体にドル売りのバイアスがかかりやすくなっており、その原因が市場における米早期利上げ観測の後退にあることは言うまでもありません。本欄の前回更新分でも述べたように、ここ数か月分の米雇用統計において非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが鈍っているのは、米国で雇用のミスマッチが生じていることも一因であり、必ずしも米雇用情勢が減速しはじめているというわけではないと思われます。そうであるとするならば、やはり最大の懸案は中国をはじめとする新興国の先行きに対する懸念です。
そんななか、ついに中国共産党は一昨日(12日)、党中央委員会第5回全体会議(5中全会)を今月26日から29日までの日程で開催することを決めました。習近平指導部が初めて立案する5か年計画の詰めの議論が戦わされるものと見られ、そのなかで比較的大規模な財政出動を含む景気対策の内容が明らかにされるのではないかと、大いに期待する向きが市場には少なからずあります。
振り返れば、2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが経営破たんに陥ったとのニュースが世界を震撼させ、偶然にも同じ日に貸出基準金利と預金準備率の引き下げを発表した中国の株価も翌日から急落しました。そこで中国政府は9月18日の夜、中国語で「三大利好」と称される株式市場対策を緊急発表しました。さすがに意思決定は迅速です。
次いで、同年10月8日には2度目の利下げと預金準備率の引き下げを公表。さらに中国国務院は同日、預金利子課税の一時免税措置も公表し、利下げと預金利子免税のセット措置という包括的な対応に踏み切りました。それでも、効果は限定的なものに留まり、次第に市場は同月(10月)の開催が予定されていた当時の「3中全会」において一段と大掛かりな景気対策が打ち出されるのではないかと大いに期待するようになります。
残念ながら、内外から高い関心が寄せられた当時の「3中全会」は期待外れに終わってしまったわけですが、その翌月(11月)の9日夜、ついに中国政府はあの『4兆元規模の内需拡大策』を実施することを発表します。これを受けて、週明け10日の日経平均株価は前週末終値比で約500円の値上がりとなり、後に4兆元対策の効果は世界全体に波及することとなりました。
お分かりのとおり、今回の「5中全会」の日程は米国のFOMCを跨ぎ、日銀金融政策決定会合の前日までとなっています。その前週にはECB理事会も予定されていますし、日本では郵政3社の上場も控えています。何らかのポジティブ・サプライズに期待してしまうのは筆者だけでしょうか。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役