私のデスクに、海外に住む或る友人からマトリョーシカ人形が届けられました。ロシアの民芸品で、太ったこけしのような形、上下に分かれる木製のもので、開ければ小さいものが中に、更に開けると更に小さいものが中に、と幾重にも小さい人形が入っているものです。1900年のパリ万国博覧会で銅メダルを取ったのをきっかけに、広くロシアで民芸品と作られるようになったそうです。

なぜこのマトリョーシカが届けられたか?今から30年以上前に、広告の父と呼ばれたデイヴィッド・オグルヴィがテレビ・インタビューの中で、おもむろにマトリョーシカ人形を取り出し、一つ一つ開けていきながら、「この間、取締役会でこのマトリョーシカをみんなの席に置いておいたんだ。そしてこうやって開けていくだろう。こうやってひとつ、またひとつ。そして最後の小さな人形を開けると僕が書いた小さなメモ書きが入っている。そこにはこう書いてあるんだ。『もし自分より小さな人間ばかりを雇ったら、会社は小人の会社になる。もし自分より大きな人間ばかりを雇えば、会社は巨人の会社になる。』ってね。」と云うビデオがあるのをその友人に教えてもらったのです。

「これはまさに自分がいつも考えていたことだ!」と云うことで、教えてくれてありがとうと共に、ついでにマトリョーシカ一体のゲットを頼んでおいたのです。着いた人形は絵の描かれていないもので、自分で自由に書き込むタイプでした。無垢の妙な物体が、デスクの端に立っています。サンキュー!
オグルヴィのコンセプトは、私が最初に就職した会社のニューヨーク本店の副会長も良く云っていました。決して忘れないためにも、あまり絵は上手ではないのですが、折角ですから白のまま放っておかないでチョコチョコと何かしら書くか、或いは新デザインでも考えてみようと思います。