DLは私の最初のボスです。正確には大学を卒業して入社した際、東京のTKさんが私にとって最初のオフィス・マネージャーであり、7月にニューヨークに行き研修を受け、12月に現地で配属されたデスクの担当役員がDLであり、最初のボスというとTKさんかDLなのですが、実際の金融・投資銀行の仕事ボスと云うと、やはりこのDLだと認識しています。社会人としての最初の上司がTKさん、プロフェッショナルな仕事の上での最初のボスがDL、と云う整理でしょうか。

このDLから、今日突然電話が掛かってきました。用件は、或る意味でちょっと迷惑を掛けたので、その説明をわざわざ直接私にするために掛けてきたのです。律儀な人です。DLはアイリッシュです。以前に何度か書いたことがありますが、私はアイリッシュの人とは相性がいいのです。私の知っているアイリッシュは、みな信義を大切にする人ばかりです。
DLはかつて私が会社を辞める時も、或る意味で反対側の人であるにも拘わらず、そして当時はあまりにも偉い人とペーペーの新人であったにも拘わらず、本当に親身に話してくれました。次の会社を辞めて、このマネックスを立ち上げる時も、彼はオフィスでは話し足らずに、駐車場の彼の車に乗り込んで、ずっと相談に乗ってくれました。

いつだったか「何でそこまでしてくれるのですか?」と聞いたら、「僕たちはもう友達だから。そして友達には"とても友達"とか"少し友達"とかない。友達は"友達"と云う一種類しかないんだ。」と説明してくれました。泣けるアイリッシュです。仕事で出会った人ですが、人と付き合う基本的な、大切な哲学を教えてくれた人です。
DLの仕事は今、必ずしも順調ではないのですが、そんなことはおくびにも出さずに、きちんと仕事人として、人として、すべきことをするために電話を掛けてきました。そしてネアカのDLのこと、懲りずにこれからも同じ仕事で再出発するとのことです。

そう云えばライアーズ・ポーカーとかクラップスとか、そう云った賭け事を教えてくれたのもDLです。古き佳き時代。夕方になると会社(NY)のトレーディング・フロアのデスクの上で、何の気兼ねもなしにサイコロを転がして音を響かせていたDLの大きな笑顔を鮮明に思い出します。

突然のDLからの電話は、私の心をほわーっと明るくしました。桃の花のような人ですね。DLとの付き合いは、これからも大切にしていきたいと思います。