水のある風景が好きです。これは動物として、本能に根差したものでもあるでしょう。海は大好きですが、「水のある風景」と云う文脈では、水は海ではなくて川や湖などです。お堀でもOKです。

隅田川に近い店に食べに行く時は、必ず川縁に寄って、暫し水面を眺めます。歩いていて川を渡る時も、もちろん岸から或いは橋から、水面を見つめます。山の中で湖や川に遭遇すると、とても心が落ち着きます。都心の外堀の水面も、恐らく綺麗とは云い難いのでしょうが、それでも和む感じがして、暫し眺めてしまったりします。ただの大きな水溜まりとも云える内堀ですら心を惹かれます。

オフィスの私の席から夕暮れ時に西を見ると、桜田門近辺の内堀の水面が、夕日を反射させて緑の中にきらきらしています。席から見えるベスト三景は、空気の透き通った日に見える富士山と、足下に広がるNゲージのような線路・列車・東京駅と、そしてこの夕日を照らす内堀です。

丸山薫の詠った「水の精神」が、穏やかな水面の下に隠されている。自分の心の中にある、あらゆる類の思いが、水面を見ると穏やかに収まる気がするのでしょうか。