土砂降りのようなマーケットです。あらゆることが裏目にばかり出て、或いは悪い方にばかり解釈されて、マーケットは下がり続け、世界のエクイティ価値が下がり続けています。どんなことにも表と裏、良い側面と悪い側面、と云うように両サイドがあるものですが、今はネガティブな方ばかりに誰もが注目してしまう訳です。

現代金融工学の生みの親、生きていればノーベル賞を取った筈の彼のフィッシャー・ブラック博士が、「突進してくる象の大群を止めることは出来ない」と表現したように、マーケット、いや人の心理は、一旦或る方向にモメンタムがついてしまうと、中々反転することが出来ません。そう云う時は、先ずは暴走する大群が過ぎ去るのを待たねばなりません。大群がひとたび過ぎ去ると、リスクとリターンの関係は崩れていますから、即ち、リスクは過大評価され、リターンは過小評価されていますから、そこから反転が始まります。

しかし一般に、大群が大きければ大きいほど、反転の幅と速度は、そこに至るまでの幅と速度には達しないものです。床に落としたボールが同じスピードで元の高さまでは跳ね返ってこないのと似ています。ではマーケットの反転が部分的にしかならない理由は何でしょうか?

ひとつはエネルギーのロス。株価が下がる中では、マーケット全体として、エネルギー値が下がります。マーケットのエネルギーである全体の「お金」の量が減ってしまう訳です。これはどうしようもありません。もうひとつは自信の喪失でしょう。自信を失い、リスクを取れなくなってしまうのです。象の大群が攻めてくる時に、過信して立ち向かうのは愚行です。しかし大群が過ぎ去るのを見守るうちに、自信を失ってしまうと、大群通過後に適切にリスク・リターン評価をして、リスクを取ることが出来なくなります。エネルギー(お金)を失うのは、こう云う時には或る意味どうしようもないと思います。適切な自信を失わないようにすることが、肝要なのではないでしょうか。