6月16日の日経平均株価は、取引時間中に史上初めて7万円台に乗せました。前日の6月15日には、トランプ米大統領によるイランとの戦闘終結合意の発表を受けて、日経平均株価は前日比3,297円高の69,317円と史上最高値を更新しました。

6月16日には、トランプ米大統領がイランとの戦闘終結に向けた覚書が両国間で署名されたことを明らかにし、戦闘終結への道筋が具体化したことで、地政学リスクへの警戒感が一段と後退しました。加えて、日銀金融政策決定会合では市場予想通り0.25%の利上げが決定され、大きなサプライズなくイベントを通過したことも、日経平均株価が7万円台に到達した背景にあります。

日経平均は3倍のスピードで7万円台へ

終値ベースで日経平均株価が6万円台に乗せてから、ザラバで7万円台を突破するまでに要した日数は、わずか50日でした。5万円台から6万円台に乗せるまでは終値ベースで182日を要しており、当時も上昇ピッチの速さが注目されました。しかし今回は、その3分の1を下回る日数で次の大台に到達したことになります。言い換えれば、前回の大台突破時と比べて3倍を超えるスピードで7万円台に到達した計算です。

市場は大台到達による達成感に対して、以前ほど敏感ではなくなっています。前回、日経平均株価が終値ベースで6万円台に乗せた4月27日以降について、株価水準を1,000円刻みで確認すると、6万円台前半(6万1000円以下)で推移した日数は3日間にとどまり、6万円割れとなった日数も4日しかありませんでした。

一方、5万円台到達後をみると、5万円台前半(5万1000円以下)で推移した日数は累計38日に達しています。つまり、5万円台到達(2025年10月27日)後は大台乗せによる達成感から株価が足踏みする局面がみられたのに対し、6万円台到達後はそうした一服感がほとんど見られず、上昇トレンドが継続したことが特徴です。

であるならば、今回の7万円台到達も、大台達成による祝賀ムードこそあるものの、株高トレンドの通過点に過ぎない可能性があります。ただし、そのためには企業業績の拡大が続き、現在の株価水準がファンダメンタルズから大きく乖離していないことが前提となります。

PBROEモデルで検証する日経平均の理論株価

改めて、日経平均株価のバリュエーションを確認します。株価水準を検証する上で、有効とみられるPBROEモデルを用いて分析します。PBROEモデルについては、本連載の1月20日付の記事「2026年末の日経平均株価は5万9000円台へ、衆院解散アノマリーとPBROEモデルから検証」で詳細を紹介しています。

簡単に言えば、企業の収益性を示すROE(自己資本利益率)が高いほど、将来の利益成長期待も高まり、その結果としてPBR(株価純資産倍率)も高く評価されるという考え方に基づくモデルです。具体的には、日経平均株価のROEに対応する理論的なPBRを算出し、そのPBRから理論的な日経平均株価を求めます。

なお、理論株価は企業業績の予想値をもとに計算されるため、業績見通しの変化に応じて変動します。そのため、過去に算出した理論株価をそのまま用いるのではなく、その時点の最新データに基づいて改めて推計する必要があります。

最新の日経平均株価の理論値とは

【1】今期予想ROEを計算する

ROEはPBRを予想PERで割ることで求められます。これは、PBRが「株価÷1株当たり純資産」、PERが「株価÷1株当たり純利益」であるため、PBR÷PERは「1株当たり純利益÷1株当たり純資産」となり、ROEに一致するためです。

日経新聞公表データによると、6月15日時点の日経平均株価のPBRは1.95倍、予想PERは18.33倍でした。このため、今期予想ROEは10.64%(=1.95÷18.33)と計算されます。

【2】理論PBRを算出

次に、このROEを過去のPBRとROEの関係から推計したPBROEモデルに当てはめます。その結果、理論PBRは2.00倍(=10.64×0.38-2.04:PBROEモデル式)となりました。

【3】1株当たり純資産と理論PBRをもとに日経平均株価の理論値を算出

さらに、日経平均株価の1株当たり純資産は35,547円(=69,317.50円÷1.95倍)と計算されます。この1株当たり純資産に理論PBRの2.00倍を乗じると、日経平均株価の理論値は7万1186円となります。

日経平均株価7万円は通過点か、それとも天井か

過度な警戒が必要な局面ではない見込み

なお、理論日経平均株価7万1186円を1株当たり純利益3,781.64円(=6月15日の日経平均株価69,317.50円÷予想PER18.33倍)で割ると、理論PERは18.82倍となります。

日経平均株価のPERは、デフレ時代には16倍前後が一つの目安とされていました。しかし、デフレからの脱却が進み、企業収益の成長が期待される現在の環境を踏まえれば、18倍台のPERは必ずしも割高な水準とは言えないでしょう。

PBROEモデルから推計される理論日経平均株価は7万1186円であり、6月15日時点の69,317円と比較してもなお上値余地が残されています。日経平均株価は短期間で急上昇したものの、現時点ではファンダメンタルズから大きく乖離している状況ではなく、過度な警戒が必要な局面ではないと考えています。

日経平均株価の理論値(2026年の年末時点)は、7万5000円を上回る見通し

企業業績の拡大トレンドが維持されれば、株価も上昇基調に

さらに、来期も企業業績の増益トレンドが継続すると仮定した場合、PBROEモデルから試算される日経平均株価の理論値(2026年の年末時点)は、7万5000円を上回る結果となります。日経平均株価の7万円台到達は大きな節目ではあるものの、企業業績の拡大が続く限り、株価上昇トレンドはなお継続するとみています。

もっとも、手放しで楽観視できる状況ではありません。米国とイランとの戦闘終結に向けた動きが進展しているとはいえ、合意内容の履行や地域情勢の安定化にはなお不透明な部分が残されています。また、仮にホルムズ海峡を巡る緊張が再燃しなかったとしても、原油の増産や供給網の正常化には一定の時間を要するため、エネルギー価格が直ちに戦闘前の水準まで低下するとは考えにくい状況です。

さらに、2026年11月の米国中間選挙が近づくにつれて、トランプ政権が保護主義的な政策姿勢を強め、再び関税問題が市場のテーマとして浮上する可能性もあります。

しかし、米国とイランとの戦闘終結に向けた動きが着実に進展すれば、市場の関心は再び企業業績へと向かうことになるでしょう。3月期決算企業では、2026年10月以降の第2四半期決算発表シーズンに向けて業績上方修正への期待も高まります。企業業績の拡大トレンドが維持される限り、株価もそれに歩調を合わせる形で上昇基調を続ける可能性が高いと考えています。