第1四半期決算では「予想据え置き」の企業が多数
3月期決算企業の第1四半期(1Q)決算発表が本格化を迎えています。今回は、四半期決算における「売上高・営業利益成長加速銘柄」の投資戦略を取り上げます。
第1四半期決算の時点では、年度が始まってまだ4分の1しか経過していません。このため、このタイミングで会社が通期の売上高や利益予想(会社計画)を修正するケースは多くありません。実際、利益予想を上方修正する企業は、経営陣が業績に自信を持っている可能性が高く注目されます。この点については、7月1日付の本連載「第1四半期決算で会社計画を上方修正した企業の実力、業績の着地と株価パフォーマンスの両面から検証」で紹介しました。
もっとも、この戦略は有効である一方、過去3年間を見ると、上方修正・下方修正を合わせても、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち金融業を除く3月期決算企業で、第1四半期決算時に会社計画を修正した企業は全体の約1割にとどまります。つまり、多くの企業は第1四半期決算では会社計画を据え置いており、会社から公表される情報では業績予想だけでは業績の変化を十分に把握できません。
決算発表で見るべきポイントとは?着目すべきは「第1四半期の実績」
そこで注目したいのが、第1四半期決算で公表される実績そのものです。会社側が通期計画を据え置いていても、四半期の売上高や営業利益が市場の期待を上回るペースで伸びていれば、足元の業績モメンタムが改善している可能性があります。
今回は、四半期売上高と営業利益の伸び率が高いだけでなく、過去3年間と比較して成長が加速している企業に注目し、そのような「売上高・営業利益成長加速銘柄」が、その後どのような株価パフォーマンスを示してきたのかを検証します。
成長が加速した企業をどう見つけるか?「成長加速銘柄」を見分ける4つの条件
実際に戦略の詳細を紹介します。図表1がそのイメージです。3月期決算企業を例に、2026年第1四半期決算発表時点で行う「売上高・営業利益成長加速銘柄」の選別方法を紹介します。第1四半期決算は企業によって7月中旬から8月中旬にかけて発表されます。
まず①と②では、企業の足元の業績がしっかりと成長しているかを確認します。続いて③と④では、その成長が過去と比べても加速しているかを確認します。それぞれ順に見ていきましょう。
条件①・② 足元の「着実な成長」を確認する
①では、2026年度第1四半期の売上高が前年同期比で5%以上増加しているかを確認します。第1四半期決算は企業によって7月中旬から8月中旬にかけて発表されますが、この時点で売上高が前年同期を5%以上上回っていれば、足元の需要が堅調であり、本業が順調に拡大している企業と考えられます。なお、四半期業績は季節性の影響を受けやすいため、前四半期ではなく前年同期との比較によって成長を評価しています。
②では、2026年度第1四半期の営業利益が前年同期比で10%以上増加しているかを確認します。営業利益は企業の本業による稼ぐ力を示す指標であり、売上高だけでなく利益も高い伸びを示している企業は、収益性を維持しながら成長している可能性が高いと考えられます。
条件③・④ 過去3年と比較し「成長の加速」を確認する
③では、売上高の成長が「加速」しているかを確認します。具体的には、2026年度第1四半期の売上高前年同期比が、前年までの過去3年間(2023年度~2025年度)の第1四半期売上高前年同期比の中央値を上回っているかを確認します。
単純に前年との比較だけでも成長率が加速しているかを判断できますが、前年は大型案件や一時的な要因などによって成長率が大きく変動している場合があります。そのため、本稿では前年だけではなく過去3年間と比較することで、一時的な特殊要因の影響を受けにくい指標としました。
また、比較の基準として平均値ではなく中央値を採用しています。平均値は1年だけ極端に高い、あるいは低い成長率があると大きく影響を受けます。一方、中央値はそのような外れ値の影響を受けにくく、企業本来の成長ペースをより安定的に把握できるためです。過去3年間の実績を基準とすることで、一時的な変動ではなく、売上高の成長モメンタムが高まっている企業を抽出することを目的としています。
④では、営業利益についても同様の考え方を用います。2026年度第1四半期の営業利益前年同期比が、前年までの過去3年間(2023年度~2025年度)の第1四半期営業利益前年同期比の中央値を上回っているかを確認します。営業利益の伸び率が過去の水準を上回っている企業は、本業の収益力が従来以上のペースで改善している可能性があり、利益成長の加速が期待されます。
戦略の核心は「成長率そのものの高まり」
つまり、本戦略では、①と②によって足元の売上高と営業利益が十分に成長している企業を抽出し、さらに③と④によって、その成長率が過去3年間と比較しても加速している企業に絞り込みます。単に増収・増益企業を選ぶのではなく、「成長率そのものが高まっている企業」に着目している点が、この戦略の特徴です。
4つの条件を満たす銘柄の投資パフォーマンスを検証
投資パフォーマンス検証で全四半期を対象とする理由
実際に、これら4つの条件を満たす銘柄を抽出し、その投資パフォーマンスを検証しました。
図表1では、足元では第1四半期決算発表が本格化していることから、分かりやすさを重視して第1四半期決算を例に選別方法を説明しました。しかし、実際の検証では第1四半期決算だけではなく、第2四半期、第3四半期、本決算も含め、各月末時点で直近に公表されている四半期決算の情報を用いて分析を行っています。
第1四半期だけを対象にすると検証期間中の観測回数が限られてしまうためです。また、第2四半期や第3四半期、本決算でも、直近決算で売上高や営業利益の成長が加速している企業は、その後の株価パフォーマンスにも反映される可能性があると考えられることから、四半期決算全体を対象として効果を検証しました。
分析対象となる母集団は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄の3月期決算企業です。ただし、売上高や営業利益の伸び率を業種間で比較することが適切ではない金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外しました。
検証方法としては、毎月末時点で入手可能な情報のみを用いて4つの条件を満たす銘柄を抽出し、それらの銘柄に均等投資を行った場合の翌月の配当込み収益率を算出しました。その月次リターンを累積することで、売上高・営業利益成長加速銘柄の投資パフォーマンスを検証しています。
検証結果:市場平均を上回る「超過リターン」を確認
結果を示したのが図表2の青線グラフです。青線は累積リターンを表しており、グラフが長期的に右肩上がりで推移していることから、時間の経過とともに収益が積み上がってきたことが分かります。
注2: 母集団はTOPIX構成銘柄の3月期決算銘柄を対象とした。ただし金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は除外した
注3: 毎月末時点で入手可能な情報のみを用いた。直近四半期決算において、四半期売上高前年同期比が5%以上、四半期営業利益前年同期比が10%以上であり、かつ両指標がそれぞれ過去3年間の前年同期比中央値を上回る銘柄を「売上・営業利益成長加速銘柄」と定義した
注4: 各月末時点で注3の条件を満たす銘柄群を対象とした。絶対リターンは各銘柄の配当込み収益率(月次)の単純平均を累積したものとした。超過リターンは、母集団全銘柄の平均リターンを控除した月次超過リターンを累積したものである
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
さらに、図表2の赤線グラフでは、選定銘柄群のリターンから、母集団全体(金融業を除くTOPIX構成の3月期決算銘柄)の平均リターンを差し引いた「超過リターン」の累積を示しています。こちらも中長期的に右肩上がりで推移しており、本戦略が市場全体を継続的に上回る成果を上げてきたことが確認できます。
このように、売上高や営業利益が前年同期比で十分に伸びていることは、企業の足元の業績が堅調であることを示しています。一方、それらの伸び率が過去3年間の水準を上回っていることは、企業の業績モメンタムがさらに強まっている可能性を示しています。つまり、本戦略は単に増収・増益企業を選ぶのではなく、「業績が加速している企業」に着目している点が特徴です。
四半期決算で確認できる足元の業績モメンタムは、銘柄選別における有力な判断材料と見られます。
実践編:ツールを使って該当銘柄の「売上高・営業利益成長加速銘柄」を確認する方法
実際に投資候補となる銘柄を探す際には、本稿で用いた4つの条件を確認します。例えば、投資候補として考えていた銘柄が、「売上高・営業利益成長加速銘柄」に該当するかどうかを確認することができます。
現在は第1四半期決算発表シーズンであるため、第1四半期決算において、①売上高前年同期比が5%以上、②営業利益前年同期比が10%以上、③売上高前年同期比が前年までの過去3年間の第1四半期における前年同期比の中央値を上回る、④営業利益前年同期比が前年までの過去3年間の第1四半期における前年同期比の中央値を上回る、という4つの条件を満たしているかを確認します。
オービック(4684)の決算データで判定してみる
マネックス証券ウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、図表3の赤丸で示した検索欄に銘柄コードまたは銘柄名を入力することで、各銘柄の決算情報を確認できます。
ここでは、7月22日に第1四半期決算を発表したオービック(4684)を例に、4つの条件をどのように確認するのかを見ていきましょう。オービックは、企業向け統合業務ソフト(ERP)などを手掛ける情報サービス企業であり、高い収益性と安定した業績成長で知られています。
「企業分析」タブを選択すると、「四半期業績推移(3ヶ月)」に図表4の画面が表示されます。ここでは、4つの条件を順に確認していきましょう。
4つの条件を満たしているか?
まず、「①売上高前年同期比が5%以上」についてです。図表4の青丸が示す直近の2026年6月の売上高前年同期比は13.2%となっており、5%以上であるため条件を満たしています。
次に、「②営業利益前年同期比が10%以上」についてです。図表4の青四角が示す2026年6月の営業利益前年同期比は15.7%となっており、10%以上であるため条件を満たしています。
続いて、「③売上高前年同期比が前年までの過去3年間の第1四半期における前年同期比中央値を上回る」かを確認します。過去3年間の第1四半期における売上高前年同期比は、図表4の赤丸、紫丸、茶丸で示されています。この3つの中央値は2023年6月の12.4%(茶丸)です。これに対して、2026年6月の13.2%(青丸)は12.4%を上回っているため、この条件も満たしています。
最後に、「④営業利益前年同期比が前年までの過去3年間の第1四半期における前年同期比中央値を上回る」かを確認します。過去3年間の第1四半期における営業利益前年同期比は、図表4の赤四角、紫四角、茶四角で示されています。この3つの中央値は15.2%(赤四角)です。2026年6月の営業利益前年同期比も15.7%(青四角)となっており、中央値以上であるため、この条件も満たしています。
このように、「銘柄スカウター」を利用することで、第1四半期決算の内容から、売上高・営業利益成長加速銘柄の4つの条件を満たしているかを確認することができます。投資候補の銘柄を分析する際の参考にしてみてください。
