皆さんは「AI」と聞くと、ChatGPT(チャットジーピーティー)やGemini(ジェミニ)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ChatGPTのように文章や画像を作り出すAIは、「生成AI」と呼ばれています。一方、AIは文章や画像を作るだけではありません。大量のデータの中から似たパターンを見つけたり、その結果をもとに将来を予測したりすることも得意です。今回は、AI分野で広く利用されているDTW(ディーティーダブリュー)という技術を使って、日経平均株価の将来の上昇確率を予想する「DTWモデル」を紹介します。

AIで株価を予想するDTWモデルとは?

「DTW(Dynamic Time Warping)」とは「動的時間伸縮法」

DTWとは「Dynamic Time Warping」の頭文字をとったもので、日本語では「動的時間伸縮法」と呼ばれます。株価分析では、足元の日経平均株価のチャートが、過去のどの局面とよく似た値動きをしているかを調べるために利用できます。

分析では、まず足元の日経平均株価について、直近75立会日、すなわちおよそ3ヶ月間の値動きを取り出します。次に、東京証券取引所が戦後に取引を再開した1949年5月以降のデータを使い、過去の75立会日間の値動きと順番に比較していきます。比較対象となる期間を1日ずつずらしながら、足元の値動きとどの程度似ているかを計算します。

2つの上昇確率を算出

こうして、およそ2万通りに及ぶ過去のチャートを調べ、その中から足元の日経平均株価とよく似た20の局面を抽出します。そして、それぞれの類似局面の後に日経平均株価がどのように動いたのかをもとに、足元の日経平均株価の上昇確率を予想します。最終的には、次の2つの上昇確率を算出するとともに、過去の類似局面や予想される値動きをグラフで表示します。

・5立会日後まで日経平均株価が上昇する確率
・10立会日後まで日経平均株価が上昇する確率

DTWモデルを使った日経平均株価の予想方法については、一部改良を加えているものの、基本的な考え方を2025年12月29日付の吉野貴晶の投資研究レポート「時間を歪めて比べる株価:DTW距離で見る日経平均の先行き」で紹介しています。分析方法の詳細については、同レポートをご参照ください。

DTWモデルが予想した日経平均株価の行方

実際に7月13日時点でDTWモデルにより予想した日経平均株価の上昇確率は、次のようになりました。

・5立会日後まで日経平均株価が上昇する確率:40.2%
・10立会日後まで日経平均株価が上昇する確率:40.1%

5立会日後、10立会日後ともに上昇確率は5割を下回っており、短期的には株価が上昇しやすい局面とは言いにくい結果となりました。

一方、図表1の赤線で示したDTWモデルによる将来予測を見ると、今後10立会日の日経平均株価は、おおむね横ばい圏で推移する姿が示されています。

つまり、短期的には上値の重い展開が予想されるものの、大きく下落するというよりは、一定の値幅の中で方向感に乏しい展開が想定されます。

【図表1】日経平均株価の短期予測(DTWモデル)
注:足元の日経平均株価(実績)の対象期間は2026年7月13日までの75立会日、その後は10日立会日数で合計85立会日数
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

過去の類似相場から見えてくる今後のポイント

足元の日経平均株価と似ている、過去4つの歴史的局面

図表2は、抽出した20の類似局面のうち、足元の日経平均株価と特に似ている上位4局面を示したものです。第1位は2009年2月から6月にかけての局面で、リーマンショック後の急反発局面に当たります。

第2位と第4位は1950年から1951年にかけての局面で、朝鮮戦争特需を背景に日本経済が回復へ向かった時期です。そして、第3位は2012年末から2013年春にかけてのアベノミクス相場の初期局面でした。

【図表2】足元の日経平均株価と過去の類似局面、その後の値動き
注1:足元の日経平均株価(実績)の対象期間は2026年7月13日までの75立会日
注2:データサイクルは過去の類似局面の計測では日次の75立会日数。その後は10立会日数で合計85立会日数
注3:起点=1となるように指数化している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

ここから「さらに伸びる相場」と「立ち止まる相場」、明暗を分けるのは?

図表2の紫線で示した過去の株価推移を見ると、いずれも足元の日経平均株価とよく似た値動きをたどっています。また、これら4つの局面はいずれも、政策転換や戦争特需など、市場の期待を大きく変えるテーマを背景に株価が上昇基調にあったという共通点があります。足元の日経平均株価も、AI・半導体関連への期待や企業業績の改善を背景に上昇してきた点で、相場を押し上げる材料が存在しているという共通性がみられます。

もっとも、その後の展開は一様ではありません。類似度第1位、第2位、第4位の局面では、その後は上昇が一服する展開となりました。一方、類似度第3位のアベノミクス相場では、その後も株価の上昇が続きました。この背景には、2013年4月4日に日銀が「量的・質的金融緩和」を決定し、市場で「異次元緩和」と呼ばれた大規模な金融緩和が実施されたことが挙げられます。

このように過去の類似局面を振り返ると、足元の日経平均株価は上昇トレンドをさらに加速させる新たな材料を待つ局面にあるように見受けられます。例えば、中東情勢を巡る不透明感の後退や、AI・半導体関連で市場の期待をさらに高めるような材料が現れれば、相場の方向感が変わる可能性も考えられます。