rsETHを巡るセキュリティ事故が発生、関連市場は緊急凍結措置へ

日本時間4月19日未明、Kelp DAOのrsETHを巡る大規模なセキュリティ事故が発生しました。被害規模は約2.92億ドルに達し、2026年でも最大級のDeFi事故として市場に衝撃を与えています。なお、厳密にはAave自体のスマートコントラクトが破られたわけではなく、Kelp DAOのrsETH関連の問題がAaveなど主要レンディング市場へ波及した構図です。Aave側もこの点を明確にしており、Aave本体は安全かつ稼働中である一方、rsETH関連市場については緊急凍結措置を講じました。

今回の事故で市場が警戒しているのは、単なる単発のハッキング被害にとどまらず、リステーキング資産を担保としたDeFi全体の信用連鎖に傷が入った可能性です。近年は、ETHを担保にLRT(Liquid Restaking Token)や各種ETHペッグ資産を組み合わせ、さらにそれを運用に回すことで高利回りを狙うスキームが広く普及してきました。

個人投資家でも比較的参加しやすく、相場環境や取り方次第では年率10~15%前後の利回りが期待される局面もありましたが、その裏側では担保の多重化、流動性の錯覚、ブリッジ依存といったリスクが積み上がっていたとも言えます。今回の件は、その弱点を一気に露呈させた格好です。

今後の注目点は、どこまで損失の所在が広がるかです。リステーキング資産は見た目上、ETHに近い値動きをする一方、通常のETHよりも構造が複雑で、ブリッジ、オラクル、担保評価、償還導線など複数の前提条件で成り立っています。そのため、ひとたび何かが崩れると、ペッグ乖離や換金制限、担保価値の急低下が同時に起こりやすくなります。

関連するETH系の運用プロダクトやファンド、さらにはリステーキング関連銘柄全般に売り圧力が波及しても不思議ではありません。もちろん、現時点で一律に「全面崩壊」と断定するのは早計ですが、DeFiの信用プレミアムが一段剥落しやすい局面に入ったことは意識しておきたいところです。

加えて、足元ではイラン情勢を巡る地政学リスクも残っており、暗号資産市場にとっては決して安心できるマクロ環境ではありません。もともと4月はホルムズ海峡開放期待や協議進展観測を背景に、リスクオン方向へ戻す場面もありましたが、今回の事故で再び市場の神経質さが高まった印象です。マクロの不透明感に加えて、DeFi由来の信用収縮が重なるなら、ETHを中心に戻り売りが優勢となる時間帯が増えてもおかしくないでしょう。

BTC(ビットコイン)はSMA90方向を意識、戻りを待ってショートトレード再開のイメージ

BTC/JPY日足チャート分析です(図表1)。4月はホルムズ海峡開放期待やイラン協議進展期待から、リスクオン方向に反応する場面が見られました。しかし、その流れも週末からやや逆回転を始めています。地政学リスクが完全に払拭されていない中で、今回のDeFi事故が重なったことで、暗号資産市場全体のセンチメントは再び悪化しやすくなりました。

【図表1】BTC/JPY 日足チャート
出所:MONEX TRADER CRYPTO(iPhoneアプリ)

テクニカル面では、200日移動平均線への回帰シナリオはいったん後退したとみています。ここからは再度、反落方向をメインシナリオとして意識したいところです。まずはSMA30(黄色)、そしてSMA90(水色)が位置する1,130万~1,150万円ゾーンへの下押しを念頭に置きつつ、戻りを待ってショートトレードを再開するイメージです。

4時間足チャート:1,200万円近辺を背に戻り売り戦略を再開

BTC/JPY4時間足チャート分析です(図表2)。直近ではSMA30(黄色)を割り込んできており、短期の上昇モメンタムはやや失速気味です。次の下値の目途としては、SMA90(水色)がサポート候補になってくるでしょう。

【図表2】BTC/JPY 4時間足チャート
出所:MONEX TRADER CRYPTO(iPhoneアプリ)

戻り売りの目安としては、SMA30を背にした1,190万~1,200万円ゾーンを売り場候補と考えています。ターゲットはまず1,150万円方向です。米国・イラン協議進展への期待で買われた分を、改めて吐き出すような動きになれば、今週の戻り高値がこの近辺で形成される可能性も十分あるでしょう。

rsETH問題の波及に警戒 ETH(イーサリアム)は戻り売り優位か

ETH/JPY4時間足チャート分析です(図表3)。ETHは今回の件で最も直接的にセンチメント悪化の影響を受けやすい銘柄です。AaveではrsETH / wrsETH市場の凍結に加え、一部WETH市場にも凍結措置が入りました。市場では不良債権化リスクや流動性悪化への懸念が広がっており、ETH関連のDeFiエコシステム全体に慎重な見方が強まりやすい局面です。

【図表3】ETH/JPY 4時間足チャート
出所:MONEX TRADER CRYPTO(iPhoneアプリ)

テクニカル的には、まずSMA90(水色)近辺の攻防に注目です。ここを明確に割り込むようなら、次はSMA200(橙)を視野に入れる展開もあり得るでしょう。戻り売りはSMA30(黄色)を背に、無理のない範囲で売り上がる形を想定しています。ターゲットは34万~35万円台を意識した、損小利大のトレード戦略です。

今後は、今回の件で影響を受けた関連プロトコルや運用主体から、損失額やエクスポージャーに関する情報開示が続く可能性があります。ただし、現時点では「今夜から関連企業の被害総額発表が続々出る」と断定できる段階ではありません。そのため、ここは断定よりも、追加開示が相場の戻りを抑える材料になりやすいと表現するのが適切でしょう。

Aaveガバナンスでも、今回の件はrsETHの担保構造やリステーキング由来のシステミックリスクを再認識させるものとして議論が進んでいます。ETHそのものの現物需給に加え、ヘッジ売りや先物ショートも重なれば、短期的には上値を抑え込まれやすい展開が続くのではないでしょうか。 

今週(4月20日週)のポイント

・今回の事故はAave本体のハッキングではなく、Kelp DAOのrsETH起点の問題がAaveへ波及した案件。 
・被害規模は約2.92億ドル、116,500 rsETHとされ、Aaveは日本時間4月19日3:52ごろからrsETH関連市場を凍結した。 
・市場の本質的な警戒点は、リステーキング資産を担保としたDeFi全体の信用不安が再燃していること。
・Aaveでは一部WETH市場にも凍結措置が入り、TVL急減や資金流出が報じられており、投資家心理は悪化しやすい。
・BTC/JPYは1,190万~1,200万円の戻り売り、下値は1130万~1150万円を意識。
・ETH/JPYは戻り売り優位で、SMA90割れなら34万~35万円台が次のターゲット候補。
・地政学リスクも残るため、今週はリスクオン継続よりも、戻り売りを丁寧に狙う局面か。