先週(3月16日週)の動き:FOMCを境に市場の利下げ期待後退、テクニカル要因の悪化でNY金の売り加速、国内金価格はついに週足反落

先週(3月16日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は続落した。イラク戦争は、トランプ米大統領の見立て通りには進行せず、双方の攻撃が続き長期化の様相を帯びている。市場では原油価格の高止まりに象徴されるインフレ再燃をはじめ、不透明感が増す中で警戒感が強まっている。日本が祝日となった3月20日のNY金は続落し、4,574.90ドルで取引を終了した。通常取引終値ベースでは年始1月9日以来、2ヶ月半ぶりの安値水準となる。

FOMCを境に市場の利下げ期待消滅

3月17~18日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、メンバー全員の金利・経済見通しが公表された。そこでは、2025年12月の会合と同様に、年内1回の利下げ見通しが示された。

しかし、終了後の記者会見でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言は、イラン戦争によるエネルギーコストの上昇を背景とするインフレへの警戒からタカ派的な内容となった。パウエル議長は「理事のなかで利下げ回数を減らす見通しへの動きが目立った」と発言。さらに「多くの理事はそれを基本シナリオとは見ていないものの、選択肢としては排除していない」として「次回のFOMCで利上げを実施する可能性についても議論した」と述べた。この記者会見をきっかけに、金市場のみならず市場横断的に年内利下げ観測が大きく後退し、消滅に向かっている。

3月19日には、イスラエルによるイラン国内の燃料基地への空爆に対する報復として、イランによる湾岸諸国への攻撃が激化した。これも、原油上昇、インフレ再燃、利下げ見通しの消滅という印象を強めた。FRBの政策見通しに敏感な2年債から長期債まで米国債には売りが広がり、米債利回りは急伸した。

テクニカル要因の悪化で売り加速

先週(3月16日週)のNY金の値動きは、週末にかけての2営業日に集約された。

FOMC後の3月19日のNY金は、ロンドンの早朝6時頃から売りが加速し、下げ足を速めた。NYの午前に向け水準を切り下げる中で、短期筋による売り攻勢がモメンタムを生み、売りが売りを呼ぶ展開に転じた。こうなると現物を含む安値拾いの買い(押し目買い)も様子見に徹することになる。結局、下げが始まった水準から約340ドル下の4,505.00ドルに達したところでやっと売りが一巡し、反転となった。NY時間の9時前後のことである。

戻りは鈍く、3月19日の通常取引は4,605.70ドルで終えた。前日比では290.50ドル安の大幅安となった。この水準は過去最大の下げ幅(609.7ドル安)を記録した1月30日以降の終値ベースでの最安値(2月2日の4,652.6ドル)を下回る。テクニカル上のサポートラインを割れたことになり、この動きが、短期筋ファンドのアルゴリズム取引による売りを加速させた。

トランプ発言もかく乱要因に

翌3月20日の市場もイラン情勢と市場の不安心理を映す原油価格の動向をにらみながらの展開となった。さらに、市場のかく乱要因となっているのはトランプ発言である。戦争を進めるのか収束させるのか、発言内容が日替わりで逆向きに入れ替わることが常態化している。結果的に発言内容の影響力が落ちつつある(信認低下)のは確かだろう。3月20日の時点でトランプ米大統領はイランに地上部隊を派遣しない意向を示す一方で、米国防総省が追加で3隻の軍艦と数千人規模の海兵隊を中東に派遣していると伝えられた。

市場全般にリスクオフ、NY金は逆モメンタム発生

原油価格の上昇が続く中、市場横断的なポジション整理(手じまい)の売りが続いた。3月20日のNY金は冒頭で触れたように通常取引を4,574.90ドルで終え、週足は前週末比486.80ドル(9.62%)安で3週続落となった。なお2011年9月19日週の前週末比9.64%安以来の下げ率となる(FactSet)。

ただし3月20日は、その後の時間外でさらに大きく売られ4,492.00ドルで週末の取引を終えた。前日にチャート上のサポートラインを割ったことで、下げトレンドを加速させ、それに乗じて利益を上げようとする目先筋のモメンタムトレードも加わり値動きが大きくなっている。

先週(3月16日週)のレンジは4,478.4~5,049.4ドルで値幅は571ドルと前週(234.6ドル)の2倍以上に拡大した。

国内金の下げは今週拡大

NY金の大幅続落を受けて、先週(3月16日週)の国内金価格は、週足で6週間ぶりの反落となった。3月20日が祝日となった関係で、大阪取引所の金先物価格(JPX金)は3月19日の日中取引終値で見ると、2万5514円の安値引けとなった。

週足は前週末比1655円(6.09%)安の反落となった。先週(3月16日週)の米ドル/円相場は3月19日にやや大きめの値動きがあったものの、総じて159円台に収れんしており、NY金の値動きをそのまま映すことになった。

ただし、前述のとおり3月19日、20日にNY金が大きく水準を切り下げたため、その動きは週初の3月23日に反映されることになる。実際に週明け3月23日の日本時間午前までにJPX金は一時2万3000円割れの水準まで売られている。これは1月13日以来の低水準となる。

今週(3月23日週)の動き:イラン戦争は米側の動きを注視、金ETF残高の減少、ゾーンで捉える下値メド4,250~4,350ドルライン

イラン戦争は米側の動きを注視

引き続きイラン戦争を巡る報道内容に原油価格が反応し、先行き不透明感を高める流れが続きそうだ。足元ではトランプ米大統領は「イランが48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ、発電所を標的に攻撃を始める」とSNN上で表明している。日本時間の3月24日午前8時台に期限を迎えるが、果たしてどうなるか。イラン側は「発電所への攻撃が実施されれば、ホルムズ海峡を完全に封鎖する」として反発していると伝えられている。

欧米マネーの流出を示すETF残の減少

こうした中、金市場の内部要因に目を向けると、NY金の値動きとは別に、前々週(3月9日週)から金ETF(上場投信)の残高減少が目立っている。最大銘柄「SPDR(スパイダー)・ゴールド・シェア」にはまとまった売りが週末にかけて見られた。これは、欧米の投資マネーが流出していることを示す。2025年9月以降に金市場に本格参入した北米を中心とする欧米マネーだが、FRBの方針転換を過度に警戒し、金市場から流出している。ETF売りはそれを表す。

1月の急騰に対する足元の逆モメンタム(急落)も主役は欧米勢で、過去に何度も見て来た光景ではある。前述したように、こうした場合、現物拾いの投資家は傍観するのみであり、行き過ぎるところまで行かないと下げは止まらない。買いのタイミングはゾーンで捉える必要がある。現時点では、いくつかのサポートラインを割り込んでいる。そのため、2025年末の4,250~4,350ドルラインが目途になるとみる。国内金価格はそれに米ドル/円の水準を掛ければ算出できる。