先週(1月12日週)の振り返り=159円半ばまで円安拡大、その後は為替介入警戒感で円高に
上値目処を続々と突破=「歴史的円安」161円も視界入り
先週(1月12日週)の米ドル/円は一時159円半ばまで一段高となりました(図表1参照)。前週末(1月9日)、米12月雇用統計発表や日本の早期解散・総選挙の可能性についての報道などをきっかけに、2025年10月の高市政権誕生後の高値である157.8円を突破したことなど、テクニカルに重要な上値をブレークしたことで勢い付いたことが大きかったのではないでしょうか。
米ドル/円のもう1つのテクニカルな上値ポイントは、2025年の高値である158.8円がありました。しかし、先週(1月12日週)はそれも早々に突破したことで、一気に2024年7月に記録したこの間の高値、「歴史的円安」のピークとなった161.9円も視界に入りました(図表2参照)。ただ、こうした中で、片山財務相を筆頭に円安阻止の介入を示唆するような発言が相次ぐと、米ドル/円も一時158円を割れるまで反落しました。
片山財務相を筆頭に、円安へのけん制が強まっていることから、米ドル売り・円買い介入への警戒感も一段と高まったようです。では、米ドル売り介入は行われるのか、そして介入が行われたら円安から円高へ転換するのでしょうか。
早期の為替介入はあるのか、そして為替介入で円安は止まるのか
日本の通貨当局はここ数年の円安に対して、2022年と2024年に米ドル売り・円買いの為替介入に出動し、円安を止めることに成功しました。当時、米ドル売り介入は、2022年、2024年とも米ドル/円が5年MA(移動平均線)を3割近く上回ったところで開始されました(図表3参照)。
米ドル/円の5年MAは、足下で138円程度なので、160円でもそれを16%程度上回っているに過ぎません。こんなふうに5年MAとの関係で見た場合、もしも160円近辺で米ドル売りの為替介入が実現したなら、それはこれまでよりかなり早いタイミングでの為替介入ということになるでしょう。
過去の円安阻止介入局面=(1997~1998年と2022、2024年)を振り返り、今後を予想する
なお、2022年より前の日本の通貨当局による米ドル売り介入局面は1997~1998年でした。この時の介入開始は1997年11月で、それは米ドル/円が5年MAを15%程度上回ったところでしたが、米ドル高・円安はその後も1年近くも続き、最大で5年MAを3割以上上回りました。
この局面では、1998年6月に一度だけ日米協調米ドル売り介入も実現しました。これは米ドル/円が5年MAを25%以上上回ったところでしたが、それでも米ドル高・円安は止まりませんでした。結果的に米ドル高・円安が終わったのは、1998年に大手ヘッジファンドの破綻などをきっかけに米国株が急落し、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに転換したことがきっかけでした。
これまでみてきた、1997~1998年、2022年、2024年の米ドル売り介入局面を参考にすると、米ドル高・円安は、米ドルの「自滅」でもなければ、米ドル/円が5年MAを3割程度上回るまで止まらない可能性がありそうです。そう考えると、仮に160円近辺で米ドル売り介入が行われても、それで円安が止まるかは不明瞭ではないでしょうか。
「ファンダメンタルズからかい離した投機的円安」との説明は正しいのか
片山財務相などが円安を懸念する理由に、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)からかい離した、行き過ぎた投機」という考え方があります。ファンダメンタルズの目安として日米金利差を参考にすると、ここまでの米ドル高・円安は異例なまでに日米金利差から、かい離していることは事実です(図表4参照)。
ただし、日米金利差から大きくかい離した米ドル高・円安は、2025年11月頃までは日本の長期金利上昇と基本的には連動していました(図表5参照)。長期金利上昇の主因は日本の財政リスクへの懸念とされ、それはまだ続いています。仮に日本の財政リスクをファンダメンタルズの目安とすると、「ファンダメンタルズからかい離した円安」という指摘は成立しなくなり、円安を止めるためには日本の財政リスクへの懸念の払しょくが必要ということになるでしょう。
早期の円安阻止介入に「失敗」する危険はないか
おもにヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、1月16日時点で売り越し(米ドル買い越し)が4万枚で、2022年、2024年の米ドル売り介入局面に比べると小幅にとどまっています(図表6参照)。
以上のように見ると、「ファンダメンタルズからかい離した、行き過ぎた投機による円安」という片山財務相などの円安阻止介入を正当化する理由自体に疑問符が付いてしまいます。そうであれば、早期の円安阻止介入の可能性は本来的には低く、仮に早期に介入を行った場合、円安阻止に「失敗」する危険があるのではないでしょうか。
今週(1月19日週)の注目点=日米ともに波乱含みの要因多い
日本の解散・総選挙、米国ではFRB独立性への懸念や関税の最高裁判決
今週は1月23日に日銀の金融政策発表が予定されています。今回、政策変更は予想されていませんが、日銀関連のイベントに対して為替相場は過敏に反応する傾向があるので、要注意でしょう。そして、早期の解散・総選挙実施の可能性が高まっていることから、政治要因も引き続き注目されることになりそうです。
米国ではFRBの独立性への懸念が再燃しています。次期FRB議長候補発表のタイミングも近付いていると見られることから、それに対して金融市場がどう反応するか注目されます。また、トランプ関税に対する最高裁判決が1月20日に出るとの見方もあり、こちらからも目が離せないでしょう。
今週(1月19日週)の米ドル/円は155~160円で予想
今回みてきたように、円安阻止介入などの出方次第では米ドル/円は乱高下する可能性があります。そして、FRBの独立性や最高裁判決といった米国要因も同様に乱高下をもたらす可能性のあるものです。以上のことから、円、米ドルともにやはり「暴落」リスクを秘めた状況が続いていることに変わりないでしょう。今週の米ドル/円は155~160円で予想します。
