高値圏での調整と、静かな主役交代
先週(1月12日週)の米国株市場は、一言で言えば「高値圏での調整と、静かな主役交代」が同時に進んだ1週間でした。年初から勢いよく上昇してきたS&P500とナスダック100は、週を通じてやや軟化しましたが、S&P500は1月12日に更新した史上最高値からわずか0.54%の水準で週を終えており、トレンドが崩れたと見るには時期尚早と言えます。
1週間では、S&P500は先週比で-0.38%の下げ、ナスダック100も-0.92%の下げで終わっています。
また、市場心理の揺れを映すVIX指数(恐怖指数)は週を通じて9.5%上昇し、再び15を上回り推移しました。指数は落ち着いている一方で、水面下では神経質な資金移動が起きている…そんな印象を残す週でした。
エネルギー、公益などが底堅いなかソフトウェアを中心としたグロース株には調整圧力
先週(1月12日週)の市場には複数の不確定要因が重なりました。トランプ米大統領によるクレジットカード金利の一時的な上限(10%)発言、ベネズエラ・イラン・グリーンランドを巡る地政学的思惑、さらにはFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長を巡る司法省の捜査報道など、ヘッドラインは決して穏やかなものではありませんでした。
実際、銀行株を中心に金融セクターは軟調となり、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の決算をきっかけに、「決算が追い風になる」という楽観論にも一時的にブレーキがかかりました。ただし、これらの材料はいずれも市場全体のリスクオフを決定づけるものにはならず、投資家の関心は次第に「個別企業の収益力」へと戻っていきました。
最も象徴的だったのは、セクター内ローテーションの鮮明化です。エネルギー、公益、不動産といったバリュー・ディフェンシブ系セクターが相対的に底堅さを見せる一方で、ソフトウェアを中心としたグロース株には調整圧力がかかりました。
とりわけソフトウェア株は、アンソロピックス(Anthropic)が発表したAIエージェント「Cowork」をきっかけに、「AIがソフトウェアの競争優位(モート)を侵食するのではないか」という懸念が再燃しました。セールスフォース[CRM]やアドビ[ADBE]といった代表銘柄は、年初来でも依然として戻り切れていません。
ただし、これはAI投資そのものへの否定ではなく、「どこが価値を取り、どこが価格競争に巻き込まれるのか」という選別のフェーズに入ったことを意味していると考えられます。
TSMCが最大560億ドルの設備投資計画を示し株価が上場
ポジティブ材料として市場心理を下支えしたのが、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]の発表でした。同社はAIを明確に「メガトレンド」と位置づけ、2026年に最大560億ドルという、市場予想を上回る設備投資計画を示しました。この発表は、AI関連の半導体・装置メーカーに再び現実味のある成長ストーリーを与え、TSMCの株価は先週5.8%上昇しました。
「設備投資が増える=利益が減る」という短期的視点ではなく、「それだけ需要が確実に存在する」というシグナルとして市場が評価した点は重要です。ケーエルエー・コーポレーション[KLAC]が+12%上げるなど、半導体装置関連銘柄が大きく上昇したのも、その文脈で理解できます。
先週(1月12日週)で強さを見せた中小型株
週を通じて最も強さを見せたのは、ラッセル2000に代表される小型株でした。週ベースで2%上昇し、S&P500を11営業日連続でアウトパフォームしました。これは2008年以来の長さであり、単なる短期反発ではなく、資金の流れが変わりつつあることを示唆しています。
中型株指数のS&P1000指数も+1.44%上げており、こちらも大型株からのシフトが散見されます。
中小型株は国内景気への感応度が高いことから、投資家が「景気後退」を警戒するフェーズから、「景気は想定より底堅い」と評価し始めている可能性があります。年初から続く「マグニフィセント7一強」への疑念と、残りの「S&P493」への再評価が同時に進んだ週だったと言えるでしょう。
今週(1月19日週)は企業決算が本格化、PCEデフレーターなどの重要経済指標の発表も
今週(1月19日週)は祝日で取引日数が少ないものの、企業決算は一気に本格化します。ネットフリックス[NFLX]、インテル[INTC]、GE エアロスペース(ゼネラル・エレクトリック)[GE]、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]などの注目銘柄に加え、PCEデフレーターやPMIといった重要経済指標の発表も予定されています。
市場が本当に注目しているのは、「足元の数字」よりも「2026年に向けた企業の言葉」です。コンセンサスではS&P500の2026年EPS成長に対して高い期待が織り込まれており、これを裏切らないガイダンスが示されるかどうかが、次のトレンドを決めることになります。
高値圏での調整は、決して悪い兆候ではありません。むしろ、過熱を冷まし、次の上昇に向けた土台を固める時間とも言えます。今は指数を追う局面ではなく、「どの企業が本当にEPSを伸ばせるのか」を見極める局面に入ったと考えられます。
