2026年1月8日(木)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年11月分速報

【1】結果:実質賃金はマイナス幅を拡大し11ヶ月連続でマイナス

2025年11月の名目賃金は、2024年同月比0.5%増と前回10月(改定値)から2.0%ポイントと大きく伸びが鈍化しました。同2.3%を見込んでいた市場予想を下回る内容で、主因はボーナスなどにあたる「特別に支払われた給与」が、2024年からの反動も相まって同17.0%減となったためです。

基本給にあたる所定内給与も同2.0%増と前月(改定値)から、0.4%ポイント伸びが鈍化したことも影響しました。サンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベースの所定内給与も同様で、前月から0.4%ポイント伸びが鈍化し、同1.8%増となりました。

【図表1】毎月勤労統計調査2025年11月速報値結果
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、所定内給与は事業規模5人以上、調査産業計

名目賃金の伸び鈍化を受けて11月の実質賃金は、前年同月比2.8%減とマイナス幅を拡大する結果となりました。前回10月の同0.8%減と持ち直した印象があったなか、物価ではなく賃金サイドにブレーキがかかる格好です。実質賃金の試算に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は同3.3%上昇と一時期よりは伸びの減速が見られるも、依然として高止まりしている様子がうかがえ、2025年の実質賃金は11ヶ月連続でのマイナスとなっています。

【図表2】実質賃金の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)はマイナス表示

【2】内容・注目点:実質賃金プラスまでの道のりはまだ遠い

ヘッドラインの実質賃金ではマイナス幅が拡大する結果となりましたが、所定内給与を実質化した系列を確認すると、伸びの鈍化は限定的であることがわかります(図表3、水色)。所定内給与は基本給にあたる指標で、月々の家計収支のベースとなるものです。その収入側が依然としてマイナスである点は、実質的な購買力の低下もあり、やはり家計の消費マインドの低下が危惧されるでしょう。

【図表3】所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、調査産業計、実質所定内給与は消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合指数)にて算出

2026年度の春闘も連合は賃上げ率5%以上を要求し、企業側も多くはその要求に沿った賃上げを実施する公算が高いでしょう。2026年に入り、連合や企業の方針などがアップデートされていますが、ここまでのところでは、やはり賃上げモメンタムは継続していくといった印象があり、この点は上述の所定内給与が2026年にかけても底堅く推移していく根拠となるでしょう。

一方で、春闘のデータが毎月勤労統計に表れるのは一般的に夏頃(夏頃までに出そろう)とされています。図表4は日銀も注目するサンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベース・一般労働者の所定内給与です。11月は前年同月比2.0%増となりました。緩やかながらも一時期と比較し伸び率の鈍化傾向は顕著であり(図表4、青・矢印)、また春闘の結果も向こう半年程度はこのハードデータに表れてこないことを想定すると、実質賃金のプラスにはまだ時間がかかると見込まれます。

【図表4】共通事業所ベース・一般労働者 所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成

【3】所感:賃金モメンタムが弱まっているとは判断しがたい

今回の賃金指標は実質賃金が2.8%減と大きく低下しましたが、ボーナスの反動減など一過性と判断できる部分も否定できず、賃上げの基調が弱まっているとの判断にはならないでしょう。その意味でも足元では、春闘を中心とした定性的な情報が重視される局面と考えられます。足元で得られる2026年度の賃上げ関連の情報からは、2026年度も底堅いものとなると判断され、日銀の言う見通しに沿った推移に近いものであると予想しています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太