「利益予想変化率」とは、企業アナリストが示す業績見通しがどの程度修正されたかを示す指標で、投資実務では「リビジョン」と呼ばれています。アナリストが分析を担当する企業の利益が、当初の予想より上振れに修正すると上方リビジョン、逆に下振れ修正すると下方リビジョンになります。

筆者は、このリビジョンを集計して株価動向の判断に生かす「リビジョンウォッチ」という手法を考案して、継続的に観察していますが、足元で注目すべき変化が見られたため、その動向を紹介します。

外部環境に目を向けると、日本銀行の金融政策決定会合は12月18日・19日に開催され、政策の内容は12月9日に公表されますが、その前後で相場の流れが上向きに変化する可能性に注目しています。

リビジョンウォッチが示す市場循環のサイン、「水準」ではなく「変化」に注目

リビジョンウォッチは以下の2点に着目する指標です。

・リビジョンをTOPIX構成銘柄で集計したリビジョンインデックスそのものの「水準(業績の勢い)」
・その水準が過去と比べてどう「変化」しているか(改善/悪化の方向性)

たとえ現在のインデックス水準が低くても、「変化」がプラスであれば、将来の改善につながりやすくなります。逆に、足元の水準が高くても、「変化」がマイナスならば、この先は勢いが弱まる可能性があるというものです。

図表1は、水準(横軸)と変化(縦軸)を2つの軸でプロットしたものです。このプロットは、多くの局面で時計回りに循環していく特徴があり、これが「リビジョンウォッチ」という名称の由来です。特に、赤い矢印が示すように、変化がマイナスからプラスへ転じ、続いて水準もマイナスからプラスに向かう局面は、株価上昇の起点となりやすい重要なシグナルになります。

【図表1】市場全体のリビジョンウォッチ
注1:2025年3月10日から始まる週から12月1日からスタートする週(12月5日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

足元で浮上した改善シグナルと相場への含意、株価反騰に向けた機運が生まれた可能性

直近では、12月1日から始まる週(~12月5日)が観測対象となります。横軸のリビジョンインデックス(3週平均)は12.3ポイントとプラス圏を維持していますが、今回とりわけ注目されるのは縦軸の動きで、変化幅が1.27ポイントとプラス圏に浮上した点です。リビジョンは経験則として時計回りに巡る傾向がありますが、今回は改善のテンポが早かったこともあり、むしろ反時計回りに近い軌道を描いているようにも見えます。

本連載でリビジョンウォッチを最初に取り上げたのは、9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法」になります。その際、「変化のプラス幅が縮小していくと水準そのものもマイナスに沈む恐れがある」と注意喚起していました。その後は図表1の紫線が示すように懸念が現実化し、結果として足元の株価が力強さを欠く一因になりました。

しかし、今回のように縦軸の変化が再びプラス圏に浮上したことで、株価には反騰に向けた機運が生まれてきたとみられます。直近では日本銀行の金融政策決定会合(政策内容は12月19日に公表予定)が控えており、その前後で相場のトレンドが好転する可能性にも注意を払っています。現状は押し目買いを意識して臨みたい局面と考えています。

今後、年度末に向けて、企業の保守的な業績計画をある程度は意識しながら示されてきたアナリスト予想にも、上方修正の動きが広がることが期待されます。そうした流れが強まれば、リビジョンウォッチは右斜め上方向に改善が進むことになり、相場の上昇を後押しする可能性が高まります。

業種別に見る改善度合いと注目すべきセクター

市場全体のリビジョンウォッチが改善基調を示しています。ここでは、さらに踏み込んで業種別の動きを確認します。なかには、リビジョンウォッチが改善していない業種もあり、その点には引き続き注意が必要です。図表2は電気機器業種のリビジョンウォッチを示していますが、前述した9月24日の記事の掲載以降に限ってみても変化はマイナス領域にとどまり、青い矢印が示すようにグラフの動きは左下方向となっています。この状態では、リビジョンウォッチの観点から電気機器業種の株価に対して、現時点で大きな期待を抱きにくい環境と言えます。

【図表2】電気機器のリビジョンウォッチ
注1:2025年9月16日から始まる週から2025年12月1日から始まる週まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIXの電気機器を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

一方で、それ以外の輸出系の業種のなかには改善の傾向がみられるものもあります。

今回、特に注目する2つの輸出業種「鉄鋼」「輸送用機器」を図表3、図表4で示しました。鉄鋼は青矢印が示す様にグラフが直近にかけて右上方にシフトしています。輸送用機器は出直りから、右上方へのシフト移行への途上です。

【図表3】鉄鋼のリビジョンウォッチ
注1:2025年9月16日から始まる週から2025年12月1日から始まる週まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIXの電気機器を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
【図表4】輸送用機器のリビジョンウォッチ
注1:2025年9月16日から始まる週から2025年12月1日から始まる週まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIXの電気機器を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

また、図表5に示す様に内需系業種では「サービス」が注目です。これらの業種の中で、さらに利益予想の上方修正が大きい銘柄に絞り込むアプローチが効果的と考えられます。

【図表5】サービス業のリビジョンウォッチ
注1:2025年9月16日から始まる週から2025年12月1日から始まる週まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIXの電気機器を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

リビジョンインデックスを最新データで確認する方法

ここからは補足的な話題です。

リビジョンウォッチは計算処理に手間がかかるものですが、比較的簡単に業種のリビジョンの傾向をとらえるものとして、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」では最新のデータでリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。

図表6の青丸印から1週間の水準を見ることができます。そして「1ヶ月の変化」の項目で出力された水準と比較して、足元の水準が改善しているのかを合わせて見ることが大切です。また、業種一覧タブ(図表6の赤丸印)からは業種別のリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。

【図表6】リビジョンインデックス(RI)の出力画面(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― アナリスト予想変化、2025年12月8日時点)