2025年11月の中国株全体は、方向感に欠けた1ヶ月
中国株の2025年10月31日(金)終値~2025年11月28日(金)終値までの騰落率は、上海総合指数は-1.67%、香港ハンセン指数は-0.0%となりました。全体としては、方向感に欠けた1ヶ月でした。
上海総合指数の騰落率は小幅ながらマイナスとなりましたが、構成としては国有企業(SOE)中心のディフェンシブ銘柄が支えた形で、民間企業・新興テック株は引き続き軟調となり、投資家の選別姿勢が極めて強い状況です。一方、香港ハンセン指数は本土からの資金流入が一時的に強まった局面と、米金利動向・人民元の振れによる「 逆風」が交錯しており、横ばいとなっています。
この期間に発表された中国の主要経済指標は、10月の小売売上高が前年比2.9%増(市場予想2.8%増)、鉱工業生産が4.9%増(市場予想5.5%増)、固定資産投資が-1.7%(市場予想-0.8%)、11月の中国国家製造業PMIは49.2(市場予想49.4)、中国国家非製造業PMIは49.5(市場予想50.0)となりました。悪いとは言い切れませんが、どちらかと言えば弱い経済指標が続いています。根本的に中国株が上昇トレンドに入りにくい理由は、ここにあるのではないでしょうか。
中国株の不安要因は中国経済の要である不動産市場
不動産セクターは依然として中国株の最大の不安要因の1つだと思います。大手ディベロッパーの資金繰り懸念は完全には解消されておらず、住宅価格が下げ止まらない都市も多い状況です。
たとえば、中国の大手不動産ディベロッパーである万科企業(02202)は中国の不動産大手、万科に対し人民元建て社債の元利支払いを1年待つよう債券保有者に要請しました。同社は今回の社債を含め、来年半ばまでに総額134億元の償還を控えています。政府の支援策は続いているものの、政策の効き目が鈍く、効果が出ていない点が投資家心理の重しとなっています。中国の不動産市場は中国GDPの25~30%を占めており、中国経済の要です。このセクターが軟調だと、銀行、建材、消費などへの波及ダメージが広範囲に及ぶため、その状況が続いています。
中国AI企業はAIバブルの炭鉱のカナリア?
AI関連株の中心銘柄の1つである百度(09888)が第3四半期の決算を発表
テンセント(00700)やアリババ(09988)などのAI関連、テック株の株価も調整気味の株価推移となっています。AI関連株の中心銘柄の1つである百度(09888)が11月18日に第3四半期の決算を発表しました。百度は中核事業の検索広告モデルが低迷を続け、それに替わる次の成長をAIに求め、変革を模索してきました。自らを「リーディングAIカンパニー」と称する同社ですが、残念ながらここまでAIによる力強い成長はみられず、減少を続ける広告からの利益を補えるのかは不透明です。むしろAI事業への投資に伴う費用増が利益を圧迫する構図となっています。
今回の第3四半期決算では、正式なGAAP準拠の会計基準で営業赤字、純損失に転落しました。理由は既存インフラが効率要件に合わないため、積極的に減損を行ったとのことで、古い資産を整理することでAI投資を加速する意味合いもあります。つまり、旧来の検索時代の資産価値が落ち、これを現在投資中のAI時代の資産に置き換えるべく、巨額減損で一度帳簿をリセットしたということです。
過去に積み上げてきたAI投資がすでに収益を上げ、投資スピードを緩めて(費用減少)利益回収に入る段階なら、旧資産の減損は新旧交代として好感できると思います。しかし実情は、AIクラウドの利益貢献はほぼゼロ、むしろ費用増が圧迫し、ロボタクシー事業は世界最大規模ながら黒字都市はごく少数に留まり、広告事業は検索市場が縮小し、AI広告は伸びても小さいという段階です。
百度の事業転換はAI企業のリスクを測る先行事例となりうる
今後も重いAI投資はさらに続き、費用面で圧迫されることになります。そして、AI投資の先に見据えるAIクラウド、ロボタクシー、AI広告によって利益を上げて回収できるかは未知数です。もし回収できなければ、さらなる減損費用の計上が待たれることになります。このことは、積極的にAIインフラ投資を続けるAI企業全体について言えるリスクですが、百度の事業転換はより脆弱であるため、AI企業のリスクを測る先行事例として見ることもできます。
例えば米国企業のアルファベット[GOOGL]は、財務強固で投資余力もある上、コアである検索事業も非常に好調です。AIに業態転換するというより、既存事業の強化策としてAI検索を取り入れ、資金的にも余裕があります。そしてAI導入は広告全般に成果も出ており、自社製AI半導体の外販にも乗り出そうとしています。
それに対して百度は、AI事業を低迷し続ける検索広告に替えるべく背水の陣で業態転換を目指しており、財務的にもまた成果も出ていない点においても脆弱です。これまで百度をAIの勝者を探すために見てきましたが、むしろAI投資がうまくいかないケース、つまりAIバブルの弱点や発火点を早期に知らせてくれる「炭鉱のカナリア」銘柄という視点で見ても、投資家にとって価値のあるものだと考えます。
AIチップの技術革新スピードは速く、毎年のようにフルモデルチェンジされていきます。アルファベット[GOOGL]、マイクロソフト[MSFT]などのキャッシュリッチ企業は、さらに価値が上がり、性能も一年で3倍~10倍も向上する最新チップを購入できますが、それができない企業とは差が拡大し、新たな減損リスク(既存資産の劣化)が出てくるでしょう。
これはAI企業全般に言えるリスクであり、前述の通り百度をAIバブルの危険度を測る参考企業として見ていくことは、世界の投資家にとってAIバブルが崩れるかどうかの価値ある判断基準になるのではないかと思います。
