1月下旬にかけての高値水準から一変、2月の中国株は続落
2026年2月(1月末終値~2月末終値まで)の中国株では、上海総合指数は+1.1%、香港ハンセン指数は-2.8%とまちまちの動きとなっています。香港ハンセン指数は、1月下旬にかけて非常に強い動きを見せました。特に1月28日には2021年7月以来、およそ4年半ぶりとなる27,800ポイント台の高値水準まで駆け上がりました。この大幅上昇を強力に牽引したのは、中国当局による国有企業(中央企業)への再編支援策です。
国有資産監督管理委員会が、同業種の横断的統合やサプライチェーンの強化を目的としたM&Aを後押しする方針を示したことで、エネルギー、通信、メガバンクといった国有系銘柄に投資資金が集中しました。加えて、米ドルの軟調な推移を背景に、香港を含む新興国市場全体への資金流入期待が高まったことも相場を大きく押し上げる要因となりました。
しかし、2月に入ると市場の雰囲気は一変し、利益確定売りが先行する調整局面を迎えています。2月2日にはハンセン指数が続落し、心理的節目である27,000ポイントを割り込んで1週間ぶりの安値圏へと沈みました。この反落の主な要因は、中国の実体経済に対する警戒感の再燃です。1月末に発表された1月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が、好不況の分かれ目となる50を割り込んだことが嫌気されました。
さらに、米国株式市場の下落や、金・銀といった商品価格の急落も投資家心理を冷やしました。個別セクターでみても、通信キャリアが税区分変更(増値税率の6%から9%への引き上げ)の発表を受けて大きく売られたほか、1月の新車販売台数を発表したEV(電気自動車)大手が急落するなど、1月に相場を牽引した銘柄群の一角に強い調整圧力がかかっています。旧正月の連休前のポジション調整の売りもこれに重なったものとみられます。
1月物価統計から読み解く中国経済の現在地:根強いデフレ圧力
2026年1月の消費者物価指数(CPI)は前月から大きく減速
足元のマクロ経済指標も引き続き、「内需不足」という深刻な課題を浮き彫りにしています。国家統計局が発表した2026年1月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で0.2%の上昇にとどまり、前月の0.8%上昇から大きく減速し、市場予想(0.4%上昇)も下回る結果となりました。
もちろん、この数字の背景には季節要因も絡んでいます。2026年の春節(旧正月)は2月中旬にずれており、2025年の1月と比較して単月の数字が下振れしやすい環境にありました。国家統計局は「コアCPIの前月比は0.3%上昇しており、緩やかな回復傾向にある」と説明していますが、実態を紐解くと少し複雑な状況が浮かび上がります。
今回、CPI上昇の大きなけん引役となったのは、安全資産として買われている「金価格」の高騰です(金装飾品価格が前年同月比77.4%上昇)。金価格の急騰の影響を除外した場合、1月のCPIは実質的にマイナスとなっていた可能性も指摘されています。長引く不動産不況などを背景に消費者の購買意欲は依然として低迷しており、構造的なデフレ圧力から完全に脱却したとは言い難い状況が続いています。
1月の生産者物価指数(PPI)は前月から下げ幅を縮小
一方で、生産現場からは明るい兆しも見え始めています。企業間の取引価格を示す1月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比マイナス1.4%と、前月(同マイナス1.9%)から下げ幅を縮小し、2024年7月以来の小幅な下落にとどまりました。前月比ベースでは4ヶ月連続でプラス圏を維持しています。
この背景には、非鉄金属(金・銀・銅など)の国際的な価格高騰という外部要因に加え、中国政府が主導する「反内巻(過度な価格競争や過剰生産の抑制)」政策が一定の効果を発揮し始めていることが挙げられます。
太陽光発電設備や自動車など、これまで過剰生産が懸念されていた主要産業において、無秩序な値下げ競争に歯止めがかかりつつあることは、企業の採算環境の改善に直結するポジティブな変化と言えます。また、AIなどデジタル技術の普及に伴う通信機器分野の価格上昇も確認されており、産業構造の「量から質へ」の転換(新質生産力へのシフト)を裏付けるデータとして評価できます。
第1四半期の追加緩和と「高配当×新質生産力」に注目
今後の中国株相場を展望する上で焦点となるのは、低迷する内需を力強く押し上げるための「追加的な金融・財政政策の実装タイミング」です。1月のCPIが市場の期待に届かなかったことで、デフレ懸念を完全に払拭するために、第1四半期(1-3月期)中にも、中国人民銀行が預金準備率の引き下げなど、具体的な金融緩和策を打ち出すとの観測が市場で高まっています。また、中央政治局会議で示された積極財政の裏付けとして、消費刺激策がどのような規模感で実行されるかも重要なカタリストとなります。
なお、足元では米国・イスラエルによるイランへの攻撃が株価の足を引っ張っています。2月28日に開始されたこの軍事行動をきっかけに、金融市場全体が強いリスク回避(リスクオフ)のムードに覆われており、3月に入ってからの香港株式市場は大きな調整を余儀なくされています。中東情勢が落ち着くまでは地政学リスクに振り回される展開が続きそうですが、情勢が落ち着いた後は株価の割安感が意識されるため、相場の回復が期待できます。
