相場や感情で判断せず、投資目的や運用期間を見つめなおす

投資信託協会がまとめた2025年10月の投信概況によると、公募株式投信(除くETF)の純資産総額は前月比6.0%増の169兆5023億円。6ヶ月連続で増加し、過去最高を更新しました。一方、投資信託への資金流入が増えているものの、解約も増えているようです。公募株式投信(除くETF)の設定は4兆7796億円と過去最高ですが、「解約・償還」は3兆6145億円と2014年11月以来の規模となっています。

株価が高い水準にあったり、変動が大きくなっていたりするのがその理由とみられます。実際、セミナーで事前質問を募ると、「これからどんな銘柄が流行るのか?」「為替はどうなるのか?」「変動が大きくて投資が決断できない」といった文言が並びます。

しかし、資産形成を目的とした投資であれば、主役は相場ではなく、自分(や家族)。短期的な変動に振り回されるのではなく、投資をする目的や運用できる期間などをしっかりと見つめ直すことが大切だと感じます。

「目的のために使う時期が来た時」「リバランス」「商品の様変わり」が検討ポイント

ただ、投資信託の積み立てを通して資産形成をしている場合、どんな時も解約せずに保有し続けるのがよいかと言えば、そういうわけでもありません。次の3つのいずれかに当てはまれば解約もありだと考えます。

解約タイミング1「目的のために使う時期が来た時」

投資信託を購入して運用するのは目的があるからだと思います。例えば「老後資金をつくるため」という場合は、老後資金を使う時期が来たら解約します。必要な分だけ解約していく自動解約サービスなどを活用するのもよいでしょう。それまでは頻繁に売り買いすることなく、運用し続けるのが基本です。

「今、上がっているから、いったん利益確定して、安くなったら買い戻せそう」と考える人もいるでしょう。ただ、下がったときも上がったときも、一度売ってしまうと再び市場に戻るのは簡単ではないようです。

米国Vanguardの調査(※)によれば、コロナショックの2020年2月19日から5月31日までの間に投資商品をすべて売却して現金化した投資家のうち80%以上は市場に戻ってくるタイミングを逃した、ということです。その結果、株式市場の反発の恩恵を受けられず、 長期的なリターンが低下。何もせずに投資を続けていたほうが良い結果となった、と言われています。短期的な変動に振り回されるのではなく、長期でじっくり構えたいものです。

ただ、当初の目的とは違うけれど、お金が必要になったとき・やりたいことができたときには投資信託や上場株式の一部を売って、使うことも時には必要です。短期的に金融資産が減っても、例えば、「何かを学ぶことで、知識やスキルを得る・将来の収入増につながる」「その時にしか経験できないことをする」なら、一部解約も選択肢の1つかもしれません。長期的に自分のバランスシートに、金融資産に加えてどんな資産を積み上げていきたいかを意識することは大切です。

解約タイミング2「リバランスするとき」

投資信託を買う際には、割合について、「預金などの安全資産と投資信託を1対1で持とう」「日本株と海外株の投資信託を4対6の割合で持とう」といったふうに決めておきます。

ただ、最初に割合を考えても投資信託は日々基準価額が変動するため、運用しているうちに当初決めた比率が崩れてしまいます。バランスが崩れたまま放っておくと、当初の想定より価格の変動幅が大きくなったり、リターンが低くなったりする可能性もあるため、定期的に元の配分に戻す作業が必要になります。この作業のことを「リバランス」といいます。

リバランスの方法は2つあります。ひとつは「当初の比率よりも増えた商品を解約し、比率の低くなった商品を購入すること」で元の比率に戻す方法です。ただ、NISA口座で投資信託を解約すると、枠が復活するのは翌年以降ですし、特定口座などの課税口座では利益がでていると税金が差し引かれます。

そこで、2つめの方法として「資産総額が少ないうちは解約せず、『買い』」だけで比率を調整しましょう。たとえば、比率の減った商品の積立額を増やしたりすることで調整できます。

ただし、資産が増えてくると「買い」だけのリバランスは難しくなります。そこで、1つ目の「当初の比率より増えた商品を解約し、比率の低くなった商品を買い増す」を選択しましょう。こちらの方法は結果的に高くなっているものを売るわけですので、利益を確定することにもつながります。安全資産とリスク資産の割合に目を配ることも大切です。ここで大事なのは、「感情」ではなく「ルール」にのっとって行うということです。

解約タイミング3「購入した商品が様変わりしてしまった時」

購入した商品が様変わりした時も解約を検討するタイミングと言えるでしょう。例えば、「運用体制・運用責任者が変更になった」「運用方針が変わってしまった」「投資家の解約が相次いでいる」というときは要注意です。「なぜこの投信を購入しようと思ったのか」「この投信の魅力はなんだったのか」をもう一度思い返してみましょう(できれば買う時に、その理由を書き留めておくとよいですね)。

購入した頃の魅力が薄れていなければ多少下がっていても保有を継続すればよいですが、購入時に選んだ理由が根本的に変わってしまった場合は解約を検討してもよいかもしれません。そういう意味では、情報開示がしっかりしている投資信託を保有していたほうが安心です。
 
相場が大きく動く場面だからこそ、短期的な動きに右往左往するのではなく、この機会に、改めて投資をする目的、安全資産とリスク資産の割合、リスク資産の配分割合、保有する商品やその理由などを整理しておきたいものです。

※「Cash panickers: Coronavirus market volatility」(Vanguard、2020年7月)より