先週(7月14日週)の動き:複数の手掛かり材料の見極めがつかない市場、NY金にファンドの買戻し、国内金価格は最高値更新
先週(7月14日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は3,300ドル台半ばでのレンジ相場が続いた。NY金は4月21、22日と過去最高値の更新が続いた後に高値圏での乱高下を経て、5月下旬以降は3,300~3,400のレンジを形成。7月に入り、日を重ねる中でレンジは3,350ドルをコアにした値動きに収束する傾向を示している。
硬軟両方向の手掛かり材料も方向感出ず
中東情勢はイスラエル、イランの停戦で小康状態にあるものの、先週はイスラエルによるシリア空爆が起き予断を許さない。一方、トランプ米大統領は貿易相手国に強行的な高関税を通告する書簡を送付し、8月1日の発動期限を示し妥協を迫っている。そんな中、発表された米経済指標は想定よりも強い内容が目立ちFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ慎重スタンスを後押しするものとなった。以前からFRBに対し利下げ要請を続けているトランプ米大統領には逆風となる。
ただし、先週7月16日には一部報道でトランプ米大統領がパウエルFRB議長の解任に踏み込む可能性が報じられたことから、一時米株安、米ドル安、米国債安(利回り上昇)のトリプル安現象が現れ、その際にはNY金は約60ドル急伸する場面が見られた。市場の反応に驚いたのか、トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に議長解任の計画はないと明言し市場は安定を取り戻した。NY金も上げ幅を削ることになった。
主要国との関税交渉も難航している様子がうかがえる。7月12日にトランプ米大統領がEU(欧州連合)に対し8月1日から新たに30%の関税を適用すると表明し、協議が進められている。7月18日英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「トランプ米大統領はEUとのいかなる合意であっても最低15~20%の関税を課す意向だ」と報じた。いずれにしても高率の関税が賦課される可能性が高まっている。関税が世界景気を下押しするとの懸念は市場横断的に共有されているが、米国側の発表内容が変化することで、企業そして市場関係者も様子見を続けざるを得ない状況にある。
NY金はほぼ横ばいレンジ値幅縮小
株式市場は先週から本格化した決算発表の内容に好調なものが目立つこともあり、S&P500種平均やナスダック総合などが過去最高値の更新を続け、いわゆるリスクオン(リスク資産選好)センチメントの高まりはNY金には上値を抑える要因となっている。
こうした中で先週7月19日のNY金は3,358.30ドルで終了。週足は前週末比5.70ドル0.17%の小幅に反落となった。レンジは3,314.30~3,389.30ドルで値幅は75.00ドルと7週ぶりの規模に縮小した。調整局面の終盤を思わせる動きと言える。
JPX金は終値ベースの最高値を更新
一方、国内金価格は為替要因で水準を切り上げた。週末にかけて米ドル/円相場が円安に傾き、週初の147円半ばから一時149円台を付け148円台後半で終わったことが押し上げ要因となった。7月20日投開票の参議院選挙を控え、自民・公明の与党の議席数が非改選を含め過半数を下回るとの見方から、日本の財政拡張や長期金利上昇による財政圧迫懸念が円の売り手掛かりとされた。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)の7月18日の終値は1万6090円。週足は前週末比201円1.27%高の3週続伸となった。前述のようにNY金が3,350ドル近辺の高値圏で滞留する中で、JPX金は週初7月14日から3営業日連続で過去最高値を更新し、7月16日の終値は1万6091円となった。一方、先週の取引時間中の高値は7月16日の1万6154円と、6月24日に記録した最高値1万6171円にわずかに届かなかった。
今週(7月22日週)の動き FRBおよびFRB議長への圧力高めるトランプ政権、NY金は3,370~3,440ドル、JPX金については1万6050~1万6300円のレンジを想定
今週(7月22日週)は7月29~30日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を翌週に控えFRB関係者は7月19日から金融政策に関連する発言を控えるブラックアウト期間に入っている。7月22日にパウエル議長の発言機会が予定されているものの、この点で手掛かり材料にはならないとみられる。同様に、ボウマン副議長のTVインタビューの予定も同日にあるが金融規制関連の内容になるとみられる。
FOMCを前にトランプ政権のプレッシャー
FRB関連してはトランプ米大統領や政権幹部による攻撃的な発言が連日続いており、週明け7月21日にもベッセント米財務長官が米CNBCのインタビューで「連邦準備制度(Fed)全体が成功しているかを検証する必要がある」と述べたと伝わった。さらに「FRBが数多くのミスを犯した」とも述べたが具体例には触れていない。翌週にFOMCを控え、トランプ米大統領が利下げを求める声を高める可能性がありそうだ。
先週は、現在進行中のFRB本部改修工事の詳細についてパウエル議長が6月の上院公聴会にて虚偽の証言を行ったとして、下院共和党議員が司法省に対し刑事訴追を求めたとの報道も見られた。FRB議長を追い詰める異例の動きは、金融の安定性を損ねる要因であり、金市場の買い手掛かりとなる。
米経済指標では6月の中古住宅販売件数、同新築住宅販売件数などがあるが、7月24日(木)のS&Pグローバルの7月PMI速報値に注目したい。
週明け早々NY金、JPX金ともに水準切り上げ
こうした中ですでに週明け7月21日のNY金はファンドのショートカバーとみられる動きに3,400ドル台を回復している。8月1日の関税協議の期限日接近やFOMCを控え、トランプ政権の動きに対する警戒も買いにつながっているとみられる。一方、日本の参院選で自民・公明の与党の議席数が非改選を含め過半数を下回ったものの、警戒されていたほどの大敗とならなかったことや、石破首相が続投の意向を示したことで、円安には歯止めが掛かっている。NY金の上昇を反映しJPX金も週明けの休日取引にて一時1万6237円まで付け、取引時間中の最高値を更新している。
こうした状況からNY金は3,370~3,440ドル、JPX金については1万6050~1万6300円のレンジを想定している。
