株式市場、新興国や欧州が堅調

2025年も折り返しを迎えました。年初来の株式市場を見ると、新興国や欧州が堅調で、日米株は相対的に出遅れています。なかでも新興国では、東欧や中南米が強さを見せる一方、東南アジアはやや伸び悩んでおり、米国の関税政策への影響を受けにくい地域が選好されているようです(図表1)。

【図表1】年初来パフォーマンス・株式と金
出所:Bloomberg

債券市場でも同様に米国外地域の指数がより堅調です。また米ドル以外の通貨高により米ドル建てのパフォーマンスが良くなっています(図表2)。振れの少ない堅調な債券やゴールドが高パフォーマンスを示す中で、株式市場の堅調さも並存している点が特徴的です。

【図表2】年初来パフォーマンス・債券と金
出所:Bloomberg

世界経済、底堅さを維持

この背景には、政治・外交をめぐる懸念が続く中でも、世界経済が底堅さを維持していることがあります。今後、景気の下押し圧力がどの程度顕在化するかが焦点となりますが、IMF等が2025年の成長率を下方修正したように、すでに相応の鈍化は織り込まれており、一段の悪化がなければ、市場が大きく、長期にわたって調整する可能性は限定的でしょう。

一方で、これまでの米資産集中の流れには転換の兆しも見られます。米国の構造的な貿易赤字の拡大に歯止めがかかれば、図表3に示したように、これまで黒字を背景に米資産を買っていた海外投資家の動きにも変化が生じるでしょう。

【図表3】米貿易赤字と金融フロー
出所:Bloomberg

なお、図表4の通り、新興国株は先進国株に対して劣後する状況が続いてきました米ドル以外の資産bクラスへの分散を志向する動きが、新興国株の再評価につながる可能性があります。

【図表4】新興国株(対米国株)の推移
数値はMSCI新興国株指数÷米S&P500指数で算出 出所:Bloomberg

今後の米金利動向

景気や財政の影響を受ける米金利の動向は、株式市場の評価に大きな影響を及ぼします。米国債市場は海外投資家の保有比率が3割を超える規模で、米ドル離れが進めば金利上昇への懸念が高まります。

ただし、米債市場は他国を圧倒する規模と流動性を誇り、代替市場が乏しい点や、米ドル金利の水準が相対的に高いことが、米ドル資産への需要を下支えするでしょう。さらに、財政支出に関する法案を通じた短期的な財政懸念への織り込み、経済不確実性への市場の慣れ、規制緩和による銀行など国内投資家の債券購入促進、景気の鈍化基調や利下げ観測など、金利の低下を後押しする要因も期待されます。

【図表5】各国債券市場規模
出所:BIS

 再びバリュエーションが高位に戻ってきた米国株ですが、株式投資では、新興国株などを活用した地域分散が有効です。また、投資リスク軽減の観点からも、金利水準のピークアウトを見据えた米国債への投資は引き続き有効と考えられます。

米国債、相対的な魅力

なお、各国の10年債利回りを比較すると、米国債の相対的な魅力が確認できます。一方で、格付けが高く利回りにも妙味があるオーストラリア債は、分散投資の観点から有力な選択肢といえるでしょう。

【図表6】各国債券利回り
出所:Bloomberg