止まらぬ関税砲と揺れるセクター

米国株式市場は、先週(5月5日週)も「トランプ関税相場」に翻弄されました。貿易強硬姿勢は止まらず、映画、医薬品、AI半導体など、次々とターゲットを変えて関税発言が繰り返されました。インフレ懸念と企業業績への影響が意識され、全体としてはボラティリティの高い神経質な展開となりました。

しかし、注目すべきは、株式市場が意外に下がらなかったことです。週の前半マーケットは軟調に推移しましたが、最終的にはS&P500は0.47%の下げ、ナスダック100は0.2%の下げで週を終えました。週の後半にはトランプ米大統領による英国との貿易合意発表や、ビットコインの急反発などが、リスク資産への買い戻しを誘発しました。

企業決算と「利下げなしでも崩れない」市場の耐性

この動きの背景には、予想より堅調な決算シーズンと、「利下げなしでも株は崩れない」という市場の学習効果があるように見えます。S&P500企業の8割近くが予想を上回る決算を発表し、特にテクノロジー企業は「広告収入やAI関連の需要が底堅い」との印象を与えました。

また、FOMC(米連邦公開市場委員会)は政策金利を据え置いたものの、「当面様子見」とのスタンスを維持。利下げ期待は遠きましたが、株価の大きな下押し要因にはなっていません。ただ、注意が必要なのは、「関税の実弾」がまだ本格的には企業業績に反映されていない点です。米中通商交渉も始まりましたが、市場には警戒と期待が交錯しています。

一方で、もう1つのビッグニュースはウォーレン・バフェット氏の退任表明でした。60年にわたりバークシャー・ハサウェイを率いた“オマハの賢人”の退場は、象徴的な節目となる可能性があります。バリュー投資の原点とされた彼の哲学が、後継者のグレッグ・アベル氏にどのように受け継がれるか、注目されます。

「多事多難」なマーケットで何を注視すべきか

先週(5月5日週)の相場は、「ニュースの多さの割に、株価は意外と底堅い」という印象でした。短期的には神経質な動きが続く可能性はありますが、足元の企業業績や消費動向はまだ崩れていません。一方で、これから数週間のあいだにインフレ関連のデータや小売企業の決算内容が発表されます。

私のベースラインの考え方としては、世界を揺るがせたトランプ米大統領の関税措置は、大統領自身が示した「90日間」で一旦落ち着くと考えています。ただし、これから発表される経済指標に関税の影響がどのように表れてくるのかを確認する必要があります。

マーケットがすでに関税問題を「過去のこと」として織り込み、最悪期は通過したと判断するのか、それとも関税の影響は今後も続くと警戒するのか、この見方の分かれ目が、今後の市場の焦点となります。