11月10日週の米国株市場は落ち着きのない値動きで推移、バリュー株が相場を下支え
先週(11月10日週)の米国株市場は、表面的には小幅高で終わりましたが、その裏側では落ち着きのない値動きが続く1週間となりました。S&P500は1週間では+0.08%と辛うじてプラス圏を維持したものの、週の半ばには大きく値を下げる場面がありました。
特にナスダック100については、先週-0.21%の下げと週間で見ればほぼ横ばい圏に留まったものの、再びAIトレードをめぐる不安心理の悪化がおきました。
AI関連株は2025年の相場を牽引してきましたが、「バリュエーションが高すぎる」「一部銘柄に資金が集中しすぎている」との指摘が改めて意識され、投資家の間では「過熱感への警戒」が広がったのです。マーケットでは再び「AIトレードは終わったのではないか」というフレーズが聞かれるようになり、小型の高ベータ株やモメンタム株といった市場のリスクセンターに位置する銘柄には売り圧力が強まりました。
こうした流れの中で、むしろ相場を下支えする役割を果たしたのがバリュー株でした。S&P500バリュー株指数は +0.73% と堅調に推移し、一方でS&P500グロース株指数は –0.46%と下落し、リターン差が鮮明に表れました。AI一辺倒だった2025年の市場において、資金が一部でバリューへと循環し始めた兆しが見えた週だったと言えるでしょう。
テクニカル面では、11月14日(金)にS&P500は一時50日移動平均線を割り込みましたが、引けにかけて買いが入り持ち直しました。ただし、本当に底を打ったかどうかは、今週(11月17日週)以降の反発の継続性が重要になります。
市場にインパクトを与えた「政府閉鎖の終了」と「利下げ見通しの後退」
先週(11月10日週)の市場で特にインパクトが大きかったのが、2つの政策関連のイベントでした。
1つは政府閉鎖の終了です。10月1日から始まった政府閉鎖も、11月12日に共和民主党の合意で暫定予算案が成立しました。閉鎖回避に向けた期待が先に織り込まれていた分、実際に閉鎖が終わった局面では典型的な「噂で買い、事実で売る(Buy the rumor, sell the fact)」展開となり、株式市場はむしろ上値が重くなるという皮肉な結果となりました。
もう1つは、12月の利下げ見通しの後退です。複数のFRB(米連邦準備制度理事会)当局者が相次いで慎重なスタンスを示したことで、市場は「12月利下げは確度が高い」との前提を見直さざるを得ない状況となりました。この利下げ織り込みの剥落がハイベータ株や小型株には特に重しとなり、週の前半には金利に敏感なセクターほど下落するという分かりやすい値動きが続いたのです。
バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]がアルファベット[GOOGL]株で約1,100億円の評価益を積み上げ
2025年末に予定されているウォーレン・バフェット氏のCEO退任が近づくなか、バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]が9月30日締めの第3四半期で新たな一歩を踏み出していたことが明らかになりました。先週11月14日(金)の夜に公表された米国証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、同社は アルファベット[GOOGL]株を新規で約1,800万株取得しており、当時の評価額は 約43億ドル に達していました。
そして、その同じ株数は11月14日(金)の時点で 約50億ドル にまで価値が上昇しています。つまり、わずか 2ヶ月足らずで約7億ドル(約1,100億円)にのぼる評価益を積み上げた計算になります。
今回の大規模な新規投資は、ポスト・バフェット時代を担うグレッグ・アベル氏を中心とした次世代経営陣の判断が色濃く反映された可能性が高いとみています。バークシャーの投資ポートフォリオにおいて、世代交代が着実に進んでいることを象徴する出来事と言えるでしょう。
今週の試金石はエヌビディア[NVDA]の決算発表と雇用統計の公表
今週(11月17日週)特に注目されるのが、11月19日(水)のエヌビディア[NVDA]の決算発表です。このところ調整してきたAI関連株が新たに下げるのか、それとも戻すのか世界中の株式投資家が心待ちにしています。また、米国消費の体温計とも言えるウォルマート[WMT]やホームデポ[HD]の決算発表は、インフレ鈍化の流れと消費者行動の変化を読み解く上で重要な意味を持ちます。
さらに、労働統計局は、政府閉鎖で予定通り発表されなかった9月の雇用統計を11月20日に公表すると発表しました。雇用統計はもともと遅行指標ですが、経済指標や決算に対する市場の反応が、今後の方向性を占う上でのカギとなります。市場にとって重要なのは「内容そのもの」よりも、「その結果を市場がどう受け止めるか」です。市場心理が安定に向かうのか、あるいは改めてボラティリティが再燃するのか、今週は試金石となるでしょう。
