マーケットは実体経済の先行きを見極める局面
4月の日米マーケットは一時相場の変動性が非常に高まったものの、下旬には戻りを試すなど、落ち着きの兆しも感じられる展開となりました。
4月1日付レポート「【マクロ経済動向4月】相場変動が増す中、これからの注目点は?」でも紹介したチャートを再掲し、10%のドローダウンが発生した後の米国株の動きをアップデートします。図表1では、景気後退となったケース、回避されたケース、そして今回の推移を示していますが、今回の特徴としては、調整の深さや変動の激しさが挙げられます。
通常、10%程度のドローダウン後は短期的に方向感に乏しく、日柄調整の時間帯を迎えることになりますが、その後の中期的な株価の方向性は、実体経済の動向が左右するため、今はまさにその先行きを見極める局面と言えるでしょう。

米国経済の成長予想は下方修正されるも、ここからデータの確認が必要
実体経済の調整度合いについては、IMFの見通しによると、米国の成長予想は相対的に大きく下方修正されています。企業業績の予想も下方修正が進んでいます。2025年の成長率は年初の12%程度の増益予想から、足元では8%を切るまでに修正される一方、2026年の成長見通しは13%程度から大きく変化していません。関税をめぐる不透明感が設備投資など企業行動にどう影響するのか、また短期的なインフレ懸念が消費にどう影響するか、これからデータを確認する時間帯となります。

「米国経済の調整は軽微」だと期待できる3つの理由と、それでも欠かせない下押し圧力への備え
それでも米経済の調整が軽微にとどまると期待される理由として3点挙げられます。まず今回の調整は人為的であり金融危機ではないこと。政権のスタンスが変われば回復する余地があります。次に、年後半にかけて減税などの景気刺激策が期待されること。そして3点目として、家計や企業の財政状態は健全で、経済ショックへの耐性が備わっていることです。
もっとも、景気サイクルは成熟段階にあり、労働市場は今後鈍化基調が見込まれます。国際的な枠組みの変化が企業行動に影響する中で、経済の下押し圧力への備えも欠かせません。
先ほどの株式市場と同様に、債券市場の値動きを確認すると、質の高い債券は、どのような局面でも安定したパフォーマンスを示します(図表3)。特に景気が軟調な時期に良好です。先日のレポート「短期的に注意される米金利の急騰」でも触れたとおり、一時的な金利上昇リスクはあるものの、これは構造的なものではなく、有事の際には金利上昇を警戒する政策当局のサポートも期待されます。

「ウォールストリートの時代からメインストリートの時代への転換」が意味するもの
ベッセント米財務長官は自身のSNSで、「ウォールストリートの時代からメインストリートの時代への転換」と発言しました。それが意味するアメリカの製造業復活に向けた内製化の動きは、短期的に変動を伴うものであり、流動性に支えられて堅調に推移してきた金融市場にとっては、痛みを伴いかねないことには留意が必要です。
このような状況下で、株式・債券・為替がトリプル安となる局面も見られますが、それでも米国に代わる経済的存在感を持つ国がすぐに現れるとは考えにくく、その変化があるとしても時間を要するでしょう。当面米国を中心とした資産運用スタイルに大きな変化は訪れないと考えます。一方で、高まる不透明感のなか、投資妙味が増す債券を活用したポートフォリオの安定化は、引き続き有効な戦略でしょう。