2025年3月28日(金)21:30発表(日本時間)
米国 PCE
【1】結果:総合は前月から横ばいもコアは市場予想を上振れ前月から加速

2月の総合指数(すべての品目を含む)は前年比+2.5%となり、市場予想と一致し、前回からも横ばいとなりました。前月比ベースでも+0.3%と市場予想および前回結果と一致しています。
一方で、食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.8%となり、市場予想および前回結果をともに上回りました。前月比でも市場予想および前回結果を上回り、物価の伸びの加速が示されました。

【2】内容・注目点:サービス価格が伸びをけん引 財価格は関税の影響反映前
PCE価格指数とは、GDPを算出する際に家計の財・サービスの消費金額を集計する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)を基に作成される物価指数です。CPI(消費者物価指数)と同様に米国の消費段階における物価動向を測定する指標ですが、PCE価格指数の方が対象品目の幅が広く、また消費者の価格変化に伴う購買行動の変化をより捉えることができるため、FRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する際にはPCE価格指数をより重視しています。
インフレ目標2%と言った際、一般的にこのPCE物価指数の数値を指しています。CPIは速報性があるため、市場では注目度が高くなっていますが、より厳密にはPCE価格指数の方が重要であると言えるでしょう。
そして、今回2月の結果は、総合指数こそ市場予想通り前月から横ばいとなったものの、FRBがインフレ指標としてより重視するコア指数では、市場予想を上回って物価の伸びの加速が示されました。図表3の通り、コア指数の前月比の内訳をみると、今回の物価の伸びの加速の要因は、財価格が前月に引き続き同水準で上昇した中、サービス価格の伸びが加速したことが主な要因であることが分かります。

そして、図表4のサービス価格の内訳を見ると、今回サービス価格が加速した要因は、ヘルスケアが大きく上昇に転じたほか、金融・保険やその他サービスの伸びが加速したことにあると分かります。

ヘルスケア項目や金融・保険の一部の項目は、PPI(生産者物価指数)の数値が算出元として利用されています。実際、2月のPPIでは、総合の数値が鈍化を示した一方で、PCE構成項目は上昇を示していました(図表5参照)。そのため、PPIの詳細を事前に確認することで、今回のPCEの結果はある程度の想定ができたといえます。

インフレデータが高止まりを示すなかで、図表6の通り2月の個人消費支出は前月比+0.4%増となり、前月の0.3%減からは回復を示したものの、市場予想の0.5%増には届かず、やや下振れの結果となりました。ただし、水準として米消費は底堅さを維持していると言え、今のところ過度に悲観するほどではないでしょう。
一方、個人所得は、医療保険への税額控除や、医療機器メーカーやSNS企業などとの和解金といった一時的要因の影響もあって前月比+0.8%と大きく増加し、個人消費支出を上回った結果、貯蓄率は4.6%に上昇して8ヶ月ぶりの高水準となりました(図表6)。

貯蓄率の上昇は今後の消費支出の余力を示すものである一方、所得の増加が消費に回っておらず、米消費者が節約傾向を強めている状況であるとも読み取れます。
【3】所感:スタグフレーション的な組み合わせだが、引き続きハードデータを要確認
今回、2月のPCE価格指数では、総合指数は市場予想と一致し前月から横ばいとなったものの、コア指数が市場予想を上回って前月から加速となり、インフレ再燃懸念が高まる結果となりました。一方、インフレが高止まりを示す中、同日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数の確報値が下方修正されたことで、「インフレ×消費(景気)鈍化」のスタグフレーションが想起される組み合わせとなり、相場はリスクオフの様相を呈して下落しました。
物価動向については、今後、関税政策の影響が財価格へ反映されていくことを考慮すると、引き続き警戒が必要です。一方で、ミシガン大学消費者信頼感指数から米消費の減速懸念が強まりましたが、これらの調査はあくまで消費者のセンチメントを指数化したソフトデータで、実際の消費データなどのハードデータとは異なります。特にミシガン大学消費者信頼感指数は、支持政党別に回答結果が大きく分かれており(図表7参照)、政治色の強いこのデータがどれだけ実体経済に影響を与えるのかはやや不透明な部分があります。

このところ弱いソフトデータに対して堅調なハードデータが出る傾向が見られます。確かにソフトデータがのちの実体経済に影響を与える面はあるものの、今後の金融政策動向や実体経済を見極めていくうえでは、政治動向によってブレやすいソフトデータに過度に振り回されすぎず、ハードデータで経済を冷静に捉える姿勢が求められるでしょう。労働市場のハードデータとして最重要の雇用統計は4月4日(金)に公表予定です。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐