2024年2月14日(金)22:30発表(日本時間)
米国 小売売上高
【1】結果:総合、コア、コントロール・グループいずれも下振れ 前月分は上方修正
小売売上高(前月比)
結果:-0.9% 予想:-0.2%
前回:+0.7%(速報値+0.4%から上方修正)
自動車・同部品除く小売売上高(前月比)
結果:-0.4% 予想:+0.3%
前回:+0.7%(速報値+0.4%から上方修正)
コントロール・グループ(自動車、ガソリン、外食、建設資材除く小売売上高・前月比)
結果:-0.8% 予想:+0.3%
前回:+0.8%(速報値+0.7%から上方修正)

米国では、個人消費がGDPの約7割を占めることから、その動向を確認できる小売売上高に注目が集まります。
そして、今回1月の小売売上高は前月比-0.9%となり、市場予想(-0.2%)以上の減少となりました。一方、前月の結果は速報値の+0.4%から+0.7%に上方修正されています。
また、自動車の販売はセールなどの影響で月ごとに大きく変動するため、自動車を除いた小売売上高に注目が集まりますが、結果は前月比-0.4%で、0.3%の上昇を見込んだ市場予想に反して減少となりました。ただし、こちらも前月の結果は、速報値の+0.4%から+0.7%に上方修正されています。
一方、GDPの算出に間接的に用いられるコントロール・グループ(季節変動の大きい自動車、ガソリン、外食、建設資材を除いたコア小売売上高)は、前月比-0.8%で0.3%上昇を見込んだ市場予想に反して減少となりました。今回の結果を受け、アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)は、2025年第1四半期の実質GDP成長率(季節調整済み年率)の推定値を2.9%から2.3%に下方修正しています。
【2】内容・注目点:幅広い項目で売上減少 山火事や寒波など悪天候が影響か
好調だった前月の反動や天候理由で、幅広い項目で売上減少
自動車・同部品の売上減少が全体の下げをけん引
図表2に示されているように、1月の小売売上高は13項目中9項目で減少となり、幅広い項目で売上が減少となりました。

今回、全体の下げをけん引したのは、自動車・同部品の売上減少(前月比-2.8%)でした。前月は年末の販売セールや、電気自動車(EV)に対する税額控除の廃止を掲げていたトランプ大統領の就任前の駆け込み需要などから販売が好調(前月比+0.9%)でしたが、今回はその反動から売上減少となりました。また、1月はロサンゼルスの山火事の被害や、米国全土で記録的な寒波に見舞われたことから実店舗に足を運ぶ消費者が減ったことが売上減少の要因と考えられます。
その他、2月12日に公表されたCPI(米消費者物価指数)によると、中古車価格は1月に+2.2%と大きく上昇しており、12月の旺盛な需要を受けて販売会社が値上げを実行したものの、その戦略が奏功しなかった可能性も考えられます。
また、上述の天候要因により、実店舗での売上減少が幅広く見られ、スポーツ用品等趣味(-4.6%)や家具(-1.7%)、建設資材(-1.7%)、衣服(-1.2%)の売上減少が目立ちました。
無店舗小売りも減少、消費者の家計余力低下を注視
一方で、悪天候とはあまり関係しないであろうアマゾン・ドットコム[AMZN]などに代表される無店舗小売も前月比-1.9%と大きく減少しています。このことから、今回の小売売上高減少には、各所で指摘されている天候要因以外にも何らかの要因が作用している可能性があります。
とりわけ、オンラインショップの決済手段は主にクレジットカードであるため、家計の債務残高の増加やクレジットカード延滞率の上昇傾向が随所で指摘されている状況を踏まえると、今回の下落が天候や好調だった前月の反動減だけでなく、消費者の家計余力の低下を示すものではないか注視が必要です。
外食は前月比0.9%増加で売上増
一方で、ガソリンスタンドは前月比0.9%の売上増となりました。CPIなどにも示されている通り、1月にガソリン価格が上昇基調にあったことを反映しているものと考えられます。
また、小売売上高統計で唯一のサービス部門の項目となる外食も、前月比0.9%増加となりました。外食は、本来悪天候がマイナス要因となると考えられますが、今回は売上増となっていることから、逆説的に今回の全体の下げが天候要因であるとする説明力が弱くなっています。
【3】所感:一時的なノイズかトレンド変換の兆しか、ソフトデータと組み合わせた分析が求められる
売上減少には天候以外の要因も作用
今回の小売売上高は、総合、コア、コントロール・グループのいずれもが市場予想を下回り、中身を見ても幅広い項目で売上減少が見られたことから、これまで堅調な伸びを示していた米国消費の減速が示されました。
要因としては、ロサンゼルスの山火事や全米規模の記録的な寒波などの悪天候が実店舗の売上減少に影響したと考えられます。しかし一方で、天候とあまり関係ないであろう無店舗小売も売上が減少し、逆に天候と直接関係がありそうな外食は好調でした。そのため、今回の売上減少には天候以外の要因も作用していると考えられます。
さまざまな一時的要因の重なりが米国消費の減速理由か
年末商戦で好調だった前月の反動減や、トランプ大統領就任前の駆け込み需要の反動減など、さまざまな一時的な要因が重なった結果だとも考えられますが、米国消費者の消費余力が低下し始めている表れであるとすると注意が必要です。これらの見極めには、月末に公表されるコンファレンスボード消費者信頼感指数などのソフトデータと組み合わせた考察が求められるでしょう。
なお、小売売上高統計は翌月に修正される場合が多く(今回も前月分は上方修正が行われています)、単月の数値だけでなく、数ヶ月にわたるトレンドとして分析する必要があります。また、小売売上高は主に財の消費を対象としている点に留意が必要です。米国経済の大半はサービスが占めていますが、小売売上高統計のうち唯一、外食は好調でした。その他のサービス部門の消費動向も気になるところで、月末に発表される個人消費支出(PCE)を通じて、サービス部門を含む消費動向を確認したいところです。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐