先週(2月3日週)の振り返り=一時150円台まで米ドル/円下落が急拡大
日米10年債利回り差米ドル優位は3.1%台に縮小
先週は、トランプ米大統領がカナダ等への関税発動を決定、ついに「貿易戦争」が始まったとして、2月3日の日経平均株価1,000円以上の暴落からのスタートとなりました。その後すぐに、カナダ等への関税発動は1ヶ月の延期となりましたが、米ドル/円は一時150円台まで最大で5円近くもの一段安となりました(図表1参照)。

このような米ドル/円の一段安は、基本的には日米金利差米ドル優位縮小に沿ったものでした。日米10年債利回り差米ドル優位は、一時2024年12月上旬以来の3.1%台まで大きく縮小しました(図表2参照)。

金利差米ドル優位の縮小も大きくなった異例の展開
日米の10年債利回りを別々に見ると、先週の動きは少し異例だったようです。日米の10年債利回りは基本的には連動する傾向がありますが、先週は米10年債利回りの低下を尻目に日本の10年債利回りは大きく上昇する反対方向の動きが目立ちました(図表3参照)。相対的に低い日本の金利が上昇する一方で、相対的に高い米金利が低下したことから、金利差米ドル優位の縮小も大きくなりましたが、ではなぜそのような異例の展開となったのでしょうか。

まずは米金利低下から考えてみましょう。米金利の低下は、主に予想より弱い米経済指標がきっかけとなりました。米経済指標の中には予想より強い結果もあったのですが、なぜ米金利は低下要因に過敏に反応したのか。これについて私は、米金利「上がり過ぎ」の修正だったのではないかと考えています。
上述のように、先週はトランプ大統領の関税発動決定から始まりました。これに対して米金利はまず低下での反応となりました。これは、「貿易戦争」への警戒から株価が急落、リスク回避局面となったことから「安全資産」の債券が選好された結果とも言えなくはありません。
米10年債利回りは一時4.8%程度まで上昇
もともとは、関税の引き上げはインフレ懸念を再燃させることで金利上昇要因との見方も多かったと思います。そもそも米10年債利回りは一時4.8%程度まで上昇しましたが、これはまさにこの関税政策を含めたトランプ大統領の経済政策の金利上昇リスクを先取りした面が大きかったのでしょう。にもかかわらず、いざ実際に関税を引き上げるとなった時に米金利が低下したのは、すでに米金利が「上がり過ぎ」となっており、その転換が始まっている可能性を感じさせるものでした。
実際に、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米10年債ポジションは、売り越しが一時100万枚を大きく上回るなど空前の拡大となっていました(図表4参照)。これはトランプ大統領の経済政策による金利上昇リスクを警戒し債券を売り、債券価格が下落、利回りが上昇する動きが「行き過ぎ」となっていた可能性を感じさせるものでしょう。そうであれば、いよいよ関税引き上げが現実的になった時、債券はむしろ買い戻しとなり、債券利回り低下となったこと、そして弱い米経済指標の結果に過敏に反応して米金利低下が広がったことも納得できるのではないでしょうか。

いずれにしても先週米金利が低下する中で、日本の金利は上昇が目立ちました。本来、日本の金利は「世界一の経済大国」米国の金利の影響を強く受けますが、米金利が低下する中で日本の金利が上昇したのは、日米首脳会談でのトランプ大統領による日本の低金利と円安への批判を懸念した影響などが大きかったのではないでしょうか。
今週(2月10日週)の注目点=米金利低下がさらに広がるか
米ドル/円は、2ヶ月ぶりに52週MAを下回った
先週(2月3日週)の米ドル/円は、約2ヶ月ぶりに足下で152.2円の52週MA(移動平均線)を下回ってきました(図表5参照)。米ドル/円は2024年夏に一時139円まで下落が拡大する中で52週MAを大きく下回り、経験的には下落(米ドル安・円高)トレンドへ転換した可能性が浮上しました。そうであれば、トレンドと逆行する一時的な上昇は52週MAを1ヶ月以上と「長く」、5%以上と「大きく」上回らない程度にとどまる可能性が高いです。そうした意味では今回は異例と言えるほど「長く」52週MA以上での推移が続きましたが、それはやはりトランプ大統領の経済政策の影響が大きかったということでしょう。

今週(2月10日週)の米ドル/円は149~153円中心と予想
改めて米ドル/円が52週MAを下回ってきたことで、イレギュラーながら下落トレンドへの転換は間違っていなかったと考えるなら、この先はトレンドと逆行する一時的な上昇は52週MAを大きく、長く上回らない程度にとどまり、一段安へ向かう見通しとなるでしょう。
今週はCPI(消費者物価指数)など注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。それらの結果を受けて、すでに見てきたように米金利が「上がり過ぎ」修正局面にあるとの私の見方が正しいとするなら、米金利低下がどこまで広がるかが焦点となります。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は149~153円中心で予想したいと思います。