先週(1月20日週)の動き:マクロ型上昇続くNY金、トランプ新政権の不透明感続く

先週(1月20日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は4週続伸となった。2025年年初から特定の手掛かり材料によるイベント型上昇ではなく、幅広い政治経済の不透明性を映したマクロ型の上昇が続いている。1月20日に就任したトランプ米大統領の関税政策に関する不確実性が根強く、前週までインフレ再燃懸念もあり上昇基調を続けていた米長期金利の上昇が一服。同じく米ドル高の流れも一服したことで金市場は週を通し買いが先行した。

トランプ新政権に関連する不透明感

トランプ米大統領が就任初日のいわゆる「Day1」にでも、世界一律関税や中国などへの追加関税の即時発動などをするのではないかと市場は警戒していたが、具体策を打ち出すことはなかった。気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」と世界保健機関「WHO」からの離脱の決定など、まずは前政権の政策の否定からスタートした。

1月21日は欧州連合(EU)に関税を課す考えを表明した。また、中国からの輸入品に対して2月1日から10%の関税発動を検討していると明らかにした。ただ、中国製品に対する10%の関税は、選挙運動中に約束した60%の税率よりもはるかに低い。カナダやメキシコからの輸入品には2月1日から25%の関税をかける意向を示したものの、それもどうなるか具体策や着手を見ないと動きが取れないとの疑心暗鬼が生まれている。

第1期政権と比べ周到な準備をした上で政権スタートに臨んだと見られていたが、不規則発言など不透明感が漂い、市場は方向性を見いだせないでいる。実際に1月23日夕には米FOXニュースのインタビューで、できれば中国に関税を課したくないとの考えを示したと伝わった。

実態としては選挙戦時の大言壮語を含む公約と、政権発足後に公表されている政策方針のかい離に、状況の変化により追加的な政策発動があるのでは、という市場内に残る警戒感が不透明要因となり金市場での買いにつながっている。

FRBに利下げ要求のトランプ発言、NY金最高値に接近

こうした環境の中でNY金は週初から徐々に水準を切り上げ、概ね2,760~2,770ドルを中心レンジに週末1月24日には一時2,794.80ドルと2024年10月31日以来の高値を付け2,778.90ドルで週末の取引を終了した。前日23日にスイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)にオンラインで登壇したトランプ大統領が、サウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)に原油価格の引き下げを要請する方針を示すとともに、FRB(米連邦準備制度理事会)に対し利下げを要求したことが、NY金を押し上げた。

結局NY金は週間ベースで30.20ドル、1.1%の4週続伸で終了した。レンジは2,722.70~2,794.80ドルとなった。なお、1月24日までの4週間で147.00ドル、5.59%の大幅上昇となっている。

国内JPX金、店頭小売価格ともに過去最高値更新

一方、国内金価格はNY金の上昇をそのまま映す形で2024年10月末に記録していた過去最高値を更新した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は1月23日の終値ベース(1万3934円)および1月24日の取引時間中の高値(1万3985円)双方で過去最高値を更新した。

1月24日、日本銀行は金融政策決定会合にて大方の予想通り政策金利を0.25%引き上げ0.5%にすることを決定した。植田総裁はペースやタイミングは経済・金融情勢次第としつつも、今後も利上げを続ける方針を表明した。ただし、利上げ方針は事前に織り込みが進んでいたと見られ、前週末比の米ドル/円相場は0.28円高と水準に目立った変化は見られなかった。国内価格は円高による目立った押し下げは見られず、NY金の変動をそのまま映すことになった。

JPX金の週足は前週末比271円、1.2%上昇で反発となった。レンジは1万3544~1万3985円となった。なお、10%の消費税込みで表記される標準的な店頭小売価格も1月23日に1万5283円と過去最高値を更新した。

NY金買い建て(ロング)増加で過熱感

前述のように4週続伸で大幅高となり、最高値に接近したNY金だが、毎週末に発表される米CFTC(米商品先物取引委員会)のデータでは、短期筋のファンドによる買い建て(ロング)の大幅増加が確認されている。

2024年12月24日から2025年1月21日に至る4週間で買い建て(ロング)は重量換算で155トン増え、728トンまで積み上がっていることが判明した。2024年10月末に2,800ドルを超える過去最高値を付けた際の水準でもあり、短期的な過熱感は否めない。その一方で興味深いのは、先週、金ETF(上場投信)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア」の残高が連日減少し、その減少量は約19トンに上っていることである。目先筋は2024年10月の高値を上抜くことで、テクニカル上のセンチメントの好転を狙っている可能性がありそうだ。仮に抜けない場合には、2番天井という形で反落という可能性もあるだろう。いずれにしてもNY金に関しては、ファンドの投機的な買い攻勢が強まり過熱感が指摘できる。

今週(1月27日週)の見通し:FOMC後のパウエル発言に注目、NY金は2,750ドル前後、JPX金は1万3750~1万4000円のレンジ

今週(1月27日週)もトランプ新政権の政策方針に絡んだ不透明感は残ることで、不測の市場変動を想定しつつ臨むことになる。

その中で今週は1月28~29日の日程でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される。堅調な需要と根強いインフレを背景に、当局は政策金利を据え置くと広く予想されている。会合後の記者会見でのパウエル議長の発言に注目したい。1月17日にウォラーFRB理事が「インフレと労働市場の動向次第では0.25%の利下げが今年最大3~4回あり得る」と述べた経緯もあり、トランプ大統領による利下げ要求発言との関連からも要注目と言える。

1月30日発表の10~12月期の米国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率2.7%増と見込まれている。個人消費が押し上げる状況に変化はないか確認したい。マイクロソフト[MSFT]やメタ・プラットフォームズ[META]、テスラ[TSLA]、アップル[AAPL]などハイテク大手の決算も割高が指摘される株式市場との関連で注目したい。

今週(1月27日週)のNY金は前述したように過熱感からレンジをやや切り下げ2,750ドルを挟んだ動きに移行すると見る。パウエル議長の政策金利の着地点を巡る発言などで上下に振れる可能性がありそうだ。

JPX金については、先週1月24日の夜間取引にて一時1万4047円まで買われたが、NY金の動向に左右されながら1万3750~1万4000円の比較的狭いレンジでの動きとなりそうだ。