今回は2025年の初回と言うことで、まずは2024年のまとめからスタートしましょう。

2024年のNY金は2010年以来の上昇率

2020年を基点に複数年の上昇トレンド続く金(ゴールド)

歴史的な上昇相場となった2024年の内外金価格だが、2020年に始まった複数年の上昇トレンドの途上での「通貨性の復権」を映した上方修正の動きと捉えている。2020年を基点とするのは、新型コロナパンデミックに対抗する意図的な経済活動封鎖の弊害を抑えるFRB(米連邦準備制度理事会)による空前の量的緩和策(QE)の着手が、相場の質を変えたことによる。

2024年末にかけてニューヨーク金先物価格(NY金)は、米国経済指標の好調さとFRBが今後の利下げ方針を緩やかなものに変更したことを受け、米長期金利の上昇が注目された。合わせて米ドルが対ユーロを中心に主要通貨に対し上昇を続けた。米国のインフレ動向や財政政策を巡る不透明感の強さも金利上昇につながった。いわば金市場にとって逆風の中で、NY金は比較的堅調に推移し、年末12月31日の通常取引は2,641.00ドルで終了していた。

2024年のNY金は年足でみて前年比569.20ドル、27.5%の続伸で、2010年以来の大幅高となった。一方、大阪取引所のJPX(日本取引所)金価格は、42%の続伸に。10%の消費税込みで発表される指標的な国内店頭小売価格も、2024年はグラム当たり前年比3,956円、40.8%の大幅続伸となった。内外価格の上昇率の違いは為替要因(円安が国内価格の押し上げ)による。

通貨性の有無が他の貴金属との価格差拡大の背景

他の貴金属を見ると、2024年銀(NYシルバー)は、前年比21.4%の上昇となった。上昇率ではNY金を6%下回り、いわゆる金銀比価(銀価格に対する金価格の倍率)は2023年末の86倍から2024年末は90.3倍に拡大。無国籍通貨として通貨性が注目された金(ゴールド)と通貨性を有しない銀(シルバー)の資産性の違いが価格差の拡大につながっている。

一方、白金(プラチナ)は前年比9.8%安、パラジウムは同18%安といずれも年間ベースで続落した。産業用メタルの世界的需要国である中国経済の低迷がシルバー含め産業用需要の比率の高い貴金属相場に影を落としている。PGM(白金族メタル)については、自動車の排気ガス浄化装置の触媒需要が大きな柱だが、業界で続くEV化(電気自動車の普及拡大)の流れは、強弱はあれ着実に進むとみられ、将来需要への懸念が上値を抑えている。

2025年、上昇トレンド継続の基調的要素

2025年のNY金の相場展開は、引き続き地政学要因は言うまでもなく、内外政治経済に不透明要因が多く存在することから、上昇ピッチこそ落ちるものの、上昇トレンドは続くとみている。引き続き価格をサポートするものに以下の基調的要素があり、その上で地政学リスクや米国を中心とする金融波乱の可能性など個別イベントにゴールドは上昇で反応するものと捉えている。

「2025年も継続する上昇トレンド、基調的要素」
①ゴールド、通貨性の復権・・・・・モノから通貨(無国籍通貨)
②需要構造の変化・・・・・・・・・中央銀行の購入継続、購買力を高めた新興国個人の買い
③アセット(資産)としての認識・・多くの不透明要因への対応策として機関投資家および個人でも認知定着

2025年も高値更新、年後半に山場か

年明け以降も、米国経済指標は好調を維持し、年初から続いている複数のFRB高官の発言からは、インフレ再燃への警戒がにじみ、労働市場への対応とのバランスに苦慮する姿が見えている。同時にFRB内部での見解の相違も目立っている。こうした現状自体が不透明要因だが、さらにかく乱要因として米トランプ新政権の政策を巡る不透明要因が加わる。

2024年同様不確実性に満ちておりゴールドを手放せない環境が続きそうだ。2025年もNY金の最高値更新を見込むが、年後半に相場の山が訪れるとみている。

先週(1月6日週)の動き、逆風の中でNY金2,700ドル台復帰

先週(1月6日週)も2024年末以来続く米長期金利の上昇が市場の注目材料となった。底堅い米景気を背景にFRB(米連邦準備理事会)が利下げを当面休止するとの見方が広がり、米債売りが続き利回りは上昇。先週1月10日に発表された2024年12月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は25万6000人増加し、市場予想の16 万人増を上回った。失業率も4.1%と、前月の4.2%から低下したこと受け、FRBによる年内の利下げ観測は大幅に後退した。

米長期金利の指標となる10年債利回りは10日、4.679%と2023年10月31日以来1年2ヶ月ぶりの高水準で終了。

ドル指数(DXY)は年初来高値を更新し、一時109.966と2022年11月10日以来2年3ヶ月ぶりの高水準まで上昇して109.650で終了。

米ドル金利とドル指数の上昇は過去のパターンではNY金の大きな売り手掛かりとなるが、1月10日は一時2,735.00ドルまで付け2,715.00ドルで終了する逆行高状態で終了。終値ベースでは2024年11月5日以来の高値に。つまり米大統領選の結果判明前の水準に近付いたことになる。

週足は前週末比60.30ドル、2.27%の続伸ということになる。一方、JPX金もNY金の上昇に加え、米ドル/円相場が一時158.86円と2024年7月来の円安水準となったことを受け上昇。前週末比323円、2.4%高の1万3701円で終了した。2024年10月31日以来の高値となり、終値ベースでの過去最高値1万3780円に接近している。

中国人民銀行(中央銀行)2ヶ月連続で金準備増加

金市場の内部要因としては、1月7日に発表された中国人民銀行の外貨準備統計にて金(ゴールド)の持ち分が2ヶ月連続で増加していたことが判明した。12月の増加分は33万オンス(10.26トン)と前月比倍増し人民銀行の持ち分はIMF(国際通貨基金)届け出ベースで7,329万オンス(約2,280トン)となった。

前述のように先週のNY金は、向かい風の中で大きく上昇したが、ちょうど中国国内では今月末(1月29日)の春節が近づく中で現物の需要が高まる時間帯に入っていることも上昇の背景にありそうだ。人民銀行の買いは、中国個人の金相場に対する強気センチメントを押し上げているとみられる。