2024年12月20日(金)22:30発表(日本時間)
米国 PCE
【1】結果:市場予想を下回る物価の伸び、個人消費支出は底堅い

11月の総合指数(すべての品目を含む)は前年比+2.4%となり、前月の+2.3%から上昇したものの、市場予想の+2.5%を下回りました。一方、前月比では+0.1%にとどまり、市場予想や前回結果を下回る結果となり、物価の伸びが鈍化していることが確認されます。
また、食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.8%で、市場予想を下回り前月から横ばいとなりました。前月比でも市場予想や前回結果を下回り、こちらでも物価の伸びの鈍化が見られます。

一方、11月の米国個人消費支出は前月比+0.4%と市場予想を下回りましたが、前月の+0.3%(+0.4%から下方修正)を上回り、20ヶ月連続の増加となりました。
【2】内容・注目点:サービス価格の鈍化の内訳に注目
PCE価格指数とは、GDPを算出する際に家計の財・サービスの消費金額を集計する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)を基に作成される物価指数です。CPIと同様に米国の消費段階における物価動向を測定する指標ですが、PCE価格指数の方が対象品目の幅が広く、また消費者の価格変化に伴う購買行動の変化をより捉えることができるため、FRBが金融政策を決定する際にはPCE価格指数をより重視しています。インフレ目標2%と言った際、一般的にこのPCE物価指数の数値を指しています。
CPIの方が、速報性があるため市場では注目度が高くなっていますが、より厳密にはPCE価格指数の方が重要であるといえるでしょう。そして、今回11月の結果は、前年比ベースで市場予想を下回ったほか、足元の物価動向を確認できる前月比ベースでは、総合・コアいずれも前月からの伸びの鈍化が確認できました。
図表3の通り、コア指数の前月比の内訳をみると、今回の物価の伸びの鈍化の要因はサービス価格の低下が主な要因であることが分かります。

そして、サービス価格の内訳をみると、今回サービス価格が鈍化した要因は、交通サービスとその他サービスがマイナス寄与に転じたことに加え、金融・保険サービスと住宅価格・公共料金の伸びが鈍化した点にあります(図表4参照)。

交通サービス価格の低下は主に航空運賃の低下を反映したものであり、その他サービス価格の低下はインターネットや電話料金など通信費の低下が主因です。
また、金融・保険サービスの鈍化は、ポートフォリオ管理費が前月の+2.7%から11月には-0.6%に低下したことが主な要因です。
そして、これまで粘着性の強かった住宅・公共料金も前月の+0.44%から今回+0.22%に鈍化しました。住宅価格の鈍化は、持ち家住宅の帰属家賃が2021年1月以来の最低の伸び率(+0.23%)となり、賃料も2021年4月以来の最低の伸び率(+0.21%)にとどまったことを反映しています。さらに、10月に急騰していた電気料金が今回低下(+1.2%→-0.4%)したことで、公共料金も鈍化しました。
航空運賃やポートフォリオ管理費については、PPIの数値が算出元として利用されています。実際、先日公表されたPPIでもこれらの項目は低下を示していました。そのため、PPIの詳細を事前に確認することで、今回のPCEの結果はある程度の想定が出来たといえます。
こうした中、個人消費は底堅さを維持しており、11月の個人消費支出は前月比+0.4%増で20ヶ月連続の増加を記録しました。一方、個人所得は前月比+0.3%増にとどまり、個人消費支出を下回った結果、貯蓄率は4.4%に低下しました。
なお、9月に発表された米国第2四半期実質GDP確報値で、2019年以降のGDPとGDI(国内総所得)データが改定されています。特にGDIは2021年以降の結果がほぼすべて上方修正され、その影響で貯蓄率は2024年以降のデータが大幅に引き上げられています(図表5参照)。

【3】 所感: 2025年の利下げペース鈍化への過度な懸念が和らぐ安心感のある結果
今回、11月のPCE価格指数が前年比で市場予想を下回り、前月比でも鈍化を示したことで、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後に広まっていた2025年の利下げペースの鈍化に対する過度な懸念が和らぐ結果となりました。内訳を見ても、インフレ再燃・加速を示唆する要素は特になく、安心感を与える内容だったと言えます。
一方、今回の個人消費支出や先日の小売売上高から見ても、米国消費は底堅く、米経済が依然として良好である様子が示されています。
市場の懸念が和らぐ安心感のある結果となったなか、2025年1月3日(金)の雇用統計まで主だった材料に乏しく、加えて海外投資家はクリスマス休暇に入ることから、しばらく閑散相場となりそうです。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐