2026年5月8日(金)日本時間21:30発表
米国 2026年4月雇用統計、他
【1】結果:雇用者数は市場予想を上回る伸び、失業率はほぼ横ばいも小幅に上昇
2026年4月の非農業部門雇用者数は前月比11.5万人増となり、市場予想の6.5万人増を上回り、ポジティブサプライズとなりました。雇用の長期トレンドを確認しても、底打ちが意識される内容といえます(図表1-1)。
内訳を見ると、2026年4月は民間セクターで雇用の増加が確認されました(図表1-2)。医療・教育を除いたサービスの雇用者増が全体を支える構図で、政府部門は4月、前月比8,000人減となり小幅ながら7ヶ月連続で減少が続いています。
失業率は小数点以下2位までの数値では4.34%となり、前回から0.08ポイント上昇しました(図表2-1)。就業率、労働参加率はそれぞれ前月比で0.01ポイント低下しています。緩やかなペースながら、労働力人口がピークアウトしている(図表2-2)ことが主因で、失業率は横ばい圏で推移しています。
【2】内容・注目点:先行きの労働市場は低成長が続く見込み
5月8日の米国株式市場は、非農業部門雇用者数のポジティブサプライズもあってS&P500株価指数は前日比0.8%高となりました。市場予想を上回る雇用増から、労働市場が想定以上に強かったことが示唆され、物価と雇用の安定を政策目標とするFRB(米連邦準備制度理事会)にとって、雇用を支えるための追加利下げ期待を後退させるものと考えられます。
しかし、図表2-1にもあるように、失業率はわずかながら上昇したことから、市場の利下げ期待はやや上昇しました。もっとも、失業率は小幅な振れを伴いつつも、概ねFOMCメンバーの見通し(2026年の失業率は最新3月時点で4.4%)に沿って推移していると言えるでしょう。
先行きの雇用市場については、ここ数ヶ月と同様に、失業率は横ばい圏で推移し、雇用者数は低めの増加ペースにとどまる展開を見込んでいます。リスク要因としては、景気循環的な雇用需要の鈍化により、雇用者数の減少が数ヶ月続くケースが挙げられます。その場合には、失業率が徐々に切り上がる可能性があります。
足元では、労働力人口の伸びが鈍化するなかで、失業率を安定させるために必要な雇用増加数、いわゆるブレイクイーブン雇用者数が、過去に比べて低下している点が指摘されています。実際に、FRBの推計によれば、2026年のブレイクイーブン雇用者数はゼロ近傍まで低下するとされています(図表3)。
ブレイクイーブン雇用者数の低下は、米国労働市場の構造的な変化を反映したものと考えられます。具体的には、純移民の急減による人口増加ペースの鈍化に加え、高齢化に伴う潜在的な労働参加率の低下が、潜在労働力人口の伸びを大きく押し下げています。このため、失業率を安定させるために必要な雇用増加数は、過去に比べて大きく低下しているとみられます。
図表3の推計からは、雇用者数の伸びが従来よりも小幅にとどまっても、必ずしも失業率の上昇を意味しないことが示唆されます。一方で、雇用の伸びが明確にマイナスへ転じ、それが数ヶ月継続する場合には、労働需要の循環的な弱さが表面化し、失業率の上昇につながる可能性があります。この点が、先行きの労働市場における主な下振れリスクと考えられます。
【3】所感:労働市場よりも物価をリスク視する局面
上記では労働市場におけるリスク要因を指摘しましたが、雇用に関するリスクよりも中東情勢や、そこから波及する資源価格や食料品価格の上昇といった上振れリスクのほうが、相対的には大きい局面です。
もっとも、米国経済は底堅く推移しており、ISM製造業/非製造業景気指数は最新4月分のデータでは、ともに節目とされる50を上回って推移しています。雇用の伸びが低くても、労働生産性の伸びがそれを上回れば、経済全体は成長していくとされますが、昨今の人工知能(AI)の急速な発展も一部に寄与していると考えられます。
米国の金融政策運営を占う上で、今週の5月12日・13日に発表予定であるCPI・PPIが注目され、物価の上振れが確認されるかが焦点となりそうです。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
