リスクとリターンはトレードオフ

資産を増やすためには「運用利回りを高くする」方法もあります。しかし、運用利回りは、投資先のリスク(リターンのブレ幅)によって変わってきます。

リスクとリターンにはトレードオフの関係があり、ローリスクならばローリターン、ハイリスクならハイリターンになるという具合です。

投資信託の場合、どの資産に投資しているか、どの地域に投資しているかによってリスクとリターンの度合いが変わってきます。一般的に「債券<不動産<株式」「国内<先進国<新興国」の順番でリスク・リターンが高くなる傾向にあります。

【図表1】金融商品のリスク・リターンのイメージ図
出所:(株)Money&You作成

マーケットは上昇と下落を繰り返してきた

過去の記事では運用利回りを3%と仮定して「毎年固定」で長期間続く、綺麗に右肩上がりになるグラフをお見せしてきましたが、実際には固定利回りが全期間にわたり、ずっと続くということはありません。過去の株価を見ると、上げ下げしながら推移していることがわかります。

【図表2】S&P500の推移(1980年1月~2024年10月)
出所:Bloombergを元に(株)Money&You作成

米国株価指数「S&P500」の推移を見ると、国内外のさまざまな金融・社会情勢の変化などの影響を受け、上がったり下がったりしていることがわかります。大きな暴落もたびたびあります。投資時期や投資期間によっては、利益が出ているときもあれば、損失を被っているときもあるでしょう。

運用利回りは、一定期間において、元本に対していくら増えたのかという結果で決まるものなので、投資時期や期間によって変わります。運用利回りが高いものはそれだけ、リターンのブレが高くなります。少し早くお金を増やしたいからと、ハイリスクな商品を選んでいると、大きく値下がりする可能性も当然にあるわけです。

リスク許容度に見合った投資をすることが重要

投資で重要なことは、運用利回りを高くすることではなく、自分のリスク許容度(いくらまでだったら損に耐えられるかという度合い)に合わせて投資先を選ぶということです。NISAでの投資・運用は長い付き合いになっていきます。自分の感情を上手くコントロールしながら、資産形成を行うためには、リスク許容度に見合った投資が不可欠です。

リスク許容度が低い(=損をしたくない気持ちが強い)のであれば、国内外の株や債券に均等に投資する「4資産均等型」などのバランスファンド、リスク許容度が高い(=損をする可能性が高くてもリターンを狙いたい気持ちが強い)のであれば、全世界株や米国株に投資するファンドを選ぶという具合です。インド株など新興国株に投資するファンドも候補になってくるでしょう。

バランスファンドで目指す運用利回りは年3~5%、全世界株式に連動する指数を連動するインデックスファンドや米国株の代表的な指数に連動するインデックスファンドで目指す運用利回りは年5%超が1つの目安になるでしょう。保有コストを意識すれば、信託報酬が低いバランスファンドやインデックスファンドがベターです。

ステップアップしたい方は、成長投資枠で個別銘柄を

「積立投資額を段階的に増やす」例の場合、NISAの非課税投資枠が約400万円残っています。投資資金に余裕があるならば、成長投資枠で個別株にチャレンジするというのも1つの手です。個別株を活用して、株主優待を生活に役立てることや、値上がり益や配当金でプラスアルファの資産形成を狙うのも面白いでしょう。

値上がり益と配当金狙いの戦略として、高配当株ファンドやETFに投資するのも一案でしょう。ファンドやETF1本で複数の高配当株に分散して投資することができます。

以上、複数回に分けてNISAの積立投資シミュレーションを紹介してきました。しかし、これはあくまでも参考情報であり、運用成果を保証するものではありません。運用成果によっては元本割れを起こす可能性もある点にはご留意ください。

NISAは無理のない積立金額からスタートし、運用期間や昇給などに合わせて投資金額を増やし、堅実にお金を増やしていきましょう。