2024年12月13日(金)8:50発表
日本 日銀短観2024年10-12月期

【1】結果:業況判断DIはまちまち 先行きは悪化が見込まれる

2024年10-12月期の日銀短観における業況判断DIは、前回7-9月期から1ポイント拡大の15%ポイントとなりました。前回7-9月期時点の先行き予想は11ポイントと低下が見込まれていたところ、一転して小幅に拡大する結果となっています(図表1、右を参照)。

翌四半期の先行き見通しは、業況の悪化を回答する企業が増えて今回の結果から5ポイント低下の10%ポイントが示され、先行きへの懸念が意識される内容です。中長期的には、コロナ禍前のピーク(16%ポイント)と同水準であり、先行き予想の通りであれば、春先で頭打ちとなる可能性があるでしょう(図表1、左を参照)。

【図表1】企業規模合計・全産業の業況判断DIの推移(「良い」-「悪い」、%ポイント)
※点線は先行き、右図薄線は7-9月期時点の先行き、シャドーは景気後退期
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

業態、企業規模別に業況判断DIを確認すると、大企業は製造業・非製造業ともに横ばいで先行きは悪化が見込まれています。中堅・中小の製造業は、ここまで上昇基調であるものの、先行きは悪化となっています。非製造業は規模問わず、コロナ禍以来となる大きな落ち込みが予想されており、全体として先行き不安が示される内容となりました。

【図表2】業態・企業規模別 業況判断DIの推移(「良い」-「悪い」、%ポイント)
※点線は先行き、シャドーは景気後退期
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:設備投資計画は小幅に改善、今回の計画通りに実施されることに期待

今年度の設備投資計画は、前回7-9月期から0.8ポイント拡大となる前年度比9.7%増となりました。12月時点での設備投資計画は過去2年と比較すると弱さがうかがえます。また、平均的には実際の設備投資(翌年6月発表)は計画よりも下振れる傾向があることから、今期の設備投資は前年度比5~7%程度となる可能性が高いでしょう。

ベストケースとして、過去2年と同水準の10%程度で着地ができれば、7-9月期は減速が見られたGDP民間設備投資に対してもプラス寄与が期待できると考えられます。

【図表3-1】全産業 設備投資計画修正の推移(前年度比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

設備投資計画を業態・企業規模別に確認すると、製造業が計画を下方修正する一方で、非製造業は上方修正していることがわかります。業態間でオフセットされ、全体では横ばいといった内容が推察されます。製造業は大企業・中小企業ともに10%以上の設備投資計画が示されており、さらなる加速を期待することは難しいもとのと推察されます。現状の計画通りに設備投資が実施できることが重要なポイントとなるでしょう。

【図表3-2】業態・企業規模別 設備投資計画修正の推移(前年度比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【3】所感:物価見通しは2%強が浸透、利上げは1月を予想

直近では、日銀の政策金利を修正する材料として短観が注目されていました。上述の通り、企業の景況感はまちまちで、(通例として見通しは保守性がうかがえるものの)先行きでは懸念が残る内容となっており、利上げ判断を難しくさせる内容にも考えられます。

一方で正常化に向けて、企業の物価見通しは全産業を平均すると1~5年後ともに2%強と、インフレ期待も日銀のターゲットに沿った水準が浸透してきている様子がうかがえます。足元では市場とのコミュニケーションがフォーカスされており、難しいかじ取りとなる中で、来週の金融政策決定会合と年初の氷見野副総裁の講演にて市場の反応を見ながら、1月に利上げ実施となると考えています。

【図表4】企業の物価見通し
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太