最近オルタナティブ投資が世界的に拡大しています。オルタナ投資とは、非伝統的な投資全般を指し、主にプライベートエクイティ(デット)や、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル、不動産、インフラ投資などがあります。世界のオルタナ投資の資産残高は2023年末の16.8兆ドル≒2500兆円から、2029年には4500兆円まで拡大すると予想されています(プレキン予想)。世界の年金は、オルタナ投資に運用資産の平均20%を振り向けていますし、米国の大学の平均も58%となっています。
一方日本の市場規模は、まだ数十兆円程度と思われます。大手投資家としては、ゆうちょ銀行や一部のメガバンクやGPIFなどがありますが、運用額は、それぞれ数兆円から10兆円強と、資産全体に対して数%に留まっています。金額はそこまで大きくないですが、比率的にもっと高いのは大学で、東大は60%をオルタナ投資に回しており、東北大学も今期中にオルタナ投資を始め、今後5割程度まで増やす意向と報じられています。
近年では、非上場のまま、社債も発行せずに成長していくユニコーン企業やその予備軍が増加していますので、今後は、伝統的な債券・株式市場のみで運用していると企業の成長が十分に取り込めなくなる懸念があります。このため、年金や大学のように、突然資金が流出するようなリスクが低い団体は今後さらにオルタナ投資を増やしていくのでは、と思われます。
このような流れの中、足元では日本の富裕層も動き出した印象です。今年2月に設定されたブラックストーンのPE投資ファンドは、最低投資単位が5万ドル(≒750万円)と高めであるにも関わらず、総資産は2000億円を超えています(10月末時点)。その他にもいくつかのオルタナ投資ファンドがデビューしています。
現在、日本の個人は、0.125%などといった極めて低い預金金利に甘んじ、この資金で銀行が、非上場企業への投融資を行っています。語弊があるかもしれませんが、銀行は、いわば個人マネーのリターンの 『中抜き』をしていることになります。金利の上昇で、銀行の利鞘、すなわち中抜き部分は一層拡大するとみられています。もちろん、巨大な仲介業者が存在することで金融市場の安定がもたらされていることも事実ですが、少なくとも預金の一部は直接の投融資にシフトしてもいいのでは、とも思います。
オルタナ投資と聞くとまだ少し怪しい感じもしますし、手数料が高いので二の足を踏む方も多いと思いますが、今後の市場拡大を考えると個人の方々にとっても重要な投資候補になるのでは、と思います。