今週は米国出張です。さきほど、ニューヨークからフロリダへのフライトが時刻通りに到着したところです。明日は、当社の米国子会社トレードステーションで終日ミーティング。米国出張のたびに何かしらのトラブルに見舞われる私ですが、今回も例に漏れず、小さなアクシデントが続いています。

ニューヨーク到着は日曜の夜23時頃。JFK空港の入国審査は長蛇の列で、なかなか進まない…。トランプ政権の影響で手続きが厳格化されたのか?などと考えつつ、電話会議に入りながら少しずつ進む列の中にいました。ところが質問内容はいつもと変わらず、拍子抜けするほどあっさり通過。やっとのことでホテルに到着したのは深夜1時半過ぎ。ところが今度は、予約が「ウェイティングリスト扱い」になっていて、部屋が確保されていないというのです。半年も前に予約しており、変更履歴もメールで残っている旨を説明し、ホテル側もすぐにミスを認めてくれたのですが、システム上の修正や部屋の調整に時間がかかり、最終的に部屋に入れたのは午前2時半…。レセプションのスタッフ(とても親切な方でした)が、「もう!トランプ政権で混乱ばかり!」と嘆いていましたが、私は心の中で「このホテルのミスは関係ないよね…」と思いながら話を聞いていました(笑)。

他にもアポが飛ぶというトラブルが起きたり、てんやわんやです。ただ、やはり「現地に来たからこそ」感じられることがあります。特に今回は、今アメリカで起きている「社会の揺れ」を、肌で感じる機会になっています。トランプ政権について、「ひどい!」「混乱しかない!」「関税交渉は間違っている!」という意見が多く聞こえてきますが、「DEIにしても政府機関にしても、バイデン政権の時に行き過ぎたもので、それを修正しているだけ」という意見もあります。特に印象的だったのは、ある方との会話で、「DEI(多様性・公平性・包括性)」に関する私の考えが、今の米国では「保守的」と見なされると知ったことです。

私は以前から、DEIに数値的な目標を設け、当該数値達成に向けたアプローチを取ることには懐疑的でした。本来は、DEIによって実現したい組織のゴールがまずあり、「どのような成果を出したか」という観点で評価することが、真の意味での多様性につながると考えてきたのです。つまり、DEIの目的を明確にし、その達成手段として、いわゆるメリトクラシー(能力主義)を軸に置く。それが本来の姿だと信じています。

その考えはどちらかというとリベラル寄りと思っていたのですが、今のアメリカでは、「性別や人種などの属性を見ずにパフォーマンスで評価する」というメリトクラシー的な立場が、逆に「保守」とラベリングされることがあるようです。DEIに対する支持・反対が政治的対立と密接に関連していて、価値観の対立が激化した結果、メリトクラシー(能力主義)とDEIが対立する構図が形成されているのでしょう。なかなかややこしいです。まさに、イデオロギーの分断です。

こういった対立はこれからも続くのだと思いますが、個人的には、ゴール達成や貢献をベースに、多様な価値観と能力が共存できる組織・社会を築いていきたいです。どのような時代、どのような社会であっても、「多様な価値観を尊重し、サステナブルに成長する組織づくり」を目指し続けたい。そんな思いを持ちながらフロリダ行きの機内に乗ったところ、お隣の席の方から話しかけられ、やはりまた、トランプ政権の話、関税の話、ビジネスへの影響の話に…。

さて、明日はフロリダで、現地社員たちとのミーティングが朝から目白押しです。現場の声をしっかりと聞き、今のアメリカをさらに深く理解できればと思います。これ以上ハプニングが増えませんように…(笑)。