モトリーフール米国本社 – 2024年11月17日 投稿記事より

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]は、美容小売りチェーンを展開するアルタ[ULTA]の株式に2億6,600万ドル超を投資しましたが、それからわずか1四半期後の第3四半期に、今度は持ち分の95%超を売却しました。

バフェット氏を支持する人々にとって、この動きは想定外だったかもしれません。オマハの賢人と呼ばれるバフェット氏は長期投資家として知られ、条件さえ揃えば「お気に入り銘柄の保有期間は永遠だ」と公言しているほどです。同氏の保有銘柄の中には、コカ・コーラ[KO]、アメリカン・エキスプレス[AXP]、ムーディーズ[MCO]のように、数十年にわたって保有している銘柄もあります。

バークシャー・ハサウェイがアルタ株の大半を売却した理由は分かりませんが、これは、一般投資家にとっても参考にすべき動きなのかみてみましょう。

アルタは複数の課題に直面している

アルタの株価は長期にわたって好調に推移してきましたが、個人消費の低迷や競争の激化によって売上高の伸びが鈍化し、最近では苦戦を強いられています。2024年春に経営陣がガイダンスを大幅に引き下げたことを受けて株価は落ち込み、今ではバリュー株の水準にあるため、それがバフェット氏の目に留まったのかもしれません。

現在、アルタの株価収益率(PER)は15倍未満であり、2007年の新規株式公開(IPO)以来1,100%超のリターンを上げている銘柄にしては、相当割安と言えます。

化粧品業界全体に言えることですが、パンデミック後に売上高は急増しました。経済が再開し、ナイトライフやオフィスへの出社など、化粧品支出につながる活動が戻ってきたためです。

2024年に入り、美容トレンドが正常化したこともあり、売上高は伸び悩んでいます。業界全体の売上高は、2010年代と同程度の1桁台前半~半ばの成長に戻ると予想されています。

アルタの第2四半期(8月3日まで)の既存店売上高は、前年同期比1.2%減、総売上高はわずか1%増の25億5,000万ドルにとどまりました。

利益も低調で、粗利益率は39.3%から38.3%へ低下し、販売および一般管理費は6億70万ドルから6億4,480万ドルへ増加し、売上高販管費率は23.7%から25.3%へ上昇しました。その結果、第2四半期の営業利益率は15.5%から12.9%へ低下し、1株当たり利益(EPS)は6.02ドルから5.30ドルへ減少しました。

業績は低迷しているが、競争優位性もある

これらの数字を見ると、アルタの苦戦は明らかです。同社は業界内の競争激化を指摘しており、「過去3年間で1,000店舗を超える小売店が新たにオープンした」と述べています。

しかし、経営陣は10月に投資家向けカンファレンスを開催し、長期目標とその達成に向けた戦略を発表しました。店舗数は現在の1,400店強から長期的には1,800店を超えるまでに増やす計画で、ロイヤルティ・プログラムの会員数は2028年までに5,000万人に達する見通しです(第2四半期末時点で4,390万人)。

また、2026年以降の長期的な業績目標も発表され、売上高は4~6%の成長、EPSは10%台前半の伸びが見込まれています。こうした目標を達成するために、同社は品揃え、顧客のエクスペリエンスとエンゲージメント、ロイヤルティ・プログラムに一段と磨きをかける意向です。

最近の業績が低迷しているとはいえ、アルタには、美容関連のスーパーストアとして機能する大規模店舗、来客数の促進につながる美容サロン、4,000万人を超える会員を持つロイヤルティ・プログラム、ディスカウントストアのターゲット[TGT]の店舗内にある800のショップ・イン・ショップなど、多くの競争優位性があります。そのため、アルタはいずれ立ち直ると思われます。

足元のバリュエーションは魅力的であり、会社側が目指す2桁のEPS成長を達成できるのであれば、なおさらでしょう。バークシャー・ハサウェイがどんな動きをしようと、アルタ株を売却する理由は見当たりません。より明確な回復の兆しが見えるまで買い推奨はできませんが、四半期業績は今が底かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アメリカン・エキスプレスは、モトリーフール・マネーの広告パートナーです。元記事の筆者Jeremy Bowmanはターゲットの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、バークシャー・ハサウェイ、ムーディーズ、ターゲット、アルタの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。