「この四半期は素晴らしいものでした。驚異的な成長を遂げました。しかし、何一つ簡単なことはありませんでした」
エヌビディアCEO、ジェンスン・フアン
エヌビディア[NVDA]が、2025年第4四半期(11-1月期)の決算を現地2025年2月26日に発表しました。今回の決算発表は、世界中の投資家が最も注目したものの一つだったと言えるでしょう。
その理由は、エヌビディアが時価総額3兆ドルを超え、S&P500では2番目に時価総額が大きな銘柄として指数全体の6.3%を占め、NASDAQ100では8.1%の構成比率を持つ点にあります。
エヌビディア株が上がると米国株市場全体が上がり、下がると市場全体が下がり、それを受けて翌日の日本株にも影響を与えるのです。そのためエヌビディアの決算発表は、「AIの歴史を左右する重要な瞬間」とまで言われていました。
市場予想を上回る好決算──Blackwell製品が記録的な売上を達成
エヌビディアの決算は、市場の期待を裏切らない非常に良好な内容となりました。投資家は胸を撫で下ろしたことでしょう。特に、同社の最新AIチップ「Blackwell」シリーズの需要が急拡大しており、CEO(最高経営責任者)のジェンスン・フアン氏とCFOのコレット・クレス氏はカンファレンスコールで「前例のないスピードと規模で成長している」と強調しました。特に注目すべき点は、最新世代のBlackwellチップが第4四半期だけで110億ドルの売上を記録し、エヌビディア史上最速の製品展開となったことです。
しかし、ここまでの道のりは決して順調だったわけではありません。過去にはBlackwellの内部で過熱する問題、パッケージの課題、歩留まりの低さなど、生産上の懸念等が報じられていました。これについて、フアンCEOは「確かに生産に課題があり、数ヶ月の遅れが生じた」と認めつつも、「すでに問題は解決済みであり、今後のBlackwell製品(Blackwell Ultraなど)では同様のトラブルは発生しない」と明言しました。つまり、サプライチェーンの混乱は解消されつつあり、今後の生産は安定する見込みとなりました。
一方、新製品の投入による影響で利益率が低下しました。第1四半期の粗利益率は71%と、アナリスト予想を下回ったため、決算発表直後に株価は一時的に下落しました。ただし、クレスCFOはカンファレンスコールで「年後半には粗利益率が再び75%台に回復する」と繰り返し説明しました。これは前回の決算発表時と同様の見解であり、長期的な成長戦略には変わりがないことを示唆しています。
市場予想を上回ったエヌビディアの業績:決算のポイント
調整後の1株当たり利益(EPS)は0.89ドルとなり、市場予想を0.05ドル上回る結果となりました。売上高も約393億ドル(前四半期比+12%、前年比+78%)と市場予想の市場予想の375億ドルを大きく上回る結果です。通期(2025年度)の売上高は1305億ドル(前年比+114%)と大幅な成長を記録しました。
以下の通り、今回の決算発表のポイントをまとめました。引き続き、エヌビディアの稼ぎ柱はデータセンター部門です。
2025年度データセンター売上高:1152億ドル(前年比2倍)
・第4四半期データセンター売上高:356億ドル(前四半期比+16%、前年比+93%)
・Blackwell AIスーパーコンピューターの販売が計画を上回り、110億ドルの売上を記録。
・データセンターコンピュート売上は前四半期比+18%、前年比2倍以上の成長。
・AI推論(Inference)向け需要が急拡大し、Blackwellが業界標準として採用されつつある。
アナリストとのコンファレンスコール:AIと半導体技術の進化について
新世代AIモデルの計算需要(OpenAIのRealEstate R1やGrok 3など)が急増。
・Blackwellアーキテクチャは、従来のH100と比較して25倍のトークンスループット、20倍のコスト削減を実現。
・大手企業(マイクロソフト[MSFT]、メタ・プラットフォームズ[META]、アマゾン・ドットコム[AMZN]のAWSなど)がBlackwellを採用し、AIデータセンターを拡大。
・AI推論のコスト削減と高速化(Microsoft Bingの検索速度5倍向上、Perplexity(AIチャットボット型の検索エンジン)の推論コスト3分の1削減)。
その他主要事業の動向について
ゲーミング事業:売上25億ドル(前四半期比-22%、前年比-11%)、供給制約の影響あり。2025年第1四半期に回復見込み。
・プロフェッショナル・ビジュアライゼーション:売上5億1100万ドル(前年比+10%)、CADやシミュレーション向けのAI活用が進む。
・自動車事業:売上5億7000万ドル(前年比+103%)、自動運転車向けソリューションの採用拡大。
今後の業績の見通し
・粗利益率(Non-GAAP):73.5%(前四半期から低下)
・2025年第1四半期の売上ガイダンス:430億ドル(市場予想を上回る)
・粗利益率は71%に低下見込みだが、年後半には75%に回復予想。
・2026年度のオペレーティングコストは前年比増加予定。
市場動向と規制の影響
・米国市場でのデータセンター事業が急拡大。米国市場がデータセンター売上の約50%を占め、前年比2倍以上の成長。
・中国市場は輸出規制の影響で成長が鈍化。
・EUのAIインフラ投資(2000億ユーロの投資プログラム)も成長の要因に。
エヌビディアへの投資で押さえておくべきリスク
今回のQ&Aセッションを通じて浮かび上がった、エヌビディア株への投資に際して留意すべきリスクについても触れておきます。
粗利益率の低下
Blackwellアーキテクチャの製造と供給の初期段階で、粗利益率が低下しており、第1四半期のガイダンスでは70%代前半にとどまると発表しています。同社は「年内には70%代中盤に回復する」と楽観視していますが、今後のコスト削減が計画通り進むかは不透明です。
ボトルネックは、供給チェーンの複雑さ
Blackwellの製造は約350の生産拠点と100,000人の作業員を必要とする大規模なものです。1つのラックに150万ものコンポーネントが必要であり、サプライチェーンのボトルネックが懸念されます。2025年1月のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でも指摘されたように、エヌビディアは「製造の複雑さ」と「出荷のスピード」についてまだ課題があるとしています。
中国市場の低迷と規制リスク
中国市場の売上は過去の水準の半分に低下し、規制の影響を受けているといいます。エヌビディアは「この状況はしばらく続くだろう」と見ており、輸出規制のさらなる強化が成長の足かせとなる可能性があります。
カスタムASICとの競争
ハイパースケーラー(アマゾン・ドットコム、Google(アルファベット[GOOGL])、マイクロソフトなど)が独自のカスタムASIC(特定用途向けの半導体)を開発しており、GPU市場のシェアを侵食する可能性があるということです。これに対し、エヌビディアは「GPUは汎用性があり、柔軟に対応できる」と主張していますが、大口顧客がカスタムASICへ移行すれば長期的な脅威となり得ます。
競争激化とAI成長の持続性
AI市場の成長は続くものの、エヌビディアの現在のペースが長期間維持できるかは依然として不透明です。企業のAI投資が一巡すると、需要の伸びが鈍化する可能性もあり、2026年以降の成長予測には慎重な見方もあります。この辺りは今後注視する必要があります。
高すぎるエヌビディア株に対する市場の期待
AIバブルの中心にあるエヌビディアは、決算で「市場の予想を上回る成長」を示さないと市場の失望売りを招く状況にあります。これは注目されているどの企業についても同じなのですが、同社の場合、世界で最も注目されている会社ゆえのことです。加えて、エヌビディア株はAIに関わるニュースのヘッドラインに株価の動きが左右されやすく、株価のボラティリティが高いことを投資家は知っておくべきでしょう。
再確認できたエヌビディアのAI時代の圧倒的優位性
今回の決算発表とファンCEOのコメントは、ハイパースケーラー企業の資本支出に関する発言を裏付けるものであり、その重要性は過小評価できません。短期的な株価の急騰は必須ではないものの、予想を上回る好決算が市場の期待を十分に支える要因となったと思います。
また、今回の決算を通じて、エヌビディアがAI市場における圧倒的なリーダーシップを改めて証明しました。生産上の複雑な課題を克服しながら、「Blackwell Ultra」や「Reuben」といった次世代アーキテクチャの投入を予定しており、今後さらなる成長が期待されます。短期的な利益率の変動はあるものの、AIの進化とともにエヌビディアの成長が続くことが確認されたと思います。これは世界中の投資家にとって極めて大きな意味を持つでしょう。
今後のイベント
今後のエヌビディアのイベントは3月18日のエヌビディア主催のGTCカンファレンス(GPU Technology Conference)で、ジェンセン・フアンCEOが基調講演予定です。また、次回第1四半期決算発表(2026年度)は、5月28日に予定されています。