展望レポートでは消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まると予想
日本銀行は本日10月31日に政策委員会・金融政策決定会合を実施し、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度で維持することを全員一致で決定しました。
同時に年4回示される「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)が公表されました。潜在成長率を上回る成長が持続すること、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとされました。
具体的な数値は以下の通りです。前回の見通しと比べると成長率はおおむね不変であり、見通しについてのリスクも上下にバランスとされました。一方で消費者物価は2025年の数値が資源価格を主因に下方修正されたものの、上振れリスクの方が大きいとされました。
米国の大統領選挙を控えるタイミングでもあり、事前予想として日銀の政策変更は見込まれておりませんでしたが、経済・物価見通しが実現するならば、それに応じて政策金利を引き上げ金融緩和の度合いを調整していく、とのスタンスは変わっておりません。会見もややタカ派的な印象でした。
植田総裁、国内の賃金・物価の好循環について自信を示す
市場では円高が進行
会見では、米国経済のダウンサイドリスクを見極めるための「時間的余裕」について、その後の基調改善を受け、今後はこの表現を使わないとのコメントがありました。政策変更を行わないシグナルのような表現でもあったことから、この発言によって市場で円高が進んでいます。米国経済をめぐるリスク度合いが低下していることに加え、国内についても所定内給与の伸びや東京CPIにおける賃上げの影響についてポジティブな評価をするなど、国内の賃金・物価の好循環について自信を示している様子がうかがわれました。
利上げに対して前向きな姿勢
利上げに前向きな姿勢ながら、次回会合での動きまでは言質を取らせないものでした。日米の政治についてはいつも具体的なコメントは避けられますが、引き続き慎重に状況を見極める一つの大きな要因でしょう。日米政治イベント通過後の利上げに向けたコメントが注目されます。
現在の日銀は正常化の過程ながら、今後の追加利上げを想定しても引き続き実質金利は大幅なマイナスで、緩和的な環境は維持されています。当面金融政策は景気をサポートしながら、市場の急変を避けるコミュニケーションが期待されます。