2024年10月31日(木)8:50発表
日本 鉱工業指数2024年9月速報

【1】結果:鉱工業生産は2ヶ月ぶりに上昇

2024年9月の鉱工業指数は、生産が前月比1.4%増となり2ヶ月ぶりの上昇となりました。出荷も同2.3%と拡大しており、9月は総じて生産、出荷活動の回復が見られました。在庫は0.1ポイントと小幅の上昇にとどまりました。一方で、出荷の拡大から在庫率指数は減少しています。こうした中で、生産活動の基調判断は「一進一退」のまま据え置かれています。

【図表1】2024年9月 鉱工業指数速報値(季節調整済指数、2020年=100)
出所:経済産業省よりマネックス証券作成

先行きの生産計画は、10月は前月比約8.3%上昇の109.5、11月は3.7%減少の105.4と一進一退で推移することが見込まれています(図表2)。しかしながら、図表2からもわかるように、想定通りの生産が実施されれば、ここまでは思うほどに上昇しきれなかった生産指数の水準が切り上がることが期待されます。

【図表2】鉱工業生産指数の推移(季節調整済指数、2020年=100)
出所:経済産業省よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:9月は自動車が上昇に寄与、先行きも続けるかに期待

9月の鉱工業生産の押し上げに寄与したのは自動車工業で、0.88%ポイントとほとんどが同品目の上昇によるものでした(図表3、赤)。その他にも無期・有機化学工業が0.28%ポイント、電気・情報通信機械工業も上昇に寄与しています。

上半期の自動車工業は、認証不正問題等による生産制限が原因の工場稼働停止により、生産がままならない状況が続いていました。実際、自動車工業の寄与度の推移を見ても、生産動向は一進一退であったことがわかります。

【図表3】鉱工業生産指数の寄与度分解(前月比、%、%ポイント)
出所:経済産業省よりマネックス証券作成

10月30日に発表された日本乗用車メーカー8社の上半期の世界生産は、前年同期比6%減と4年ぶりの減少となることが報道されていました。ここまでの自動車工業の生産、出荷、在庫動向をみると、生産と出荷はバランスしており、工場稼働停止等の問題が発生するなかで、足元の在庫は2023年の水準まで調整がされ始めています(図表4)。自動車も含まれる輸送機械工業の生産計画は、先行きでは10月、11月の生産予測は上昇することが見込まれており、ここから上向いていくかに注目が集まります。

【図表4】自動車の生産・出荷・在庫の推移(季節調整済指数、2020年=100)
出所:経済産業省よりマネックス証券作成

【3】所感:在庫循環はなかなか進んでいない状況

在庫循環図を見ると、在庫調整局面から抜け出せない状況が続いています。なかなか在庫が減っていかない状況にあり、このあたりが一進一退から抜け出せない1つの要因となっていると考えられるでしょう。

筆者としては、上述の自動車のように、生産は出荷と上手くバランスされ調整がされる一方で、在庫がなかなかはけていかない状況が続いていると想像しています。財別出荷も上昇基調が見られないことから、全体が上向いていくにはもう少し時間がかかるかもしれません。

【図表5】鉱工業在庫循環図
出所:経済産業省よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太