2024年11月14日(木)22:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)

【1】結果:総合、コアいずれも市場予想を上回る結果

【図表1】米生産者物価指数PPI(最終需要)結果まとめ
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

10月の米国生産者物価指数(PPI)は前年同月比+2.4%となり、市場予想(+2.3%)と前回結果(+1.9%)を上回る結果となりました。前月比では市場予想通りの+0.2%の上昇で、前回結果(+0.1%)からは伸びが加速しています。

また、食品とエネルギーを除いたコアPPIも前年同月比+3.1%となり、市場予想(+3.0%)と前回結果(+2.9%)を上回りました。前月比では+0.3%の上昇となり、市場予想(+0.2%)と前回結果(+0.1%)を上回る伸びを示しました。

【2】内容・注目点:ポートフォリオ管理費など PCE構成項目は総じて上昇

そもそもPPIとは

米PPIとは、生産者物価指数のことを指し、原材料や製品を対象として生産段階での財・サービスの価格変動を測定しています。

例えば、机などの家具で考えると、企業が机という商品を生産するために仕入れる木材や金属といった原材料の価格変動を測定するのがPPIであるのに対し、CPIは最終的に消費者が購入する際の机の価格変動を測定します。

必ずしもそうとは限らないものの、一般的に、企業が仕入れる原材料の価格変動が、最終的に消費者が支払う価格に反映されることが多いため、PPIはCPIの先行指標として注目されています。

【図表2】CPIとPPIの推移
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

また、PPIの項目のうち、ポートフォリオ管理費や航空運賃、外来医療費などは、FRB(連邦準備制度理事会)がインフレ指標として採用している個人消費支出(PCE)価格指数の算出に用いられるとされています。このため、PPIは月末に発表されるPCE価格指数や、今後の金融政策の動向を予測するうえでも注目が集まります。

10月結果の内訳・詳細:インフレが再加速する先行きを示唆

今回10月のPPIの結果は、総合指数とコア指数のいずれも前回から上昇を示し、インフレが再加速する先行きが示唆される結果となりました。

【図表3】米国生産者物価指数(前月比)の内訳
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

図表3の通り、前月比での内訳を見ると、財価格は9月の-0.2%から10月は+0.1%と上昇となりました。これは、エネルギー価格の下落が緩やかになった(-2.8%→-0.3%)と耐久消費財などに代表されるコア財の伸びが加速した(+0.1%→+0.3%)ことが要因です。一方で食品価格は、前月の+1.0%から一転-0.2%と下落に転じています。

財価格が上昇に転じた一方で、サービス価格も10月には前月比+0.3%となり、9月の+0.2%から加速が見られました。公表元のBLS(米労働統計局)によると、10月のサービス価格上昇の約3分の1は、ポートフォリオ管理費が前月比3.6%上昇したことが要因です。このポートフォリオ管理費は、FRBが金融政策判断の材料とする個人消費支出(PCE)価格指数の算出に含まれるため、注目されています。

その他、PCE価格指数に関連する項目としては、航空運賃が3.2%上昇したほか、外来医療費も0.6%の上昇を記録し、全体的に上昇となりました。

【3】所感:利下げを急ぐ必要はあるか?11月15日(金)公表の米小売売上高の先行指標は横ばいで予想下振れ警戒

今回PPIが市場予想を上回る伸びを示したことで、前日のCPI(消費者物価指数)の結果と併せて、インフレ退治に向けた進展の失速を感じさせる内容となりました。一方、同日に公表された米新規失業保険申請件数は減少し、5月以来の低水準となったことで、労働市場がなお健全であることが示唆されています。インフレ再燃懸念が浮上しだし、労働市場も健全な状態を保っているのだとすると、早急かつ継続的な利下げの不要論が浮上しだします。

実際、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、14日午後の講演で、米経済は「驚くほど良好だ」と述べたほか、「経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルは送っていない」と発言しました。この発言を受けて、市場では12月の利下げ観測が後退しています。12月のFOMCまでにはあと一回ずつ雇用統計と物価指数の公表があり、利下げが実施されるかどうかはその結果次第となるでしょう。

次の目先の注目点は11月15日(金)公表の米小売売上高に移りますが、市場予想では前月比で0.3%増となることが見込まれています。一方で、小売売上高より一足早く発表されるシカゴ連銀の週次小売指数は前月比±0.0%となりました。市場は米小売売上高の増加を予想していますが、先行指標からは横ばいが想定されるため、市場予想の下振れが警戒されます。

【図表4】シカゴ連銀小売指数と米小売売上高(自動車・同部品除く)の推移
出所:シカゴ連邦準備銀行、Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐